どうながの映画読書ブログ

~自由気ままに好きなものを語る~

「レッド・ドラゴン」と「刑事グラハム」を見比べてみた

羊たちの沈黙」の前日談にあたる「レッド・ドラゴン」。

映画はさておきトマス・ハリスの作品の中ではこれが1番面白いんじゃないかなーと思います。

 「羊たちの沈黙」のクラリスがタフな野心家だったのに対し、「レッド・ドラゴン」の主人公グラハムはもっと脆く繊細。

話している相手の癖を無意識に真似てしまうなど、病的と言っていい程の高い共感能力を持った男。本人は静かに暮らしたいがFBIがその能力を放っておかず、精神同調するかの如く犯人の思考をトレースしていく。

81年当時こういうプロファイル捜査モノの走りだったのでしょうが、主人公を通して異常な犯人の目線をジャックしたような感覚にヒリヒリします。

犯人は「羊たちの沈黙」でのバッファロー・ビルもトラウマを抱えた人物だと描かれてましたが、「レッド・ドラゴン」のダラハイドはもう1人の主人公と言っていい程掘り下げられていました。

障害を抱えて生まれ、母親に見捨てられ、祖母から苛烈な折檻を受け…と陰鬱なお話ではあるのですが、子供時代の強烈なストレスがずっと本人の中に残っていて、差別を受けた怒りと劣等感が澱のようにたまっている。

終盤の「絵を食べる」という狂気の行動も本人の中では理にかなった行動であって、単なるバケモノになっていないところが魅力でした。

 

レッド・ドラゴン」は1985年と2002年に2度映画化されています。

マイケル・マンが撮ったという85年度版「刑事グラハム」をずっと観ていなくて、気になっていたのを初鑑賞。

2本比較してみたいと思いますが、まずはメジャーな2002年版から。

 

レッド・ドラゴン

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監督は「ラッシュアワー」のブレット・ラトナー。脚本は「羊たちの沈黙」と同じテッド・タリー。

分かりやすくザ・エンタメでまとめられてて、良く出来てるのではないかと思いました。

好きな俳優だけど個人的にミスキャストだと思われたのはエドワード・ノートン

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自分の原作のグラハムのイメージは〝変わり者の不器用なおっさん〟だったんだけど、どうしても頭いい器用なエリートにみえてしまう。

若干ベビーフェイスだからか若くも見えて、お歳を召したレクター博士とまるで父子、もっと対等なおっさん同士の対決の方が良かったかなあと思いました。

もう1人ハーヴェイ・カイテルもリーダー上司にはとても見えずイメージが違いました。前作のスコット・グレンがビジュアル的にピッタリだったけど、年齢的に無理だったのかな。

 

反対に素晴らしかったのは、盲目の女性・リーバ役のエミリー・ワトソン

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障害を抱えながらも自立心があり、孤独な胸中抱えつつ他者を思いやる優しさと強さを持っていて…原作にも忠実な人物像でこの人の演技を観てるだけで涙出てきます。

色気を感じさせるところも良かったです。

ダラハイドがかなり美形っていうのはどうなんだろう、と思ったけど端正な顔立ちのレイフ・ファインズが自分を醜く思ってるっていうのが闇を感じさせて不気味な気もしました。

出番が大幅に削られてしまっていたのはクズなマスコミ記者ラウンズ。
原作では彼も嫌な人間ながら気骨があり、自分なりのポリシーで仕事やってることが分かって中々悪人とも切り捨てられないキャラなのですが…
やさぐれた感じとかこういう記者いそうとリアルでフィリップ・シーモア・ホフマンもすごい良かったです。

 

ダラハイドの過去は深く説明されませんでしたが、グラハムの「日記を読んで胸がつぶれた」という台詞、ダラハイド家の不気味な家屋のセットがよく出来ていて、上手く補完されてるなあと思いました。

ラストにグラハムがダラハイドの祖母の物真似してピンチを切り抜けるところも原作の台詞そのまま持ってきてて、ああいう演技はエドワード・ノートンもめっちゃハマってました。

原作のグラハムは顔を撃たれてアルコール中毒になるという悲劇的な末路ですが、こっちは負傷も少なく家族の元に戻るというあっさりした明るいエンディング。

陰鬱度は控えめ、「羊たち」に比べると劣るけどこっちもまあまあ上出来なんじゃないでしょうか。

レクター博士は出番が増え、冒頭から逮捕劇みせてくれるところも次作にバトン繋げたエンディングも嬉しいファンサービスだと思いました。


お次は85年度版、刑事グラハム。2002年度版と上映時間はほぼ変わらず2時間、マイケル・マンが脚本監督ですが…

 

刑事グラハム/凍りついた欲望

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刑事グラハムって言うけどグラハムは期間限定FBI捜査官で刑事じゃないよね…と不安になるタイトルですが、原題はManHunter。適当につけられた邦題っぽい。

グラハム役の俳優さんはテレビドラマで有名な方みたいだけど、個人的にはこっちの方がイメージぴったり!

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暗いおっさんが被害者宅でボソボソ呟きながら捜査、時々興奮して大声出す…とても危なげで良かったです。

レクター博士役はブライアン・コックス

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うーん、普通のおじさんにしかみえない…

アンソニー・ホプキンスでイメージついちゃうと物足りなくてしょうがないです。独房の雰囲気も猛獣かの如く隔離されてた「羊たち」のセットにはただならぬ緊張感があってよかったです。

 

ダラハイドは中々登場せず、ラウンズ殺害の場面でようやくその姿をみせます。この見せ方は不気味でいいなあと思いました。

そして今回のダラハイドは美形じゃなくて、かなりの長身で孤独感漂よう男。

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原作のイメージはこっちだなあと思ったのですが、肝心のリーバとの恋愛ドラマが大幅カットされてました。

「車で送っていく」の直後から動物園のシーンになっているのは強引すぎる。

2人が惹かれあって、そして生まれて初めて愛した女性を守ろうと葛藤するところにドラマがあったと思うのですが…

ブレイクの絵を食べに行く場面も消滅してて、薄っぺらい異常者になってしまってました。

 

加えてグラハムの人物像も後半原作とかけ離れたものになっていました。

「望まないのに事件に駆られる男」だったのに自分から積極的に作戦にどんどん参加。

「男には家族を置いてでもやらねばならんことがある」というマイケル・マン的男の世界が炸裂!! 

面白いけどこれグラハムじゃねえという展開になってました。

映像はオシャレできれいな画が多かったです。

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FBIや市警とチームになって手紙を分析する前半の雰囲気などは硬派な仕事人ドラマの空気に満ちていてすごく良かった。

原作気にせずマイケル・マンが好き!!という人は楽しめる作品になってるのかもしれませんが、それにしても後半の脚本が雑ではないかと思いました。


それなりにボリュームのある原作の映画化はどうしても脇キャラクターのエピソードなどカットせざるを得ないものだと思います。

羊たちの沈黙」同様、結局美男美女のラブストーリーでザ・ハリウッドって気もしますが、2002年版の「レッドドラゴン」がダラハイドとリーバのドラマ部分はカットせずにほぼ全再現させていて、そこに焦点を絞ってたのは良かったなあと改めて思いました。

クラリスに負けない魅力あるキャラクターのグラハムが、ジョディ・フォスター並にしっくりハマる人に出会えてなかったのは残念。

マッツ・ミケルセンの演じてるレクターはどうなんだろう…ここまでスピンオフ化してれば、別モノとして思い切り楽しめそう。

グラハムも出てるみたいでこっちのはどんな人だったんだろうと気になります。

 

「羊たちの沈黙」原作再読/乙女ゲーのようなときめきとタフな仕事人ドラマ

子供の頃テレビ放映されてたのを観たのが最初でしたが、「美女と野獣」の変形ラブストーリーなどと言われるだけあって、レクター博士クラリスの微妙な男女関係にドキドキ。

映画も原作も好きで何度も手にとった作品でした。

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事件解決の情報を得るため殺人鬼と接触するクラリス…さながら気難しい男の好感度を上げてく乙女ゲーのようで、雨の日にタオル差し出してくれるレクター博士ツンデレっぷりにドキッ。

囚人と捜査官、父娘のような年の差と高いハードルを挟みつつ、お互いの内面を認め合い心通わせる姿に胸が高鳴りました。

先日2012年に発売された新訳版の原作を遅ればせながら読む機会があったのですが…

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↑左が菊池光訳の旧版、右が高見浩訳の新版。

新しいのは上下巻に分けられ文字も大きくなって物凄く読みやすくなっていました。

クローフォドには、優れた知性とはべつに独特の頭のよさがあって、スターリングはまず、FBIのクロゥン培養的な捜査官の服装の中にあってすら、彼の衣服の色彩感覚や生地の好みにそのことを感じた。
今の彼は羽毛の抜け替わり時のように、きちんとはしているが魅力がない。

(菊池光訳より)

クロフォードという人には、本来の知性とは別な一種独特の洒脱さがあって、クラリスが最初にそれに気づいたのは彼の服装の色彩感覚や生地の選び方に目が止まったときだった。
きょうの彼の身だしなみは、きちんとはしていても、どこかくすんでいる。脱皮しかけている虫のように。

(高見浩訳より)

旧版はカナ英語の表現に気取った感じがしたり、今読むと古めかしいところもありますが、硬派な文体がキャラクターたちのストイックさとマッチしていい感じ。

新版は全体的に柔らかめな印象になってますが、軽いという程でもなく自分はこっちもありだなーと思いました。

どっちが好みかと言われれば旧版だけど、分かりやすくサクサク読めるのは嬉しかった。

 

原作と映画を比較すると、映画はレクターとクラリスの関係にスポットをあてて2時間でテンポよくまとめてるなーと思う反面、脇キャラクターの緻密な描写は大幅にカットされていて惜しくも思われます。

特にクロフォードは映画だけみてると「部下をいいように使う冷淡な上司」「クラリスをみる目線があやしい」とあんまりいい男に見えないのですが、原作を読むとクラリスの優秀さを認めていて2人が信頼関係で結ばれてることがもっと伝わってきます。

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私生活ではずっと妻の介護をしていることも分かって、その大変さをおくびにも出さず仕事に徹するプロフェッショナルの精神が凄い。心から愛していた妻を看取るシーンの喪失感には胸がいっぱいになりました。

仕事のできる上司も組織の中では万能ではなく、しがらみもありつつ協力的な人を探してやるべきことをやらなければならない…硬派な仕事人ドラマは原作の方が分かりよく伝わってきました。

 

ときに不愉快な男の目線にさらされながら、基本どこ行ってもモテモテなクラリス

数多の男性が彼女に心を寄せてましたが、射撃教官のブリガムが個人的には一推しでした。

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↑映画だとこの人かな。ほぼ出番なし。

利害や組織の思惑とかけ離れて親身にアドバイスをくれる。ピンチに立たされたときには上に一言申して庇ってくれる。

決してクラリスから見返り期待してるわけじゃなく、海兵隊出身の硬派な男が無自覚にクラリスを好き…ってところに胸キュンしてたのですが、続編の「ハンニバル」ではクラリスに告白して振られてるわ、冒頭に射殺されるわ、とめちゃくちゃ悲しかったです。

他にも死体から発見された蛾の特定に動いてくれた博物館のピルチャーとロドゥン…この2人は映画でも独特の印象を残してましたが、原作を改めて読むと結構出番が多かった。

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↑眼鏡をかけていないのがピルチャー

「2人の男に会ったとするわ。いつも、好きでない方が電話をかけてくるのよ。」真面目なクラリスもこんなガールズトークするんだーと思って面白かったけど、ピルチャーさんの方が気遣い屋さんでいい男。

原作のラストではクラリスは何とこのピルチャーと結ばれてました。最も家庭的で平凡そうな男を捕まえつつも最後にやって来るのはレクター博士の手紙…

またクラリスは新たな子羊の悲鳴を聞いて戦い続けるんだろうなーとこのラストで完成されていて「ハンニバル」要らなかったなーと思ってしまいます。

 

映画は小柄なジョディ・フォスターが男たちに囲まれている画が印象的だったと思います。

クロフォードがクラリスを利用して保安官を人払いするシーンがありましたが、その後「あなたの態度が警官たちの指針になる」と一釘刺すところは、クロフォードに信頼があるからこそ言えたのかもしれないけどクラリス強いなあ、カッコいいなあと思いました。

クラリスの過去の告白、「子羊が殺された」は性的虐待を受けたことの暗喩なのだと昔映画秘宝という雑誌で読んで驚いたのですが…成程そう言われるとそうとしか思えなくなってしまった…

抱えるトラウマが故に救世主たろうとする主人公の善良さがヒロイックで、少年漫画のキャラクターのような魅力を感じます。

最初の被害者を洗い出す場面など小説の方は非常によく出来ていて、アメリカのさびれた田舎町に生まれた女性の選択肢の少ない人生、そこに横たわる閉塞感…被害者女性の生活を心でトレースし手がかりを掴むのが白眉でした。

捜査モノとしては加害者に同調して事件を追う「レッドドラゴン」の主人公の方が鬼気迫っていたと思いますが、女性捜査官が女性被害者を想い、その努力が最後に報われるのに最高にスカッとします。

 

レクター博士アンソニー・ホプキンスが完全に原作を喰っていて圧倒的すぎた。

瞬きもしない全てを見透かしたような眼差し、人間超えたかのような知性ある佇まい…

あまりにも魅力的だったために続編の「ハンニバル」はレクターをヒーロー化しすぎた作者の二次創作みたいになってしまっていて残念です。

あれだけ知的な紳士なのに脱走シーンでとんでもないことやらかす振れ幅が予測不能でドキドキでした。

どちらかというと映画は主演2人の美しさもあってロマンチック要素が強く、原作の方がタフな仕事人ドラマという印象ですが、どちらも素晴らしく両方併せて楽しめる作品でした。

 

「ヒッチャー」…ルトガー・ハウアーの”荒野の狂った殺人鬼”が凄い

今月からリバイバル上映が開始されている「ヒッチャー」。

公式サイトみると荒木飛呂彦先生や声優の諏訪部順一さんがコメントを出してました。人気作ですね!!

ヒッチャー [DVD]

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「ママはこんなことすんの絶対やめとけって言ってた」

親切心からヒッチハイカーを乗せたらとんでもない殺人鬼だった…!!

開始早々自ら人殺しだと静かに打ち明けるルトガー・ハウアーがぶっ飛びまくり。

次のシーンでは家族があっさり殺され、警察行けば安心かと思いきや皆殺し…淡々としてるのに展開がジェットコースターなのにビビります。

ハウアー氏から〝砂漠に現れた幽霊〟と評される殺人鬼ジョン・ライダー。

素性が全く明かされず目的も不明というところが不気味ですが、一方の主人公もどこの誰だか背景が特に語られるわけでもありません。

広大な田舎、どこまでも続く一本道というロケーションもこの世ならざる狂った精神世界のよう。

今時の映画だったら「ジョンは主人公の別人格でしたー」ともったいぶったオチつけたりしそうな気がしますが、「ヒッチャー」は余白があってその余白をそのままにして陳腐になってないところが稀有なのではないかと思います。

最初にみたときはストレートに「激突!」に似てるなあと思いました。

あちらは自信を失った男性が男らしさを取り戻すというテーマ性があって、カーチェイスが擬似的なそういう行為に思えなくもない??
…「ヒッチャー」も主人公が少年から男の顔つきに変わっていき、2人の追いかけっこにどこかエロスを感じる作品です。

ヒッチャー役最初の候補はテレンス・スタンプだったそうで…

あの俳優さんも雰囲気があって不気味だけど、ルトガー・ハウアーが醸し出す”寂しさ”がこの作品を唯一無二なものにしてる気がします。

当時18歳のC・トーマス・ハウエルとの年齢差、体格差も絶妙。「自分を殺してくれる人を待ってた」のがロマンチックに思えてきます…

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どこからともなく現れその凶行が全く予想もつかず、スリラー映画としても迫力満点!!

個人的にビビったシーンは…

1: 前の車に乗ってんだけど!!
目の前を走ってるファミリーカー、クマのぬいぐるみからジョンがヌッと姿を現しギョッ!!疾走感ある音楽もハマっててすんごい焦ります。

2: 指ポテトにオエーッ
ドライブインのレストランでハンバーガーをご馳走になるジム。ポテトを気怠げに口に入れてるとあれっ!指が!!オエーッ。
ジョンがこっそり忍び込んでて紛れ込ませたのかな…神出鬼没すぎて怖いし、こういうので精神削ってくるのがいやらしい…

3:いきなり警官ズドーン
警官に連行されるジム。走ってるパトカーの横にいきなりジョンが現れて警官の頭をピンポイントでズドーン!ホントに毎回どっから来るのよ。
あまりの理不尽さ、唐突さに叫びまくって泣きじゃくる主人公がそりゃこんな反応になるわーと気の毒すぎます。

4:引き裂かれるナッシュ
道中唯一拠り所だったナッシュがトラックに縛り付けられる…吹かすエンジン音が心臓に悪いことこの上ない。「2000人の狂人」みたいにバラバラになるとこまで映してる方がよっぽど怖くなかった…想像してしまう怖さにブルッとなります。


滅茶苦茶やってるようで「極度にみせてこない」のが上品。

ジムが警察に拘留されうなされて寝ているシーンでは、夢の中でジョンが車の窓ガラスをトントンと叩く音が警官を撃ち殺す銃声に…

細やかな演出で成り立っててとてもB級では片づけられない作品だなあと思います。


こんなに面白い「ヒッチャー」なのになぜかBlu-ray未発売。

日本だけでなく世界的にBlu-ray化されてないようで、権利関係が問題の作品なのでしょうか…今回の劇場公開は貴重な機会ですね。

東京は現在新宿でしかやってないみたいでこれから続々全国公開していくようですが館数は少なめ。コロナももうちょっと収まってたらな…と自宅鑑賞してしまいましたが映画館で観れる人は羨ましいです。

善人役のルトガー・ハウアーも好きだけど、悪役やったときの迫力は圧巻!

この世の片隅にこんな人がいるのだろうか…ものすごいハマり役でした。

 

「ウェドロック」…バトルロワイヤルでも手錠のままの脱獄するルトガー・ハウアー

ルトガー・ハウアーが近未来刑務所で大暴れ!!
紛うことなきB級作品ですがアイデア勝負な脱獄モノとしてよく出来ている1本。

ウェドロック [DVD]

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ルトガー・ハウアー演じるフランクは電子工学の天才と呼ばれる男。婚約者と友人のたっての願いでダイヤ強盗に加担することになります。

しかし婚約者は友人と浮気していて2人してフランクを裏切り、たった1人捕まってしまいました。

フランクが送られた刑務所は柵もなく、看守の人数も異様に少ないという実験的な刑務所。

囚人たちは電子ロックの首輪を付けられます。

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首輪は他の囚人と電子信号でリンクしていて90メートル以上離れると…

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ドカン!!と爆発。めちゃくちゃ「バトルロワイヤル」っぽい。

首輪のリンク先は皆ペア同士になってると言いますが、「片割れ」が誰なのかは判別不能

全員一斉に動いて脱獄したらどうすんのよ、と細かい設定が気になりますが、その場合は遠隔操作でドカンと行くってことでしょうか。

90メートルって結構近い気もするしザル設定が否めないけど、こういうボンクラ映画は深く考えずに観るのが1番!

囚人たちがお互いを見張り合うというシステムはそれなりに功を奏しているようで、味方だと思っていた奴が看守のタレコミ屋だった…など刑務所モノとしての面白さが序盤から存分に発揮されています。

なぜか男女一緒の生活空間で囚人同士の性行為も認められているというガバガバな刑務所。

囚人の逃げる気力を奪うという1点に注力してて経費節減してるっぽいです。

囚人たちは皆本名でなく〝色〟にちなんだコードネームで呼ばれるという厨二心をくすぐる設定も出てきますが、フランクのあだ名はマジェンタ。何だか響きがカッコいい。

 

仲間の裏切りで投獄されたフランクでしたが、実は捕まる直前にダイヤを別場所に隠していました。

裏切った2人は刑務所の悪徳所長とグルになり、ダイヤの居場所を吐かせようと嫌がらせが繰り返されます。

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こちらは水房と呼ばれる懲罰房。

水の貼った真っ暗な棺に延々と閉じ込められるという結構酷い目に遭っています。こういういかにもB級映画なセットがいいですね。

しかし囚人同士の争いでパニックがあったある日、トレイシーという女性に先導されてフランクは脱獄することになります。

「看守と寝てあなたが〝片割れ〟って知ってたのよ」と語るなかなか豪胆な女性(ミミ・ロジャース)。

首輪を付けたままの脱獄、しかし2人は決して90メートル以上離れてはならない…制作陣がやりたかっただろう設定が半ば無理矢理スタート。

途中別々のバスに乗ってしまい一気に距離が開いたのを必死で走って追いかける…!!

高層ビルのエレベーターに1人だけ乗せられてしまい離れ離れになる2人…階段駆け降りーの、ロープでビルから落下しーの…で必死に追いかける…!!

設定を生かしたアクションが面白いです。

 

やがてどうしても脱獄したかったというトレイシーの過去が明らかに。

ウェイトレスだったトレイシーは裕福な議員とお付き合いしていましたが、家柄が釣り合わないという理由で彼の家族から麻薬歴をデッチあげられ無実の罪で刑務所送りになっていました。

裏切った男の結婚式をぶち壊しに行くのだというトレイシー。

なんとフランクもトレイシーも恋人から捨てられた者同士。

合わない2人が徐々に惹かれあっていく…ラブコメの波動を感じずにいられません。

 

しかし!!

実はトレイシーも所長と内通していて脱獄はダイヤの場所を見つけるため仕組まれたものでした。(この展開は割と読めてしまう)

フランクまた裏切られちゃうの!?切ないわーと思ってみてたら、裏切りに罪悪感を覚えたトレイシー、フランクの味方に付きます。

2人の首輪を爆発させようとした所長たちですが、さすが電子工学の天才、とっくに外しててブラフかまします。爆弾返ししてどっかーん!!にスカッとしないボンクラ人間はいないでしょう。

「どうする?もう一緒にいなくていいんだぜ。」と言いつつ抱き合う2人。

崩れた教会あとの景色も何だかロマンチックでラストはエンダァァァと叫びたくなります。

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アクションにラブロマンスに脱獄モノと一粒で3度美味しい作品。

後半の雰囲気はトム・クルーズキャメロン・ディアスの「ナイト&デイ」みたいな感じで癒されます。

ロケーションもビール醸造工場でバトルなどいかにも90年代前後のアクション映画っていう絵面がどこかノスタルジック。

ルトガー・ハウアーがハマり役かというとこれは疑問で彼の冷たい厳かな美しさは控えめです。

謎の民族衣装、変な柄のジャケット、ちょんまげ結びの髪型…となぜか驚異的にダサい格好ばかりで登場しますが、逆にレアでこれはこれでお楽しみ。

敵役の女性が「サルート・オブ・ザ・ジャガー」のジョアン・チェンでヒロインと全く違う雰囲気の女性ってところも良かったです。

 

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囚人の中には何と若き日のダニー・トレホが…!!

B級だけど何だか満足!!ルトガー・ハウアー作品の中で意外にめっけもんな1本です。

 

「サルート・オブ・ザ・ジャガー」…マッドマックスでクィディッチしてるルトガー・ハウアー

どんなB級映画に出ても美しい男、ルトガー・ハウアーがマッドマックス的世界で大暴れ!!

世界観と舞台装置だけでニッコリしたくなる素晴らしきB級作品です。

荒廃した未来。人々は皆、暴力的なあるゲームに夢中になっていました。

何やってるか分かりにくいけど、一応競技として成立してるっぽいこのゲーム。

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・1チーム5人で対戦。
・基本ラグビーに似ていて、犬の頭蓋骨(ボール)をゴールに持っていた方が勝ち
・頭蓋骨を持てる選手はチームの中の1人だけ
・その他の4人は妨害行為にでる(=殺し合いのような暴力が繰り広げられる)

こんなルールっぽいです。

ボールを持てる選手は1人だけでその人がゴールすれば即試合に勝利ってところは、何となくハリー・ポッター」のクィディッチに似ている気がしますね。

絵面があんな爽やかとは程遠いですが(笑)。

妨害選手にはそれぞれ決まった武器があるようで、チェーンをぶんぶん振り回す役の人とかがいて、これだけでオモロイです。

試合時間は「石100個を吊るした皿に投げつける」という係のおじさんがいて、その人が投げ終わったら終了というカウント方法が取られています。

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時計という文明の利器も存在しない世界を見事に表現!!しかしおっちゃんのさじ加減でどうにでもなりそうなテキトーさ。

劇中何度も「石何個分まで試合してたぜ!すげえ!」みたいな会話が当たり前のように交わされますが、何がどうすごいのかイマイチ伝わってきません(笑)。

さらに選手は皆頭部をヘルメットのようなもので覆っていて見分けがつきにくく、チームの色分けすらない状態なので、とにかく全編何が起こってるのか分かりにくいです。

しかしこの世界にはもうこの娯楽しかないということ、そして選手には負傷が付き物で怪我をした者は苦しい引退を迫られるということが、荒々しい中にきちんと描写されていて説得性を感じる世界観になっています。

 

ルトガー・ハウアー演じる主人公はサロウというかつて強リーグに所属していた選手。

金持ちの愛人に手を出したため追放され、今は流れ者チーム所属になっていました。

とある村を訪れた際、選手になりたいと願う女性・キッダがサロウに憧れてチームに弟子入りします。

キッダ役、ジョアン・チェンは華奢なエクゾチック美女で大男+少女っぽい組み合わせがアニメらしくてまた良し。

他メンバーもそれぞれ個性が出ていて、炭治郎のようにずっと箪笥を背負っているおっちゃんが良キャラです。

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しかしある日サロウは片目を負傷してしまいます。過去にどうしても付けたいケリがあったのか、かつて所属していたリーグが在る街へ向かいたいと訴え、メンバーはそれについて行くことに。

街はエレベーターで深く潜る地下都市で、暗い中たくさんの人が物を売り買いしている様子が何とも言えぬ荒廃感です。

街を支配するローブを着た白塗りの顔の貴族…爬虫類や昆虫のゲテモノ料理…金網越しに試合を大興奮で観戦する群衆…

特に印象的なのは地下世界のホテルで、梯子を登っていくと壁に吊るされたベッドがたくさん並んでいる景色は異世界感に満ちています。

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サロウはこの街でかつての仲間・ゴンゾと再会します。

長身の大男で顔は傷だらけ、頭の一部はブリキで出来ているという特殊メイクも素晴らしいキャラデザ。

そしてサロウのチームが挑戦者というかたちでゴンゾチームと対決することに。

貴族からサロウを痛めつけるようにと指示を受けていたゴンゾですが、意外に正々堂々と戦ってくれ、キッダが大活躍をみせ勝利!!

群衆の歓声に包まれ、デスゲーム設定はどこに行ったのか、爽やかなスポーツもののようなエンディングを迎えます。

でもサロウはもう歳で負傷もしてるから街には残れない。若者だけスカウトされてチームは解散。そんなほろ苦ラストにも余韻が残ります。

肝心の試合シーンをもうちょっと分かりやすく見せてくれれば一皮剥けた傑作になったんじゃいかなーと思う反面、そういうのを無視したからこそ味があるような気もするし…
尖った作品のようでスポーツ映画らしさがしっかりあるところが素晴らしいです。

設定資料集とかあったら欲しくなるタイプの作品。

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ルトガー・ハウアーはゴツゴツ衣装着てても隻眼になっても美しく、こういうアニメ的世界にはピッタリ、それだけでも美味しい映画でした。

 

ドラマ「岸辺露伴は動かない」がディ・モールトベネだった!!

年末NHKで三夜連続放送されていたのを録画にて一足遅れて鑑賞。

(1)「富豪村」

(1)「富豪村」

  • メディア: Prime Video
 

 「ジョジョの奇妙な冒険」第4部に出てくる岸辺露伴というキャラクターを主人公にしたスピンオフ漫画が原作。短編集になっている漫画の中からエピソードを選んでドラマにしたみたいです。

地雷じゃないかと恐る恐るみたところ、高橋一生露伴が予想以上に良かった!!

見た目は和顔ですが、ちょっとサイコパスっぽい威厳ある冷たい目線がピッタリ。

「…じゃあないッ!」といったジョジョっぽい話し方も自然に再現されてて、これぞ露伴先生って感じでした。

スタンドや杜王町と言うワードはあえて出さず、とってつけたような説明シーンが一切ないのも潔かったです。ジョジョを知らない人にとってもこの方が案外とっつきやすかったのかも。

他者を本にしてその人の情報を得られる&書き込んで行動を操作できるって改めてみてもなかなかチートな能力。

アニメっぽくみせずに、横溝正史江戸川乱歩っぽい大人向けの雰囲気に落とし込んでたのがとても良かったです。

2巻ある原作漫画のうち自分は1巻だけしか読んでなかったのですが、1番面白いのを最初にぶつけてきたんじゃないかな、と思ったのが1話目の富豪村。

 

1 :富豪村
山奥に豪邸が立ち並ぶ謎の富豪村。その所有者は各界で成功した大富豪ばかりだと言う。
担当編集・京香の誘いにより村を訪れた露伴だったが、この村で土地を買うには厳しい「マナー」の試験をクリアしなければならなかった。

荒木先生自身ホラー映画がお好きなようでエッセイ「荒木飛呂彦の奇妙なホラー映画論」にて「田舎に行ったら襲われた系ホラー」について語っていました。

見知らぬ土地の密室感、コミュニケーションの断絶。最近でいうと「ミッドサマー」的不気味さが本作にも溢れています。

マナーで他者から測られるという焦燥感は身近に感じられる恐怖でもあって設定だけでもう面白い!

正しい正しくないでヒトをあんまり追い詰めるのどうなんよ、マナーより大事なのは思いやりだろうとやり返す露伴先生が爽快でした。

編集者・京香ちゃんの大切なものが愛犬と恋人っていなんていい娘なんでしょう。

彼女のレトロスタイルな服装も可愛らしくて作品の雰囲気にピッタリ、マナー判定の子も原作に忠実ないで立ちで衣装も含めすごく良かったです。


2:くしゃがら
漫画ではなく小説版のエピソードだったらしく話を全く知らないまま鑑賞。

露伴の同僚の漫画家、志士十五は担当編集が寄越したという放送禁止用語リストに夢中。なぜかその意味が記されていない「くしゃがら」という言葉に取り憑かれたように強く興味を持ち、次第に言葉に乗っ取られていく…

言葉の持つ魔力に狂わされるというオカルトホラーな1篇で、十五役の森山未來の狂気の演技が鬼気迫っていて引き込まれました。

露伴先生と編集者の京香はくしゃがらの言葉を聞いてもなぜか飲み込まれず…好奇心旺盛でも(いい意味で)自分優先で執着はほどほどな人だからセーフだったのかな。

最後の番組のワーニングまでホラーに徹していたのがいい演出でした。

 

3:DNA
インテリアデザイナーの真依は6年前の事故で夫を失い、1人で娘の真央を育てていた。
逆さま言葉でしか話せず目の色も皆んなと違っている真央は家に引きこもり気味。そんな真央が懐くようになったのは、交通事故で記憶を失った京香の恋人・太郎だった…

臓器提供された側にかつての故人の記憶や生来の性格が引き継がれてしまっていた…という、東野圭吾の小説にそんな話なかったっけというオチのストーリーでした。

娘を守ってるつもりが隠してた、個性を普通で片付けられたら困ると悩むお母さんの心情が丁寧に描写されてたのが良かったです。

顔がメモ帳になるだけでなく、本そのものになってしまったヘブンズ・ドアーの見せ方にちょっとビックリしたけど、並べた本と家族3人手を繋ぐところが重なる演出も綺麗でした。

原作では富豪村エピソードにしか出なかった京香がドラマでは完全にレギュラーになっていてかなり脚色されてるようでしたが、1話から出てた中村倫也の記憶が元に戻るかと思いきや、別の新しい人生を歩む、そのラストが意外。

私の好きな彼はもういないとアッサリ見送れる京香ちゃんが潔くて、大人しいヒロインに収まらずジョジョらしい女性キャラクターになってると思いました。

露伴先生のキッチリしてて案外面倒見がいいところも3エピソードでしっかり滲み出ててよかったです。

富豪村が漫画でも飛び抜けて面白かった印象ですが、この他記憶に残ってるエピソードといえば、懺悔室と密猟の話。

ドラマの撮影は夏だったそうですが、比較的映像化しやすいのを選んだのかなと思います。

アニメ版の脚本も担当されてた小林靖子さんが今作も担当されてたとのことですが、原作破壊せず上手くアレンジした安心の実写でした。

スタッフロールみてたら櫻井孝宏さん(アニメ版の露伴の声)も声だけのゲスト出演していたようで、ついつい確認。

1話目…差し入れ渡してくれる刑務官
2話目…冒頭ラジオの声
3話目…病院のアナウンス

そんなファンサービスも嬉しかったです。

 

「地獄の門」…ビヨンドの10歩前、フルチのグロ炸裂ホラー

なんて罰当たりな話なんだ。(いいぞ、もっとやれ)

イタリアンホラーの巨匠、ルチオ・フルチが「サンゲリア」と「ビヨンド」の間に撮っている1本。

地獄の門 HDリマスター版 [Blu-ray]

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  • 発売日: 2014/07/02
  • メディア: Blu-ray
 

ジャンル的にはゾンビものですが、ロメロや「ウォーキングデッド」系ゾンビではなく、世界がまるごと死者の世界に変異するような、よりオカルト色の強い作品となっています。

話は安定の支離滅裂、しかし気前よくグロが炸裂した雰囲気満点のホラー。

 

アメリカのとある町、ダンウィッチにてトマス神父という人が自殺。なんとこの神父、聖職者の自殺という冒涜行為により地獄の門とやらを開こうとしていました。

キリスト教圏の人からすればこれだけでガクブルなお話なんでしょうか。

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土台がないけどどうやって飛び降りたんだよ、とどうでもいいことばっかり気になってしまいます。

一方ニューヨークで降霊会に参加していた女霊媒師・メアリーはその様子を遠隔地から霊視、あまりの恐怖にショック死してしまいます。

墓に埋葬されますが、棺の中でなぜか蘇生。真っ暗な中ドンドンと棺を叩きます。

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閉所恐怖症には堪らない恐ろしさ、「キルビル」にもこんなシーンがあったな。

偶然通りかかったジャーナリスト・ピーターがメアリーの叫び声を聞き、棺をぶった斬って助けてくれますが、メアリーまで一刀両断しそうでヒヤヒヤ。

メアリーを送り届けたピーターは、彼女のボスっぽい霊媒師から「今からダンウィッチの町に行って地獄の門を閉じないとこの世が終わる。4000年前の本にそう書いてある」と意味不明なことを言われます。

4000年前の本ってアンタ読めるんかい!って思うけどエノク書旧約聖書の1部とされる)のことを言ってるみたい。

なぜかピーターとメアリーの2人が組まされ、地図にも載ってないというダンウィッチの町をひたすら勘に任せて車で探し回ります。

 

一方当のダンウィッチの町でも鏡が突然割れるなど怪奇現象が勃発してました。

なんとこの町は元々魔女と異教徒の住む場所だったといいます。

悲しいことに若者が犠牲となってしまいますが、まずは車デートしてたローズとトミーのカップル。(トミー役は若い頃のミケーレ・ソアヴィ監督)

イチャついてる最中、急に視線を感じて外を見ると自殺した神父が突然現れる…!!その目を見つめるとローズの目から突然血の涙が流れ出し、口から内臓をゴボゴボと吐き出します。

ホルモン、レバー、ミノ、ハラミ…勢いよく次々にゲロゲーロ。

食事中には絶対観たくないグロさ。そして男の方は頭蓋骨を絞られあっさり死亡してしまいます。

さらにもう1人、エミリーという若い女性も神父の霊に襲われ殺されますが、町の人々は証拠もなしにボブという変わり者の青年を犯人だと決めつけてしまいます。

そして町の親父が電気ドリルでボブの頭を貫いて惨殺!!

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霊的世界と全く関係のない恐ろしい人間の仕業。

恐怖に駆られた人間は何するか分からないという深い人間ドラマ?が展開されます。

 

そんな中メアリーとピーターはダンウィッチにたどり着き、町の精神科医ジェリーと合流します。

ジェリーが神父の怪死事件について語ろうとしたその時、突然窓が開き、大量のウジ虫が吹雪となって降り注ぎます。

50キロの本物のウジ虫を巨大掃除機で飛ばしたという狂ってるとしかいいようのないシーン。

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俳優さんは皆真一文字に口を閉じています。

何としても虫を口に入れてたまるかという演技じゃなくてマジのやつ。

しかしCGも使わずこんな狂気の沙汰をやらかしたおかげでこの世がヤバい世界になってるという危機感は存分に伝わりました。

町の明かりが次々に消え、薄暗い中逃げ惑う姿もホラーな雰囲気バツグン。

神父の墓をようやく見つけたメアリーたちは、地下墓地に降りて行きますがそこには沢山の蘇ったゾンビたちが…

ジェリーが十字架の釘で現れた神父の霊を刺すとあら不思議、神父も周りのゾンビも全て燃えて灰になりました。

しかしハッピーエンドかと思いきやラスト、地下墓地から戻ってきたメアリーたちに町の子供が駆け寄ってくるといきなり画面に黒い亀裂が現れ叫び声が…少年がゾンビになった演出?らしいですが意味不明です(笑)。

明るいエンドにしたくなかった気持ちは分かりますが、あまりに投げっぱなし!

 

ラストも含めお話的には支離滅裂なのですが、本作で登場するゾンビは瞬間移動したかのようにとつぜん現れるというのが面白いです。

急にふと出たかと思えば瞬きすると消えている…人の恐怖心に反応して実体化するとかの設定に昇華できそうな気もしますが、そんな理詰めの映画にしたらフルチらしくなくてつまんなくなってしまうでしょうね。

この世が死者の世界に呑まれるという世界観は次作「ビヨンド」と共通していますが、あちらは三途の川を垣間見たかのような気分にさせられ、その画の美しさも寂寞感も圧巻でした。

地獄の門」も墓地の雰囲気や風吹きすさぶ荒涼とした町の景色は雰囲気満点ですが、生死の哲学すら感じさせた「ビヨンド」はまさに奇跡の1作、それに及ばずあと10歩といったところ。

今回眼球破壊シーンはないものの、目のアップはやたら多かった(笑)。

CGなしのハンドメイドなグロ描写は見応えたっぷりで「好きなことやってる」感が伝わってきて何だか元気の出るホラーです。