最近「ゴッドファーザー」を久しぶりに観たという旦那が、「アポロニアっている?」「あの結婚のくだり要る?」と何かとんでもないことを言い出したので、「いるやろ!」「というか、アポロニア爆死の瞬間、マイケルの幸せ全部吹っ飛んだんやで!」とちょっとした議論になってしまった(笑)。
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「ゴッドファーザー」ってもう、脇キャラに至るまで濃ゆい人達が集まっていて、感想を語るにも何から語ればいいのかと悩む作品でありますが、今回は、マイケルの2度の結婚、ケイとマイケルの関係に焦点を置いて、振り返って語ってみたいと思います。
マイケルの1度目の結婚はシチリア逃亡中。稲妻に打たれたようにビビッときて、若いギリシャ系イタリア人・アポロニアと電撃結婚。
しかしマイケルの身代わりになるようなかたちで、仕掛けられた自動車爆弾の犠牲になり死亡。
初めてみたときはホント、ビックリしたなあ。家族のために自己を犠牲にしたマイケルがルーツのある土地でイタリア人として、それなりの幸せを掴んだと思いきや、無残に奪われて…。向こうPART2まで続くマイケルの悲劇を盛り立てるドラマの1つだったと思う。
その後、抗争鎮火してアメリカに戻ったマイケルは、以前真剣交際していたケイを突然訪れ、プロポーズ。
ホンマそれ。ここでケイのところに行ったマイケルが悪かったと思う。
ケイが愛していたのは、「マフィアの家族を愛しながらも自分は違う人間として生きる」と決めていたマイケルで、家業を継ごうというマイケルじゃないのよ〜。もう顔つきも別人になってるって!
マイケルにとってケイは2番目の女…というわけではなく、シチリアでの結婚が幻のように消え去り、アメリカに戻ったとき、やっぱりケイのことが頭から離れなくなって一緒になりたいと思った。そういう純粋な気持ちがあったと思う。
でも「君が必要だ。」という言葉がどこか重たくも響いて、結婚して早く世継ぎ欲しい、毎日プレッシャーでしんどいから心に慰めが欲しいというエゴもあるように見えてしまう。
ケイにしてみたら、2年間、さんざん手紙や電話しても音沙汰なしだった恋人が戻ってきて、いきなり結婚しようという流れですよね。
それでもケイはマイケルと結婚。
一応2人にも描いてる夢があって、それはファミリーがマフィアの世界から脱却して、政治とか合法的な世界へ羽ばたいていくこと。これはドンの願いでもあった。「イタリア人から完全にアメリカ人になる」…そんな好きな人の夢を応援して支えることを決めての結婚だったのだと思う。
しかし!!現実は厳しかったというのがPART2。
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色々ショッキングな展開のあるPART2だけど、”ケイが流産した”とトムからきかされるマイケル…ここだけでも相当キツかったのに、あとからケイ本人が堕胎したと告白しはじめて…もうこのシーンは本当にショックだった。
「やめて!マイケルのライフはもうゼロよ!」「離婚するにしても中絶はしなくてよかったやろ!」…そんな感じで昔はケイを批判的にみてました。
女性の方に全く愛がないのに、子供を産むことが幸せといえるのか。改めてふりかえると簡単にケイを責められない、重厚なドラマ。
しかも大人になってから気付いたけど、子供の中絶はイタリア系でカトリックのマイケルからしたら、自分とファミリーの存在そのものを否定されるようなもんなんですね。
ケイはマイケルと縁を切りたい一心でやった。そしてここまでやらないと縁が切れないのも分かっていた。
またケイが「中絶のことは既にマイケルも知っている。」と思い込んでいるのが、この夫婦の「重大な行き違い」になってしまっているのが悲しい。
マイケル留守中、家頭を任されていたトム(ロバート・デュバル)。多分ケイはトムには全部話してあったけど、このトムが表向き流産ということにしておいたんじゃないかな。
マイケル最大のピンチの中、機をみて伏せておいたのは、ビジネスマンとしてはナイスな判断だったんじゃないかと思う。
でもケイからしたら、「自分が堕胎したの知ってるのに、旦那なんにもいってこないわー。」「今ファミリーのピンチでやっぱりそっちの方が大事なのね。」…って、きっとずっーと思ってたわけですよね。
平然と子供連れて行こうとするケイのことを、「そんなんマイケル認めるわけないのに、お花畑だなー」と思ってたけど、「堕胎のことを何もいってこないくらいだから、子供連れて行けるかも。」って心境だったのかも。
ほんまこの2人、どんだけ会話なかったん!? 流産の話きいた地点で、マイケル、ケイのとこすぐ行かないとダメだったでしょ~。
どこに戻ってもやり直せない気がするけど、夫婦の行き違い、改めて振り返ってもなかなか怖いものがあります…!
実家の家族とも毎年のように「ゴッドファーザー」をみていてよく感想を話してましたが、「結局マイケルがアメリカ人の奥さんを選んだというのが失敗で、アポロニアみたいなイタリア人女性と再婚してたら、マイケルになんの口出しもしなくて家庭は平和だったし、フレドーを殺るのも最後に思い留まったと思う。」なんてよくいってましたね。
一理あるのかなあ。
アポロニアなら、古風なファミリーの価値観に従ってくれて、男は仕事・女は家庭と、お互い干渉ゼロで分担して、そっちの方がマイケルは楽だったんじゃないかと思う。(そしてそれはドンの奥さんがやってきたことで、ものすごく大変なことだった。)
ケイは原作でもアメリカ北部出身の女性で学校教師という設定。ダイアン・キートンの個性のおかげなのか、新しい時代の女性感みたいなのをどこかで感じてしまう。
PART1の家族・血すじを大事にする価値観、古い男の世界。でもその価値観は吹き飛ばされた。ドンの資質を受け継ぎながら、マイケルは”新しいアメリカ人”になろうとしたけれど、結局家庭の中の1人の男として、社会に適応できなかった。
民族性とか宗教観は日本人の自分には「分かったような気になっても絶対分かってないよなー」なんて思ったりしますが、変化し続ける社会の中で家庭のあり方に悩む人間って、いつどこにおいても普遍的なドラマで、それがものすごいクオリティで描かれてるのが「ゴッドファーザー」なんだと思う。
元々2部作でつくる予定では全くなく、1作目の大ヒットを受けて、かなりバタバタしながらPART2がつくられたらしいですね。とてもそうは思えない、あらかじめ全て計算されていたのかと思う位、構成が巧みで本当にすごい。
あらゆる対比が散りばめられているけれど、個人的には、1作目で亡くなってしまったアポロニアという女性と、アメリカ人女性・ケイの対比も、通してみたときに浮かび上がってくるドラマの1つではないかな、と思う。
3作目の記憶、イーライ・ウォラックとカヴァレリア・ルスティカーナしかない(笑)。でも最後に、アポロニアと一緒に踊ってる映像流れてくるの、よかったなー。そのうちいつか家族で3作通してみたい。
↓最終章みました。