ザ・名シーン持ってきたジャケ写めっちゃカッコいい〜。
ロメロに続きながら全く別のゾンビを打ち立てたイタリアのマスター・オブ・ゴア、ルチオ・フルチ。
そんなフルチが代表作の「サンゲリア」「地獄の門」に続いて発表したゾンビ映画第3弾にして、最高傑作と名高い作品がこの「ビヨンド」。
なんかもうゾンビものというより、
「人間って死んだらどうなっちゃうんだろうね」
「一体この世界とは何ぞや?」
…みたいな、子供の頃夜布団にくるまりながら浮かんできたような漠然とした思い…考えてもしゃーないけど誰もが1度は感じたことのある虚無感みたいなのを、すごい映像と音楽でみせてくれる作品のような気がします。
言葉で語れる映画ではないなーと思いつつ、あえてあらすじや登場人物をまとめつつ振り返ってみたいと思います。
ビヨンドの簡単なあらすじ
ときは1927年。画家のシュワイクがとあるホテルに滞在していると、怪奇現象を起こそうとしていると咎められ、村民のリンチを受けて惨殺されます。
そして1981年。
過去に惨劇のあったそのホテルを事情を知らずに遺産相続することになった女性・ライザ。彼女はホテル再興に乗り出しますが、協力者が次々不審死を遂げていきます。
どうみてもホテルがボロボロすぎ&地下が水浸しすぎ!!…「ホテルをやめたら生活保護よ。」…客なんか絶対来なさそうという雰囲気なのになぜかやる気満々のヒロイン。
ある日そんなライザがドライブしていると、謎めいた盲目の女性が現れます。
エミリーと名乗るその女性は、ライザに「ホテル再建をやめて立ち去るように」と警告してきます。
また同じ頃、市の病院では、不審死したジョーの死体を医者のジョンとハリスが検死していました。
そんな中病院を訪れたジョーの妻は突如死体に襲われ、非業の死を遂げます。
ホテル再建に関わった人間が次々死んでいく中、古文書〝エイボン〟によると、このホテルは呪われた7つの土地のうちの1つで、地獄の門が開くといいます。そして、ついに門がオープン!!
話的には完全に厨二感漂うオカルトなんですが、突然家に不気味な人影がたくさんあらわれる画や、外に出ると人っ子ひとりいないという描写にすっごい迫力があります。センスだけの全力投球です。
ロメロゾンビが、〝ゆっくり世界がゾンビに侵食されていく〟というリアルさのあるSF的恐怖なのに対し、こちらのゾンビは〝突然異形の者が漂う異世界に転移させられたような〟ファンタジックな怖さ。
そして、ラストは極めて救いのない感じで幕を閉じます。
地獄というものがこんな場所ならさぞ恐ろしいだろうな、という気持ちになるし、なぜか「ああ、人生ってなんて孤独で無情なんだ!!」「結局それでも1人で生きていくしかない」みたいな想いが湧き上がってきます(笑)。
今ならお金をかけてCGで派手な映像が作れるんでしょうが、低予算のはずのビヨンドの世界にすっごい真に迫るあの世感があるのが何とも不思議です。
ビヨンドの登場人物整理
「ビヨンド」は、87分という短い作品なのですが、案外登場人物は多く、ハイテンポで悲惨な死に方をしていきます。
登場人物とその顛末をちょっと整理!!
生き残り組!?
●ライザ・・・ニューヨークから来たホテル再建を夢見る女性。地獄に閉じ込められる。
●ジョン・・・ライザと共に地獄に閉じ込められる医者。射撃の腕が謎すぎて、頭に当ててくれよ!とイライラ。
死亡した人たち(※死亡順)
●ジョー・・・水道屋さん。地下調査中、壁から出てきた腕に掴まれ、目玉飛び出て死亡。
●マリーアン・・・ジョーの妻(ジルのお母さん)。死体安置所で死体に襲われたあとなぜかそこにあった硫酸にドロドロに溶かされて死ぬという全く意味不明の悲惨な死を遂げる。
●マーティン・・・ライザのホテル再建に協力。ホテルの図面を図書館に調べに行くが、ハシゴから落下して頭を強打。その後なぜか突如あらわれたタランチュラの群れに襲われて死亡。なお目玉は抉られる。
●マーサ・・・顔に迫力がありすぎのおばちゃん。ホテル36号室掃除中に浴槽から現れたゾンビ(ジョー)に襲われ、釘で頭を打たれるかたちで死亡。なお目玉は盛大に飛び出る。
●エミリー・・・盲目のミステリアス美人。死者の集団に突如囲まれ、ディッキー(ワンちゃん)に助けてもらおうとするが、反対に噛み殺される。この人は目ではなく耳が引きちぎられる。
●ハリス・・・ジョンの同僚医者。ジョンの撃った扉のガラスがなぜかとんでもない方向に飛んできて、突き刺さって死亡。そしてなぜかジョンはノーリアクション。というか誰も生きた人間が残ってない世界になんでこの人だけ唐突に現れたのか謎。後半は出番なくてよかったと思う。
●ジル・・・三つ編みガール。ジョーの娘。両親の死後、なぜか白目になってしまう。死体安置所にて突然ゾンビ化してライザに襲いかかり、ジョンに銃で頭を撃ち抜かれて死亡。ここだけ銃の威力が10倍に!?
不明な人たち
●ラリー・・・ペンキ屋さん。冒頭で「眼」を目撃して転落し重傷を負う。結局無事だったのかな?
●アーサー・・・地下でライザを襲ったので、地下で殺されてゾンビ化してたってことだよね?その割には結構顔色が普通!
脅威の眼球損傷率で、残酷なシーンの連続のはずなんですが、「硫酸の泥?みたいなの、村人の手にもかかってるで!」「よく出来てるけど偽物の蜘蛛と人形わかっちゃう~」と時折みせられる”隙”にほっこりした気持ちになります。
そしてお話はサッパリ意味不明です。
1番意味不明なのは、〝シュワイクの絵に触れたエミリーが立ち去り、ライザその光景を何度もフラッシュバックさせる〟というシーン。
「戻りたくない」「もう休ませて」…きっとエミリーがこれまであの絵の中の地獄にいて彷徨っていたのでは??なんて思わせるけど、結局正体不明のまま。
あとアーサーとマーサについても、「ホテルを守ってきた人たちよ」「変だな。2人とも知らないぞ。」というライザとジョンの会話から、この世にいない人感が仄めかされているけど、なんだったんだー。
そもそもシュワイク殺したから地獄の門あいたのか、シュワイクが既に門あけてたのかどうか、それもよく分からんのよね。
色々考えたら負けの作品のような気がする(笑)。
途中ジョンがライザに言った「君は誰だ?」という台詞にあるように、いつから幻覚をみているとも分からない、この世界と自分の存在の不確かさ…みたいなもんに酔っとけばオッケーなんだと思います。
「ビヨンド」はタランティーノも絶賛した作品で、1998年にアメリカでリバイバル上映したりしたみたいですね。
「キルビル」で使ってた「ザ・サイキック」の曲もカッコよかったけど、この「ビヨンド」の音楽も最高!!(ファビオ・フリッツィ)
また作中最も印象的な、エミリーと出会うシーンのロケ地は、ボンチャートレイン湖コーズウェイという39キロの橋。
「セブンマイルブリッジ」は「トゥルーライズ」で出てきたやつかな??長い橋、カッコいいですね…!
自分はフルチたくさん観てるわけでもなく、憶えているのは「サンゲリア」とこれ位(笑)。「ビヨンド」は普通にみたらB級もいいとこだと思うのですが、感覚に訴えてくる無常な感じにゾクっとさせられる大好きな作品です。