どうながの映画読書ブログ

~自由気ままに好きなものを語る~

「ゾンゲリア」…タイトル詐欺のおかげで余計に楽しめた

ゾンゲリア」!借りずにはいられないッ!「サンゲリア」を観たならば…

ゾンビのいる孤島でサバイバルするような作品を想像してたらとんでもないタイトル詐欺だったわけですが、これはこれでしっとりした凄くいい作品。意外なほどに格調高い感じのするホラーでした。

※どんでん返しのある作品についてネタバレしてます

 

何と言っても冒頭の掴みがバツグンな本作。

観光客のカメラマンが海辺でパシャパシャ写真を撮っていると、どこからともなく美女が現れ、「私を撮ってくれない?」と声をかけてくる。

頼んでもないのにトップレスになってくれて男はウハウハ。

「そんな旨い話があるかー!!」と思っていたら、振り返ると男は町民に囲まれ、タコ殴りにされ火炙りに…

これ、ホントにゾンビものですか??という理不尽さが突き抜けたオープニングにグッと心掴まれます。

 

そして事件を捜査する保安官・ダンが主人公となり話が進んでいきますが…

お話的には「町民はみんな既に死んでいて、実は主人公も…」というディックの短編とか「世にも奇妙な物語」にありそうな感じですごくシンプル。

でも町の寂しい感じがこの世とも思えない不思議な雰囲気、一見和やかにみえて不気味な住民は「見知らぬ土地の人が怖い系ホラー」の恐怖。

話の輪郭が掴めないままドラマが進んでいくのが上手くて引き込まれました。

町民たちの中でも印象に残るのはドSっぽい雰囲気の美人とモッコリした髪型のおばちゃん。

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ドS美人の方はナースコスプレで注射針を患者の目玉に突き刺すという芸を披露。

キルビル」のダリル・ハンナのナース姿はこの人のパロディっぽい。

基本静かなホラーだけど、一瞬の不穏なBGMとともに村人がドヤアと映るのにギョッとなります。

そして何より恐ろしいのは「少人数のよそ者を大人数で囲って殺す」場面で、殺しながら写真をパシャパシャ撮るのが不穏…!!

写真やビデオは「殺した人間を復顔するときに参考にする記録」として必要だったということなんですかね。

そして嬉々として傷んだ死体の修復をする葬儀屋のおじいちゃんがラスボスだと判明。

ハーバード・ウエストが大成功しちゃったみたいな感じですが、「人間は死ぬと病気にかからん」ってセリフが完全にサイコパス

ロメロゾンビやフルチゾンビとは見た目が違うし人も食べないけど、生ける屍という意味では間違いなくゾンビものではあって、彼らに自我があるのかないのかハッキリしないところが不気味です。

「彼らは支配者の意思で動く」…

82年公開ということもあって、ボディスナッチャーのような全体主義への恐怖を映したSF作品要素もあるように思えます。

自分は一体どこから来たんだ!?自分で決めてると思ってることも実は定められたもので見えない運命みたいなものがあるのかも…って人生で1回位は考えちゃうあるあるですが、そんなヒンヤリした怖さが全編漂っています。

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美人妻のいるやっかみなのか主人公に冷たい町の人々。

地元に馴染めてない主人公の疎外感、信じられる人がいない孤独感。

シックスセンス」よりB級で雰囲気ホラーなはずなのに、人生の無常感を感じて余韻の残る作品でした。

 

グロ描写は量としては少ないけど、眼球に注射針刺さるシーンや酸を鼻に注入するシーンをみて配給会社の人は「邦題ゾンゲリアにしたろ!」と思ったんでしょうね(笑)。

自分は逆にこのタイトルじゃなかったら手にとらなかったかもしれません。

良い意味で予想を裏切られるというお得さもあって!?「ゾンゲリア」は案外いい邦題だと自分は思います。

秋の夜長にみるのにピッタリなホラー。

 

「テキサスSWAT」…チャック・ノリスvsデヴィッド・キャラダイン、ファイッ!!

80年代B級アクションスター、大激突!!

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「ドラゴンへの道」でブルース・リーと共演、私生活でも親交の深かったチャック・ノリスと、「燃えよ!カンフー」でブルース・リーから主役の座を奪うことになってしまったデヴィッド・キャラダイン。奇妙な因縁のある2人が共演。

正直キャラダインには強いアクション俳優のイメージはなく、チャック・ノリスの方が遥かに格上なんだろうと思います。

この映画も主役はチャックで、チャックが圧倒的に魅力的ですが、彼のファンでなくても楽しめる80年代らしさ爆発のアクション・ムービーになっていました。


原題はLonely Wolf McQuade。SWATなんぞどこにも出てきません。

冒頭はテキサスの大自然をバックに、モリコーネの「ウエスタン」に似たBGMが鳴り響く中、敵を一網打尽にするチャック…と西部劇っぽい幕開けがカッコいい。

チャック演じるマックエードは、逮捕者数No. 1の優秀なテキサス警備隊員ですが、群れることを嫌い署内で孤立していました。

妻とは離婚し一人娘とも離れてコテージで1人暮らし。

缶ビールを主食にして汚部屋に住んでいましたが、肉体の鍛錬と射撃の訓練は怠らない毎日。

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胸毛ふっさー。

しかしある日娘のサリーが偶然にも武器密輸現場を目撃し、襲われてしまいます。

娘を守るべくその足取りを追うも捜査は難航。

一匹狼だったマックエードが、真面目なメキシコ人捜査官を相棒に、さらには優秀な黒人FBI捜査官の協力を得て真相に迫ります。

 

その上なんと汚部屋を掃除してくれる彼女が…!!

エキゾチック美女ローラ(ネバーセイ・ネバーアゲインの悪女役、バーバラ・カレラ)と急接近。騙されてないかと不安に見守ってたのに、まさかただのいい女だとは……

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地上より永遠に」みたいなロマンチックな画にみえるけど、地面は庭の泥土。

 

思わぬ生活の変化をエンジョイする中、ついに密輸組織の尻尾をつかみ、大激突!!

組織のボス役がキャラダインですが、本作でキャラダインの出番はそう多くありません。

息を吸うようにタバコを吸っているのは、役作りなのか素の本人の姿なのか…。

でもラストに「ドラゴンへの道」を意識したようなタイマンの格闘戦をみせてくれるのにはワクワクです。

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コミケの猛者みたいな格好のチャックと、

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アーガイルのセーターが破壊的に似合わないキャラダイン。

キャラダインは「燃えよ!カンフー」のときと変わらないスタイルで、強いのか弱いのかよく分からない感じ。(でも好き)

どうみてもチャックの方が強いけど、負傷したハンデの設定もありつつ、五分五分っぽい戦いをみせてくれます。

このバトルシーン以外にも、
・車ごと地中に埋められても甦るチャック
・重機ごと装甲車に突っ込むチャック
・妙な走り方で銃弾避けるチャック
…と気前のいいアクションシーンが盛り沢山。

 

ロケーションも衣装も何もかも豪快な80年代らしさに観てるとモリモリ元気が出ます。

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DVDにもBlu-rayにもなっているけど、昔のVHSジャケットの方が圧倒的にイカしてたと思う…。

キャラダイン目当てでみた作品で、チャックの他の作品はほとんど観ていないのですが、その魅力がバツグンに伝わってくる1作でした。

 

ミッドサマーの元ネタ⁉「ウィッカーマン」(1973)鑑賞

「ミッドサマー」の元ネタらしいと知って、未見だったのを今更鑑賞。

2006年のニコラス刑事のリメイク版も観ていなかったので、新鮮にみれました。

敷居が高いということは全くなく、思った以上にエンタメしてて楽しい作品…!!

行方不明の少女の捜索依頼を受けたハウイー警部はスコットランドにある孤島へ。

住民たちは皆どこかおかしな人たちで、島に生贄の風習があると知った警部は殺人事件を疑って、1人で捜査を続ける…。

2000人の狂人」や「悪魔の追跡」みたいな、見知らぬ土地の人たちがおっかない系ホラー。

でもジャカジャカとフォークロックがかかって村人たちが歌い出すというシュールな世界が展開。

「ミッドサマー」では種付けの儀式でおばちゃんがいきなり歌い出すとこで爆笑したけど、この「ウィッカーマン」はもっとミュージカルしててあの可笑しさが全編貫いてる感じ。

金髪の美女が♫やらないか(※意訳)って、全裸でお尻叩きながら踊るの、ニヤニヤしながら観ちゃいました。

 

そしてなんと収穫祭、メイポールの設定も「ミッドサマー」と丸かぶりです。

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焚き火を囲んで全裸で踊る女性たちの画もよく似てる。

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男根の象徴を囲んで紅白の紐をひょろひょろ振る男の子たち。精子ってことですかね(困惑)。

こういう西洋の風習のことは皆目分からないのですが、キリスト教誕生前から存在してた土着信仰の文化が残っている土地があちこちにあるみたいですね。

そのほか、マズそうなお菓子や料理、不意打ちでちょこっとグロみせてくるところ、ホテルの看板のイラストデザイン…と見れば見るほど「ミッドサマー」にそっくりな所がいっぱい。

でもモチーフがすごくよく似ていても、話の中身は全く異なっていました。

ウィッカーマン」には「ミッドサマー」みたいなメンタルヘルスに突き刺さるような個人のドラマは全くなく、もっとシニカルにキリスト教批判に徹している印象です。


ウィッカーマン」の主人公、ハウイー警部はガチガチのキリスト教徒で、村人のことを「異教だ」「野蛮だ」と罵りまくりながら捜査します。

自分の尺度でしかモノをみれない嫌な奴…童貞という設定は聖職者の暗喩でしょうか。

こういうドラマでは珍しい、絶妙に感情移入しにくいタイプの主人公でした。

 

ラストのネタバレになりますが、主人公は実は手の平で踊らされていて、生贄の火炙りにされてしまう…というこういうホラーのあるあるエンドを迎えます。

今回の生贄は言ってみれば村の飢饉を救うためのようなもの。人を救うために自ら磔になったキリストとは対照的に、キリストを賛美する主人公は徹底的に犠牲になることを拒否する。

すんごい皮肉に思えます。

異端者の火炙りはキリスト教がしたことでもあるし、キリスト教への意趣返しをビシバシ感じて、ここまでやるかーと圧倒されてしまいました。


またこの村には領主様なる人がいて、クリストファー・リーが怪演しています。

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ノリノリの女装姿…!

一見キテレツな教祖様ですが、この領主だけ島民たちと違って「本当にこの島の土着宗教信じてるのか、どっちだー!?」って印象でした。

農学者だった祖父の跡を継いで、村にいるというこの人はある意味〝よそ者〟の子孫。

最後に警部が「俺を殺して豊作にならなかったら次に殺されんのお前やぞ!」みたいに言ってましたが、あり得るんじゃないですかねー。

 

宗教の知識がない&信仰心のない自分からすると、この島民にも全く魅力を感じなくて、結局豊かさを求める群衆とリーダーが信仰を利用しているだけなんじゃないの、とか思ってしまいます。

そういう見方そのものがまさにブーメランな気もするのですが(笑)。

「異なる文化の人間を全く理解できない」「結局ヒトは自分の価値観でしか物事をみれない」っていうのがこういう系ホラーの醍醐味。

ウィッカーマン」は余計なドラマを一切挟まず、冷たーく突き放したエンドが良く出来ていてゾゾッとさせられました。


私が今回みたのは88分版でしたが、いくつかバージョン違いがあって、94分のファイナル・カット版が今年あちらこちらでリバイバル上映してるみたいですね。

joji.uplink.co.jp

監督が最初につくったのは2時間位の長さだったらしく、どうせなら長いやつが見たいなあと思ったんですが、Blu-rayにもなってないみたいで…

でも短いバージョンでも完成された印象で、テンポよく楽しく観れました。

「ミッドサマー」がこの作品にすごく影響を受けているのはよくわかって、大満足。面白かったです。

 

「マジック」…多重人格サスペンスの静かな良作

人形ホラーかよ!なジャケ写ですが「腹話術師がお人形に別人格をつくってしまう」という多重人格を題材にしたサスペンス。

マジック [Blu-ray]

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  • 発売日: 2020/12/16
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監督リチャード・アッテンボロー、脚本「マラソンマン」のウィリアム・ゴールドマン、音楽ジェリー・ゴールドスミスと渋好みな製作陣。

主演は若かりし日のアンソニー・ホプキンス

ナイトクラブの売れないマジシャンだったコーキーは、ファッツという人形を使ってカードマジックをしたところ、たちまち人気爆発。
テレビ出演のチャンスを掴むも途端に怖気づき、高校時代に想いを寄せていた女性・ペギーのいる静かなコテージに身を寄せるが…

いっこく堂ばりの芸を披露するアンソニー・ホプキンスがとにかくすごい…!

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腹話術は実際にやったのか、後から声をあてたのか分からないけど、エンドクレジットみるとお人形の声役も彼みたいなので、声の使い分け演技だけでもすごいです。

マジシャンらしいカードやコインの鮮やかな手捌きも圧巻…!


そして何より身体から溢れ出る根暗男のオーラがハンパないです。

技術はピカイチだけど、プライドが高くてストレスに弱い。何事も自分で決められない性格でずっと師匠に依存して生きてきたけど、その人が亡くなってからは自分の使うお人形を新たな拠り所にしてしまう…。

まさに「サイコ」ですが、脳内で独り言呟いたり、妄想したりする癖の人間にはこの怖さ、どこか他人事と思えないもんがあります(笑)。

多重人格って、「幼少期のトラウマで別人格が誕生」みたいな物語が多い気がしますが、
ネットで普段自分が言えないこと呟いてストレス解消するとか、インスタ映え目指して自分をよく見せようとしちゃうとか、「自分以外の自分」を持ってる人って案外多いのかもよ!?なんて。

”声に出さない心の声”はある程度皆持っていて身近に感じるテーマのように思えます。


普段大人しい雰囲気のコーキーに対し、下ネタでも何でも言いたい放題の自由奔放なファッツ。

負の感情をこの人形に担当させてたら、次第にそれが暴走して主人格の奪い合いになってしまう…設定が大勝利のサイコサスペンス。

このお人形が本物の人間にみえてくるような演出が上手くてゾゾーっとさせられます。

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 洋服もお揃い、だんだんアンソニー・ホプキンスと瓜二つにみえてくる…!


ここからはラストまでのネタバレになりますが、最後の展開はちょっと唐突な感じがして好みが分かれるように思いました。

高校時代の同級生ペギーと結ばれるも彼女には夫がいて、駆け落ちするか揉める。
ペギーがいると自分は捨てられると思ったファッツは彼女を殺そうとするも、コーキーが自殺して全てを終わらす…というエンド。

でもファッツの「お前は最初から1人だよ」という台詞、そして最後にはペギーがファッツの話し方を真似している…と、まるでファッツが悪霊かなにかで新しい獲物に乗り移った…というオカルトホラーにも見えなくもないエンディング。

 

でもここまでやっておいて多重人格モノじゃなかったって解釈はやっぱりないんじゃないでしょうか。

振り返ればペギーという女性も、退屈な夫婦生活にふと現れた元同級生との不倫で現実逃避という、コーキーに負けず劣らず優柔不断な人間でした。

軽い気持ちで何かに依存すると貴方も多重人格になっちゃうかもよ、フフッみたいな終わり方ですかね。

ラストの曖昧さといい脚本はちょっと甘い気もしますが、不気味さが残って自分は嫌いじゃなかったです。

 

アンソニー・ホプキンスめちゃくちゃ演技上手いのに「羊たちの沈黙」で大ブレイクするまでここからあと13年もあるのね…。

地味だけどすごく引き込まれた作品でした。

 

漫画「ブラック・ジャック」の好きなエピソードをあげてみる

鉄板すぎる名作ですが久々に読みたくなって、再読。

自分が小学校の頃には図書室にあって皆で読んでいたけど、「人間はいつか必ず死ぬ」「この世には理不尽な病気や障害が存在している」…子供の頃に読んでおいて良かったなあ、としみじみ思う作品です。

ツンデレでキビしいブラックジャック先生ですが、病という強大な敵を前に患者と一緒に立ち向かう…努力推奨の少年漫画の王道でもあるなあと思いました。

「合理的で周囲の理解を得られず孤立しがち」という人物像は、現実にお医者さんが抱えがちな悩みなのでしょうか…
特に外科の先生は嫌がられる手術を患者と話し合って進めなければならず、患者にはドライにみえてしまうこともあるのかもしれない…

大人になって読むとブラック・ジャックが単なる破天荒医師にも思えず、医者=患者間の人間関係について考えさせられるところも多かったです。

 

ベストエピソード10を選ぼうとするとどれも良くて迷ってしまうけれど、改めて読んでこのエピソードが好きだと思った!!というのを直感のまま10個あげてみたいと思います。

 


1:犬のささやき
全く医療ドラマしてない動物回ですが、読後に残る余韻も含めて強烈でした。

死んだ恋人が忘れられない男は、彼女の声が録音された機械を愛犬の声帯に埋め込んでもらう。
犬の口から漏れ出す「愛してるわ」という女の声。

人間のエゴによる動物虐待としか思えないけど、不気味な倒錯愛すら感じる男とヌーピーのやりとり。

ラスト、電車に轢かれた男を振り切ってブラックジャックのもとに駆け出すヌーピーは、男を憎んでいたのか、愛していたのか…

どちらにもとれる見せ方に唸らされますが、犬の表情をみてると飼い主を助けてもらうためにブラックジャックのところに駆けていったんだと思う。

動物のひたむきな愛が染みて、最後の1コマにゾクっとさせられました。


2:なんという舌
生まれつき異常のあった手をブラックジャックに付け替えてもらったものの、可動に制限があり、そろばん大会での優勝がのぞめない少年。
その少年が最後に手ではなく舌を使ってそろばんして優勝する…。

リハビリテーションを描いている回はどれも必死に努力している姿に心打たれますが、このお話はその先にある苦悩も描いているところが深いなあと思いました。

機能回復だけがゴールではない本人の障害の受容…それが他者にも認められるというハッピーエンドに涙が出ます。


3:上と下
助けられたら助け返す、倍返しだ!!

血液型RH -のおじさん2人が助け合う回はブラックジャックの脇役への徹しぷりも含めて何だかほっこりする回。

一世一代の商談か恩人の命か…飛行機から引き返す社長のおじさんの決意の顔に胸がアツくなります。

社長が高級レストランより安い定食屋さんで美味しそうにごはん食べてるのがいいですね。

人生何があってどんな人と繋がるか分からないものだという奇縁にただただ優しい気持ちになれる回でした。

 

4:ちぢむ
アフリカで発生した身体がちぢむ病気。

「そんな病気が本当にあったら…」と子供の頃に読んで強烈なインパクトがありました。人口増加、環境破壊への不安が短い話に圧縮されていて今読んでも怖いです。

「この病気は神のおぼしめしだ」という戸隠先生の言葉…お医者さんでもそんな風に思う未知の領域みたいなのがあるのかな、と重たく響きます。

 

5:侵略者(インベーダー)
深刻な病気で入院している少年。まわりの大人は気を遣って彼に病気を告知していない。

やがて大人たちの様子がおかしいと疑心暗鬼に陥り、恐ろしい幻覚を見はじめる…。

病気になったら厳しいことも含めてハッキリ言って欲しいなあと思うけど、子供が相手で両親やお医者さんがあえて伏せようとした気持ちも分かる…。

「知らなければ戦えもしない」と努力至上主義のブラックジャック先生は情け容赦なく告知。

誰にとってもこれがベストなのか分からないけど、隠されていることに子供がこんなに不信感を感じるんだーってその心理描写がホラーテイストで、昔読んでも今読んでもなんだか心に残る1編でした。

 

6:ふたりの黒い医者
子供の時分にも安楽死の賛否を問うキリコが決して悪人ではないことが分かって、カッコいいダークヒーローのように映りました。

ブラックジャックも無頭症の赤ちゃんのことは助けないとはっきり決めていて、命の線引きはしている。そのラインがキリコと違うだけなのかも、と改めて読んでも思います。

キリコ登場回はどのエピソードがというより、登場時のインパクトがやはり圧倒的なのでこの回。でも軍医の過去が明かされるところや「助かってよかった」とブラックジャックと肩並べてるところもいいですね。

 

7:古和医院
小村にいる無免許医師のお話。

戦後はこういうニセ医者とよばれる人たちが医療の受け皿になっていたんじゃないかな…とリアルな話に思えるのですが、50歳過ぎて大学に入りなおそうとするラストがあっさりとカッコよくてシビれました。

 

8:ピノコ西へ行く
手術した患者の親がクレーマーで、治らないから刑事告訴すると脅されるブラックジャック。1人で山奥に隠れることにするが、ピノコはそれを追いかける…。

クレーマーの患者家族の姿がこういう人いそうだよなあ、というリアルさ。

中途半端な知識で医者と議論しようとする、せっかちで治療経過を待てない。

医師にとっての信じてもらえない辛さ、患者にとっての信じられない辛さ…治したいという強い気持ちがお互い全くかみ合わないって悲しいですね。

医療者の心折れる瞬間を描いたような暗いお話ですが、どんなときもブラックジャックの味方でいてくれるピノコに最後救われる気持ちになりました。

 

9:笑い上戸
ブラックジャックの中学生時代の友人、笑い上戸の”ゲラ”。厳しい生活を送っているのに、常にポジティブでいる姿勢がブラックジャックを惹きつける。

そんなゲラにブラックジャックの憎しみのダーツが突き刺さってしまうのがすごい皮肉。

最後に笑ったのはゲラの「ありがとう」だったんだろうだろうなあ…。悲しいお話だけど、ゲラの優しさと強さが胸にきます。


10:ある老婆の思い出
優しく誠実がゆえに苦悩を抱えて乳母に転職する看護師さん。
何が正解か分からなくても、助けた命が紡いでいるものがあると信じて医療者であり続けるブラックジャック

冒頭から「お帰りなさい、大統領閣下」のラスト1コマまで短いのに映画のようなスケールを感じさせ、じーんとなってしまいます。

「人生という名のSL」もいいけど、これも最終回オーラがあると思う。

 


ほか…人面瘡も子供の頃強烈に残ったし、シャチとラルゴにも泣かされたし、おかあさんの顔に整形する話も好き…と挙げてくとキリがないですね(笑)。

2013年には40周年記念読者投票が開催されていたみたいで…

www.akitashoten.co.jp

恵さんのエピソードが1位なのと、キリコ人気の強さにびっくりー!!

でもずらっと並んでるのをみてると、アレもいい、コレもいいと目移りしてしまいます。

大人になって読んでも面白いし、子供の時分に出会えてよかった、この先も子供たちに読み継がれていて欲しい超鉄板の名作だなあと改めて思いました。

 

「サラマンダー」…ドラゴンより人間がカッコいいダメ怪獣映画

ドラゴンvs人間…!!

2002年の作品ですが、クリスチャン・ベールマシュー・マコノヒーという今ではオスカー俳優となった2人が豪華共演、おまけにこういうバトルがとことん似合いそうなジェラルド・バトラーも参戦というキャストが魅力的な1作。

サラマンダー [Blu-ray]

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  • 発売日: 2010/02/17
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2010年のロンドン。ある日突然1匹の竜が地下から現れ、爆発的に増殖し、火を吐きながら街を焼き払った。

なんと6500万年前に恐竜を絶滅させた竜が長い間眠っていたのだという。

核兵器も通じない強靭な鱗、獲物を敏感に察する探知能力…10年後、荒廃した世界で生き延びた人間たちは静かに滅亡を待つばかりであった…。

どうやってドラゴンが世界を制圧したのか??その部分をニュースや新聞のイメージ映像でやり過ごすというとんでもない手抜きに圧倒されます。

もうこれなら舞台を中世とかにしとけばよかったんじゃないの、と思ってしまいますが、砦で細々と生活する荒廃した未来の雰囲気は悪くなかったりして。

そしてなぜか子供がやたら多いこの砦、夜には子供たちに劇を演じて見せるのですが…

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テレビもないから「スターウォーズ」を後世に残そうと必死…!!クリスチャン・ベールのダースベイダーの物真似、なんて貴重なんでしょう。


どこかB級映画臭を漂わせる中、アメリカ軍の生き残りヴァン・ザン(マコノヒー)一味がどこからともなく現れ、サラマンダーを倒すため共闘することに。

しかしこの肝心のサラマンダーが魅力に乏しい残念モンスター。

どういう習性なのか肝心な部分が明らかにされないままご都合主義的に設定が披露されていくだけで、いつ襲ってくるか分からない恐怖とかが全然伝わってきません。

しかも核兵器でも倒せなかったというのに、爆薬つけたボウガンで内臓を傷つければ倒せる…ってモンスターハンターじゃないんだからさ…。

極めつけは「最初に現れた始祖の1匹を倒せばすべてのドラゴンが滅ぶ」…なんの魔法効果だよ、とツッコミが止まりません。

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 CGの出来は悪くないのに、出てきたときに全く心が沸き立たないのはなんでだろう。

 

しかし、主演2人をはじめ人間サイドが仕掛けるバトルはカッコよく撮れていてポンコツ映画と切り捨てるには勿体ないところも。

マコノヒー部隊が空からパラシュート付けて落下し、金網広がる銃弾定めてドラゴンを捕縛しようとするところはすごいワクワクします。

戦車改造されたような車、ドラゴンの吐く炎にも耐える防火スーツ…細部でいいなーと思うところはちらほらあって、怪獣vs武器持った人間のガチンコバトル、この部分だけを煮詰めればもっと面白かったんじゃないかなー。

 

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 スキンヘッドでムキムキのマコノヒー隊長がすごくカッコよかった…!

この作品、時期的には「リベリオン」と同年公開で、ビデオ屋さんに一緒に並んでて借りた気がするのですが、「サラマンダー」ももうちょっと頑張れば「リベリオン」クラスになれたかも!?とすごく惜しく思われる映画でした。

ちなみに「サラマンダー」ってタイトルは、本編のドラゴンのことを指すわけでもなく、日本の配給会社が勝手につけたみたいですね…。

そんなところもポンコツ大作感が漂う、でもなぜか憎めない1本です。

 

「空の大怪獣Q」…モンスターではない、神だ!

82年公開、ラリー・コーエン監督による怪獣パニックムービー。

空の大怪獣Q 超・特別版 (Blu-ray)

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ハリーハウゼン作品を彷彿させる特撮怪獣が暴れる姿にワクワク、大都会とモンスターの組み合わせは「キングコング」みたいでかっちょいい。

その上オカルトホラーを混ぜ込んだようなごった煮のストーリーもB級映画らしくてイイ。

 

舞台はニューヨーク。
冒頭、高層ビルの窓を清掃しているお兄さんが中のお姉さんの様子を伺ってるとわずか数秒後、ド派手に首チョンパ!!

不可解な変死事件だと警察が捜査するもなぜか犯人の目撃情報が1つも出てこない…。

なんと犯行は空を自由に舞う謎の怪獣によるもので、「太陽を背にして動くため」誰にも目撃されないという。

モンスターパニック映画で「あえて怪物の姿なかなかみせない」は常套手段の1つかと思いますがいくら何でも無理がある設定(笑)。

しかもその怪獣がクライスラービルの屋上に巣を作っているというからビックリ。

怪獣のサイズ的にどう考えてもここに出入りすんの無理そうなんだけど…

でも空に潜伏するジョーズの鳥版!!これだけで何だか燃えてきます。


そして、事件に翻弄される人間サイドも個性的な面々が集結。

まずはデヴィッド・キャラダイン演じるシェパード刑事。

怪獣がらみの殺人事件とは別にもう1件、宗教が絡んでそうな「全身皮剥ぎ殺人」の真相を追います。

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一体何の映画なんだよ。

そしてひょんなことから怪獣の巣の居場所を知ってしまう男、クインを演じるのはマイケル・モリアーティ

売れないピアニストをこじらせて窃盗を繰り返すダメ男で、怪獣の情報をダシに警察から恩赦と金を巻き上げようとします。

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ゲスな笑顔がたまらない名演技。

怪獣に食われろと思ってみてたら意外にガッツのある奴でだんだん清々しく思えてきます。

怪獣と摩天楼と猟奇殺人とゲス男…

怖いものなしのごった煮で攻めてきますが、事件は意外な繋がりをみせます。

なんと怪獣の正体は狂信者がいけにえ殺人で召喚したアステカ文明の神獣だった…!!


タイトルにあるQって、てっきり円谷プロの「ウルトラQ」からとった邦題なのかと思いきや、ケツァルコアトルという神様の頭文字からとったものだったというオチ。

神話では善い神様だったみたいだけど、映画では悲しいかな駆逐対象に…。

警官隊とQの大バトルでは迫力ある映像が展開。

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今の時代のCGではもっとリアルな映像ができるでしょうけど、ストップモーションの独特の画、なんというか〝虚構!〟って感じがしていいです。

ビル群に映るQのシルエット、傷ついた怪獣がビルにしがみつく姿にはロマンがたっぷり。80年代のニューヨークを空から捉えた映像も意外なほど綺麗です。

 

90分の映画と思えないほどお腹いっぱいになるカオスな内容だけど、そんなお茶目な雰囲気もみていてすごく楽しい1本。