どうながの映画読書ブログ

~自由気ままに好きなものを語る~

「ポセイドン・アドベンチャー」…大人になったらアーネスト・ボーグナインに涙…!!

久々に観ても感動…!!でも10人の乗客のうちの誰に感情移入するか、思うところが変わるものだなあと思った。

転覆して逆さまになった豪華客船を”上って”脱出を目指す…というシンプルなストーリー。

アメリカン・ニューシネマの旋風が残っていた1972年当時、あえて逆をいった超大作ですが、「この世はなんて理不尽なんだ!!」と叫びたくなる人間ドラマが今みても色褪せない。

昔は登場人物にイライラしながらみていて、10人あまり団結していないように思っていた気がするが、今みたら「みんな大変な中、助け合えててすごい!」となんだか大きく印象が変わった。

魅力に溢れた乗客メンバーからまず振り返ってみたい。

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◆全員善人…!な10人の乗客

ジェームズ・マーティン(演:レッド・バトンズ)

雑貨屋経営者。洞察力があり、他メンバーの衝突の仲介に入ったり、命がけで助けたり、なにげに1番しっかりしていて頼りになる存在。

「マラソンをするのは孤独だから」とベルに言われていたけれど、常日頃己と向き合ってきた”自分”のある男がここぞというとき案外強いのかも…なんて思わせる。静かなヒーロー、この人はいつみてもかっこいい。

 

イカーズ (演:ロディ・マクドウォール

足を負傷した船の従業員。みんなの道案内役となるが、換気塔から落ちて死亡。出番少なく思えるが、相当足痛かっただろうに、皆の士気をそがないためか、痛みを訴えることもなく、絶対にいい人だったよね…。

 

スーザン&ロビンのシェルビー姉弟(演:パメラ・スー・マーティン/エリック・シーア)

子供が船の中の行っちゃいけないとこで遊びまくっていたという冒頭が、転覆後の探索でいきてくるという見事なストーリー。「おばさん、さっきは300キロのメカジキと比べてごめんね!」少年だけど、紳士…!

15歳のお姉ちゃんが、ジーン・ハックマン演じる牧師さんに淡い恋心抱いているのもリアル。父性ある異性に惹かれるお年頃なのね。

 

ノニー・バリー(演:キャロル・リンレイ

最愛の兄を亡くして呆然のシンガー。梯子を登ろうとして身体が動かないと震え、”泳げない”とうずくまる…。昔はイライラしてみてしまっていたが、「こんな状況だと自分もこの人と同じかも」「この人が1番普通の人なのかも」と思うようになる。

 

ベル&マーニーのローゼン夫妻(演:シェリー・ウィンタース /ジャック・アルバートソン)

それまで”足手まとい”だと思われていたおばさんが皆の窮地を救う。そのあとの死…。「子供たちだけでも助かってほしいわ」こんないい人がなぜ…。めちゃくちゃショックで子供の頃号泣でした。

女性に先立たれる男性の方が辛い…なんていうけれど、呆然となり、なにも話さなくなる夫のマーニーの姿も悲しすぎる。

 

マイク&リンダのロゴ夫妻(アーネスト・ボーグナイン/ステラ・スティーブンス)

警部補&元娼婦の美女と野獣夫婦。「どれだけ夫が妻を愛しているか」は、冒頭船が沈むまでの27分で上手く描いているなあ、と改めて感心する。

昔観てたときはこのアーネスト・ボーグナイン演じるロゴに1番イライラしていた。

めっちゃ頑張ってるスコット牧師になんか文句ばっかり言っててうるさい嫌な奴だと思っていた。

でも今みるとロゴも善人やん!!と思いなおす。

転落したエイカーズを助けに行こうとしたり、子供を優先させてたり、どうみても悪い人ではない。

「牧師の選択が正しいとも限らない」…というロゴの姿勢もきっとまた真理。

スコット牧師も後見はロゴと決めていたし、彼の一言が皆で考える場面を作ったり、お互いがチームに必要な存在だったような気もする。

リーダーにはなれないが、手先足先として動き、時折上の言うことが正しいのか?疑問を口にする。なんか中間管理職みたいなポジション。

今回みていて、1番感情移入しながら観てしまったのがこのロゴだった。

そして最後の1人は「神頼みすんな」の破天荒牧師、スコット…!!

 

 

◆出来るリーダーも苦悩している

ロゴが中間管理職なら、スコット牧師は出来るリーダータイプ。

頭がよく、合理的な物事の進め方は、時々全員の理解を得られないこともある。

脱出口を探そうと1人探索していたが、みつからず、暗く沈み込む牧師…。でもそこにスーザンがやってくると、少女を励ましながら我を取り戻したようになる。

誰もみていないところでは、こういう”出来る人”も苦悩しているのでは??そんなことを思わせるシーン。

自分は牧師さんタイプでは全くないし、そもそも牧師さんタイプなんてなかなかいないと思うが、「みんなから尊敬されたり頼られたりするリーダータイプも、普通にしんどいんです」というのは、胸にせまるなあ、と思った。

 

 

◆努力家でさえ報われない理不尽さ

ポセイドン・アドベンチャー」は、信仰をテーマとしている…とよく言われるようだが、人に天災をもたらすギリシャ神話のポセイドンからとった船のネーミング、主人公が信仰者というところからして明白だと思う。

不平等で結果のみえない人生をよりよく生きれるか…でもこれって、別にキリスト圏に限らない、普遍的な人生の悩みのように思える。

「苦しいときに、神に頼らないこと。」

「神は努力するものを愛す。」

昔は、スコット牧師が説得しても、助けが来ると信じてホールに居残った人たちのことを「他力本願の愚か者」と断じてみていたが、根拠なく大丈夫だと思ってしまう姿もリアルだなあと突き刺さる。

その上楽な方に流されず努力した仲間の乗客たちでさえ非業の死を遂げていくのが残酷だ。

ラスト、リンダを失ったロゴがスコット牧師を恫喝する姿は、牧師が可哀そうだとずっと思ってみてたけれど、真面目に必死でやってきてそれが裏切られたときの行き場のない怒りをどこかにぶつけたくなるロゴの気持ちも分かるなあと思った。

 

努力しても必ず報われるわけではない。理不尽なことがたくさんある。最後に「牧師の言う通りだった。」と失ってなおスコットの姿勢を認めるアーネスト・ボーグナインの台詞に厳しいけれど一筋の救いがあるように感じた。

 

 

 

◆裏話と関連作あれこれ!?

ドラマの感動とは別個に、CGなし、オール実写で本作が撮られてることに驚嘆する。

「この船大丈夫なの?」…前半から見事に恐怖を演出する”船の揺れ”は、カメラの方を揺らしていただけという、単純だが1番効果的なみせ方。

船が真っ逆さまに沈む映像は7メートルの模型を使った撮影だというが、まったくそうはみえない…!

タイタニック」とも比較されるみたいだけれど…

 「ポセイドン・アドベンチャー」って(多分)予算の都合上、沈みゆく船の外観がほとんど映らないんですよね。

数多あるほかのパニック映画だと、船がどこまで沈んだとか、救助隊がどこまで来たとか、「外の様子」がもっと分かりやすく映されるような気がするけど、それがない。

でもそれがかえって密室感が増して緊迫度が高いなあ、と思う。

ちなみにポセイドン号のモデルとなり実際に撮影でも使われた「クイーン・メリー号」の全長は約300メートルで、タイタニック号は約270メートル。規模としては大体同じでしょうか。

(なんかタイタニックでかく思えるな…)

パニック物の人間ドラマとしては比較にならないけど、「タイタニック」は「タイタニック」で自分は大好きです…!

 

そして本作鑑賞後、俄然観たくなるのは「タワーリング・インフェルノ」。

タワーリング・インフェルノ [DVD]

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製作アーウィン・アレンと脚本スターリング・シリファントが再ダッグを組み、「ポセイドン・アドベンチャー」の2年後に公開された作品。

どっちも名作だけど、自分は「ポセイドン・アドベンチャー」の方がより悲壮感があって好きかも…。

でも目移りするような豪華キャストだし、なんといっても2大主演俳優がカッコいいし、こちらもまた観たい作品。


そして、今回一緒に映画をみていたゲーマーの家族が「セプテントリオンやん!」とツッコむ…。

セプテントリオン

セプテントリオン

 

なんのこっちゃ、と思ったら、ファミコンでそっくりなゲームがあったのね。

天地左右が変わる船内を脱出ってなかなか面白そうなゲーム。スコット牧師そっくりなキャラクターも登場するようだ。

クロックタワー」と同じメーカー、ヒューマンのゲーム。オマージュで済むのか…昔は自由だなあ。

 

 

 

大人になってみると感じ方が変わる映画ってあるように思うけれど、「ポセイドン・アドベンチャー」は、自分にとってそんな映画の1本でした。

年を経つつ、また鑑賞できると嬉しい作品だと思う。