どうながの映画読書ブログ

~自由気ままに好きなものを語る~

映画「フォートレス」は、SF脱獄モノの傑作!?

脱獄モノ?刑務所の囚人モノ?ってなかなか面白い作品が多いと思っているのですが、「フォートレス」は、近未来のハイテク刑務所から必死で脱獄するというアツい映画。

フォートレス [DVD]

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子供の頃、ビデオで観て夢中になった作品だけど、大人になってから度々観返しても面白かった!!

1992年の作品で、主演はダイアン・レインの元旦那、「ハイランダー」でおなじみの、端正なゴリラ顔イケメン!?クリストファー・ランバート

そして監督は、(大人になってから知ったが)ホラー畑のスチュアート・ゴードン

アクションとSFと囚人ものとバイオレンスがごった煮したみたいな作品だけど、大好きな作品なので、今日は「フォートレス」について少し語ってみたい。

 


過激なひとりっ子政策のディストピア

「フォートレス」の舞台は西暦200X年。資源が枯渇する中、人口だけが増加の一途を辿り、政府は〝産児制限法〟なるものを制定。

女性は1人しか子供を産んではいけないと、厳しく取り締まられている。
そんな中、主人公・ジョンの妻、カレンは第2子を妊娠。出産のため、夫婦はなんとか国境を出ようとするが、捕らえられ、砂漠にあるハイテク刑務所「フォートレス」に送られてしまう。
愛する妻と赤ん坊を救うため、ジョンは決死の脱獄を決意する…。

 

「トゥモローワールド」みたいに子供がのぞまれる未来もあれば、のぞまれないディストピアもあるのね…。
「フォートレス」の未来では、人間一人ひとりにバーコードが印字されているので、かなりの管理社会のようだ。

ジョンとカレンには実は第1子がいたが、死産だったという。

それでも第2子をのぞむことが許されず、中絶も絶対禁止という、メチャクチャな未来。
ジョンは懲役31年を言い渡され、カレンは子供を産むことは許されるが、生まれた赤ちゃんは監獄側の所有物として獲られてしまうという。
別棟に収監された2人に脱獄の道はあるのか!?

 

面白いのは、フォートレス刑務所が政府に委託された私立監獄という設定だ。

地下33階の監獄の画はなかなか今見ても悪くない。

「ゼッド」とよばれるハイテクコンピュータが管理していて、女性の声でしゃべる「ゼッド」の冷血っぷりもいい。

加えて、囚人は胃の中に体内装置を入れられて、逆らうと苦痛を与えられるか、爆発させられて殺されてしまう。

序盤でもう、見本みたいに死んでくれるおじさんが出てくるが、こういうところがホラー監督の趣味だなあ、と観返すと思ってしまう。

 


魅力的な脱獄仲間たち

刑務所モノの肝といったら、魅力的な仲間がいるかどうかだと思う。
なんでも調達してくれる奴がいたり、孤独を打ち明ける友に出会ったり、男に強姦されそうになるのを助けてもらったり。
「フォートレス」も同じ房の仲間に出会って、協力しあって脱獄を決意…という王道展開になる。


ジョンの仲間もなかなか悪くない、個性ある面子が揃っている。

 

●エイブラハム(演:リンカーン・キルパトリック)

ショーシャンクのモーガン・フリーマンばりに好感度の高い模範囚。

所長に仮釈放をエサにこき使われていたが、勝ち取らなければ自由は永遠に来ないことを悟り、脱獄チームに参加。

 

●スティッグス(演:トム・トールズ)

ヒゲとハゲのおっさん。
チームの中での活躍度は低いが、体内装置除去の実験台になってくれ、盛大にゲロってくれる。

 

●D・デー(演:ジェフリー・コムズ)

有能すぎるメガネのロン毛。
体内装置の撤去方法を思いつき、さらにはコンピュータウィルスをゼッドにお見舞いし、フォートレス全体を機能不全に追いやった真の英雄。
度のキツそうなメガネをしているが、脱獄中に紛失。「メガネがないとダメだ!」の悲痛の叫びにこちらまで慌てふためく。


ジェフリー・コムズといえば、スチュアート・ゴードン作品の常連で、「死霊のしたたり」のハーバード・ウェスト博士のイメージが強いが、今作ではまさかの(比較的)常識人。Dデー、マジで助かって欲しかった。

 

●ニーノ(クリフトン・ゴンザレス・ゴンザレス)

若い男の子…というだけでケツを狙われて、凶悪囚人に目をつけられるが、ジョンに助けられる。リアクション要員。

 

他、対立しあう囚人役だけど、頭に187の文字が掘られた殺人犯・マドックス(ヴァーノン・ウェルズ)も印象的。

やっぱり他の囚人との協力や衝突が、脱獄モノの醍醐味ですよね。

 

 

悪役の所長が意外に哀しい奴…!

刑務所は基本ゼッド(AI)に管理されつつも、人間の所長・ポーもちゃんといる。
美人のジョンの妻(ローリー・ロックリン)に一目惚れ、自分のそばに置くというお決まりな感じの安い悪役…かと思いきや、コイツがなかなか哀しい奴なんです…!

ポーは、生まれた時からメンテル企業の所有物として管理され、強化人間として改造されていた。
食事もせずに、チューブで月に1度栄養を入れるだけ。眠らない。セックスもしない。
そんなポーが、ジョンの夢を盗み見て、夢の中のカレンに恋をしてしまう。

「ジョンと別れてくれれば、君の子供は改造人間にしない。」…って、改造人間の彼がいうと、なかなか悲しい台詞。
カレンもカレンで、このままだと自分の子の未来がポーになってしまうことを知って愕然とするけれど、2人の関係が母子のようにもみえてくるんだよね。
途中カレンに騙されてお酒を飲んで眠るとき、胎児のような姿勢で眠るのも印象的だ。


ポー役は「ロボコップ」でおなじみ、カートウッド・スミス!!

 
ポーを単純な嫌な奴にしなかったことで、作品の良さが増したと思う。

 


SFアクションのはずが、抜けないホラー色

この作品が子供の頃、強く印象に残ったのは、独特のバイオレンス描写がところどころにあったせいかもしれない。

・冒頭、ジョンが猟犬に追われるところ。噛まれて血が出るところまでしつこく映してくる。

・体内装置を飲み込まさせられる苦しそうな場面にやたら気合が入っている。
・狙撃されて腹部に大穴があく囚人がムダにグロい。
・懲罰として延々とぐるぐるまわる特殊装置にかけられ、精神を破壊されるジョンがちょっと怖い。

 

もうええって!!といいたくなるなんか濃ゆい感じが、ホラー映画畑の人のセンスなのかなあと思う。


スチュアート・ゴードン作品、観てないのもあるので、これを機になんとか発掘していきたい。

キャッスル・フリーク HDリマスター版 [Blu-ray]

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しかし劇場未公開のはずの「キャッスル・フリーク」のBlu-rayが出てて、「フォートレス」は出てないってなんか不思議だなあ。

 

いよいよ監獄から脱出したあとの展開は急ピッチ…!

冒頭あれだけ旅行にでるのに検閲してたのに、メキシコ国境がフェンス1枚で笑う。

さんざんグロい描写があるものの、赤ちゃんが生まれてニッコリ笑う夫婦の顔のラストにこっちもニッコリ。

 

子供の頃からこんな映画ばっかり観てたからか、それとも元からそういう性癖だからこういう作品が好きなのか、好みの作品が偏ってるな〜と我ながら思う。
しかし「フォートレス」は、自分的には、脱獄モノのテンプレを満たした傑作です!!