どうながの映画読書ブログ

~自由気ままに好きなものを語る~

「恐怖の報酬」(クルーゾー版)…まさかのドロドロおっさんずラブ!?

フリードキン版「恐怖の報酬」をつい2ヶ月前に鑑賞。これがもう人生のベストに入れたくなる位、ものすごく面白くて、思い出しては興奮がとまらない日々。

1953年のオリジナル版も鑑賞しようと思いつつ、「好みに合わなくて退屈するかも」なんてちょっと二の足を踏んでいたところ…大変失礼致しました!!いやあ、コッチもすごかった…!!

恐怖の報酬 HDニューマスター版 [DVD]

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クルーゾー版は、一言でいうと、男同士の友情を超えたなにか…濃厚なホモセクシャルをビンビンに感じる映画だった。

基本プロットは同じなのに、完全な別物。これがフランス映画か〜と唸らされたクルーゾー版の見所を語ってみたい。

 

 

静かなるニトロ運搬のドキドキ

正直フリードキン版をみたあとでは、あの吊り橋や油田爆発の超映像に敵うシーンなんてないだろうと、期待薄だった。

でもね、1953年の映画と思えないくらい、こっちもなかなかスゴい映像がみれた。前の車とぶつかる〜、ドロドロの石油沼、超カーブの道…。転回困難な道の土台が崩れる場面はなかなかの迫力。

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車がポンコツ、仲間も頼りにならない!?と、ザ・障害物の絶望感より、不安感を静かに煽られるドキドキがたっぷり。

また映像が白黒なのがいい。流れているであろう血が石油オイルの黒と一緒くたになって、どんな負傷したのか、よく分からない。でも相当痛いことになってると、脳で再生させる怖さ。

火災映像も白黒の炎だと、なんとも言えない終末感が漂っている。

そして神がかっていたのは、ルイージ組脱落の瞬間。

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風で飛ぶ紙タバコと一瞬の光にゾクッ。ここはフリードキン版を遥か凌駕していると思った。

 

 

ホモセクシャルにみえる主人公

クルーゾー版の主人公はイヴ・モンタン演じるマリオ。

イタリア系男性・ルイージの家に居候していて、ルイージは料理も洗濯もしてくれるという、至れり尽くせりのルームメイト。

そしてマリオは居酒屋の若い美人・リンダと付き合っているけれど、自分にゾッコンのリンダを見下して利用してばかり。なんかずるい、イヤな奴にもみえてしまう。

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それにしても胸元空きまくったタンクトップにスカーフってなんかエロい…。

そんなマリオの下にある日、同じフランス人のジョーがやってきて、2人は意気投合。ジョーは数々の死線をくぐり抜けてきた指名手配犯の男で、マリオはそんなジョーを兄貴分として慕い始める。

それを面白く思わないルイージとリンダがマリオを取り合う。南米の貧困の村が舞台のはずなのに始まる謎の恋愛ドラマ(笑)。


そして例の油田火災が起こって、ニトロ運搬選抜メンバーにマリオたちが選ばれるわけなんだけど…いざ旅がスタートすると、1番頼りになりそうだった兄貴・ジョーがとんでもないチキン野郎で、足を引っ張りまくるという展開にびっくり…!

演じるシャルル・バネルは、前半と後半で全くの別人で、この人の演技がすごかったし、展開が全く予想できなかった〜。

 

ニトロトラックを阻むたくさんの恐怖がある中、どんどん変化していくジョーとマリオの関係がなによりもスリリング。

「もうお前なんか見捨ててやる!」→「やっぱりお前いないとダメだわ」→「邪魔だから足轢いてやる」→「ごめんね、痛かった?」

これが、なんかカップルのいざこざを見せつけられてる気分になる(笑)。

真っ黒なオイルに浸かって2人ドロドロしてるシーンとか、コップで水飲ませるシーンとか、ものすっごい〝性〟を感じる映画。

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石油吹き出すパイプも擬似的な何かにみえてきてしまいます。

盲目的に自分を慕う人間よりも、ありのまま、ときに傲慢に、自由に生きる人間に惹かれたマリオ…。それこそがマリオが求めた性だったのかもしれません。人間のエゴと性愛の映画、うーん、これがフランス映画か~。

 


臆病な年寄りと向こう見ずの若者

鑑賞後、1つ疑問に思ったことがあって…

元々ジョーはニトロ運搬選抜メンバーに入っておらず、正規メンバーだったのは、スメルロフというおじいちゃん。でも彼が行方知れずになって、代理のジョーが入ることに。ジョーがスメルロフ殺した?と思ってみてたけど、ピンときてラストシーンを観返すと、スメルロフは酒場で皆と踊ってて、この人も〝逃げただけ〟だったのね。

 

老人は逃げて、若者は死を恐れず立ち向かう。

劇中ジョーは何度か「年取ったら死ぬのが怖くなる」というように話していたと思う。

ジョーをずるい臆病な人間とみるか、それとも恐怖を知った賢い人間とみるか…どちらの見方もありな気がします。

ラストを考えるとホント命あってこそなのに…とジョーが正解だったのかもと思わなくもないし、撮られた時代を考えても戦争批判の作品でもあるのかな、と思う。

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主人公組とは異なるほのぼの!?な陽気で優しいイタリア人・ルイージと、クール有能ドイツ人・ビンバ。考えてみれば敗戦国の2人なのね。

 

「フリードキン版とどちらがいいのか?」

個人的には圧倒的に77年版の方が好み。4人の男のどんづまり感、2度と撮れないであろう奇跡のような映像。フリードキン版の方が人間ドラマが少ないようでいて、「必死に生きる人間賛歌」みたいなものを自分は感じた。

クルーゾー版は、濃厚な人間ドラマがあるけど、ラストがすごーくシニカルというか、冷たい、突き放した知性みたいなものを感じた。

全く違うモノがみれて、両方傑作…! 今リメイクしたらめっちゃスカスカなのが出来上がってきそうで怖いわ~。

 

アンリ・ジョルジュ・クルーゾー監督のことを全く知らなかった自分…フランスのヒッチコックと呼ばれた巨匠だそうで、次は「悪魔のような女」をみるぞ〜とまた楽しみが増えて嬉しい限りだ。