久々に映画をみて、フィッシャー(演:ロディ・マクドウォール)のキャラクターがいいなあと興奮。
「ヘルハウス」といえば、幽霊屋敷vs4人の男女という、呪われた屋敷系ホラーの名作。
オカルトもの・ゴシックホラー・美女が苦悶するエロスと見所が詰まっていて、根強いファンがいる作品かと思う。
死後の世界とか、霊の存在を科学するとか、自分は100%のっかってみれないところもあるけれど、”悪霊がそれぞれのキャラクターに精神的攻撃を仕掛けてくる”というストーリーが改めて観てもよく出来ていて、とても面白かった。
そしてこの度リチャード・マシスンの原作「地獄の家」を初めて読破。原作を読むと、各登場人物のバックグラウンドがよく分かり、2度楽しめる作品になっているように感じた。
4人のキャラクターを原作と比較しつつピックアップしてみたい。
●フローレンス・タナー
死者との交流を行うタイプの”心理霊媒師”。信心深く、基本善意でもって霊と接しようとする女性。
演じるパメラ・フランクリンは黒髪の清涼感ある日本人好みしそうな美人。このフローレンスが、傷めつけられていく様子が、なんというか、フェティシズムを感じるエロさ。
原作だと年齢は43歳…!!(若く見えるかなりの美人という設定の模様)
女優さんの魅力を生かし、年上キャラをもう1人のアンにしたのは良改変な気がします。
屋敷の霊・ダニエルを助けようと自己犠牲的なのには、彼女の過去と関係していることが明らかに…。映画版は極めて説明が少ないけれどパメラ・フランクリンの清廉とした美しさが、キャラクターを充分立たせていると思う。
それにしても幽霊との事後!?にニヤッとする顔は怖かった〜。
●ライオネル・バレット
霊の存在を完全否定する物理学者。
心霊現象は、人間の出した物理エネルギーの残りによるもの。要はヘルハウスに残ってる悪い電磁波が個人個人に作用しているだけ。だからその磁力をうち消せばオッケー!!→???
とにかくチートな機械持ってきて、お清めしてくれて、すごいねーとしかいいようがない博士。
原作のライオネルのキャラクターは、脳性まひで身体の1部が不自由な男性となっていて、屋敷の霊の正体とリンクしているようでここもまた上手い。
仕事一筋ストイックで誇り高い研究者。真面目な人柄が伝わるライオネル。一見上手くいってそうな夫婦関係でも色々ある…!そこを突いてくる悪霊がイヤらしい。
●エディス・バレット (映画ではアン・バレット)
フローレンス役のパメラの対比となる、オトナの美女感が素晴らしいゲイル・ハニカット。
原作だとライオネルと20歳の年の差夫婦なのですが、映画はザ・夫婦の危機って感じで、これはこれでまたいい。
お風呂上がりにはローブ姿。髪もメイクもバッチリ。幽霊屋敷でも艶やかで優雅すぎる~と思ってしまうけど、世界観にマッチしていてそれがいいですね。
●ベン・フィッシャー
かつて15歳でその頂点を極めた天才物理霊媒師。しかし名高い悪霊屋敷の前に無残に敗北。たった1人生き残ったが、30年のときを経て、今いちどヘルハウスに挑む…!!
くたびれたおじさんなのに、漂うザ・主人公感がたまらない。
心を閉ざしていたが故に、ヘルハウスからの攻撃を免れることができたフィッシャー。仲間の死で我に返り、己の弱さを乗り越えて、勇気を振り絞って立ち向かう…このラストに胸がアツくなる。
いま、45歳のぼくは、十万ドルを儲けるためにこの一週間を何とかうまくやっていこうとしている碌でもない、迷ってばかりの、寄生虫なんだ。
30年間不遇の人生だったことを思わせる寂寞感。
傍観を決めつつも仲間にみせる優しさ。
イケメンではないけど、ものすごくカッコよくみえてくる、魅力的なキャラクター。
そして、ラストに明かされる悪霊のベラスコの正体。人のコンプレックスを攻撃していた幽霊も、またコンプレックスの塊だった…というストーリーが秀逸で、「ヘルハウス」に人気があるのは、このお話の面白さにあるのでは、と思う。
原作と比較しての感想は、一言でいうと、原作意外に長い…!!描写が緻密でジワジワ追い詰められている感が強く、性的な描写もより生々しい。不気味さはこっちかなと思う。
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リチャード・マシスンは「地球最後の男」を随分前に読んだきりだったけれど、「激突!」「ある日どこかで」の原作もこの方なのね。
他の作品も映画とあわせて楽しんでみたいように思った。