この三連休、極音上映とやらに初めて行ってきた。
ブルーレイ上映だったのですが、劇場のキャパは386席と大きめ。音を売りにしている劇場だけあって迫力もあり、大好きな作品をスクリーンの大画面で初めて観ることが出来て感無量です。
好きな女性に自分の音楽を歌って欲しいという「オペラ座の怪人」と、自らの魂を悪魔と契約するという「ファウスト」のストーリーを取り入れてのロック・ミュージカル。
とにかく主演2人の顔のインパクトがすごいよ。でもこのストーリーをイケメンで展開されても多分なにも伝わってこないよ。
才能はあるけど、売るための努力や大衆受けとかは一切考慮しないアーティストタイプのウィンスロー。
それに対し、作品を切り刻んででも、とにかく受ければイイという圧倒的商業主義のスワン。
スワンタイプの人がウィンスロータイプの人を利用しているというのはこういうビジネスの世界ではままあることなのかなーなんて思ってしまいます。
作る才能と売る才能はまた別で、持ちつもたれつ良い関係を築ければいいけれど、「企業側が創作者を利用だけして使い捨てにする」というのがエゲツナイかたちで展開していくのがこの「ファントム・オブ・パラダイス」。
音楽業界に限らず、深夜放送のときに面白かったバラエティがゴールデンに行った途端つまらなくなったとか、けものフレンズの二期はなんだったんだとか、商業主義にひた走ってどこかで失って壊れていくものもあるんじゃないかなあと思う。
ウィンスローは、不器用さんで、ビジネスのできん人ではあるけど、こういうタイプの人ですごいモノをつくれる人がいるというのは、ある種の純粋さがあるからだとも思ってしまいます。
そういう創り手、ゼロからモノをつくる人間を軽視するんじゃないよ、っていうのはクリエイターではない自分にもなんか分かるなあと思いました。
そして2人の男を巡るヒロイン・フェニックスの存在。
最初は純粋に夢を追いかけていたイノセントな見た目の彼女が、「ステージに立てるなら何でもする」とかいっちゃって…。こうやって搾取されてる女性はきっと沢山いるよねーとここはついついAK〇とかグラビア業界を思い浮かべちゃいます。
ウィンスローを挟んでのスワンとの三角関係?が展開するけど、改めてみるとスワンってフェニックスに全然興味なさそうなのね。内心、若くて綺麗な女はうっとおしいわー、キィーぐらいに思ってそう(笑)。
才能を見る目の確かなはずのスワンが、本当にいいものを拒絶するのは嫉妬なのかしら。ナルシスト全開のプロデューサーのキモさが圧巻です。
ウケだけを追求して刺激の強いものをつくっていたら観客がアホになってしまった…というラストの光景もなんとも強烈。
たった1人自分の思いを見失わなかったウィンスローが悪に立ち向かって、好きだった人が自分の名前を思い出して我に返ってくれて…報われてないような、報われたような結末だけど、その切ない感じがやっぱりイイなーというラストでした。
顔を潰されてしまったウィンスローがつけている仮面は「ベルセルク」のグリフィスがオマージュ!?
デスレコードのロゴといい、デザインがいちいちカッコいい…!
総じてみると暗い悲劇のはずなんですが、笑いどころがたくさんあって楽しい作品という魔訶不思議。
まわるカメラにスプリットするスクリーン、シャーワーシーンの「サイコ」へのオマージュ…とデ・パルマらしさに溢れつつも、ハイスピードな展開と音楽パロディで魅せる愉快な雰囲気は特に異彩を放っている気がします。
そして、ある意味作品の最大のオチとでもいうのか、劇中の素晴らしい楽曲の数々はスワン役のポール・ウィリアムズがつくっているんだよね…。
カーペンターズに楽曲も提供していた、ほんとにスゴイ人だったという…。
昔はエンディングに流れる「Hell of it」がまさに悪魔の囁きでインパクト絶大でしたが、今観ると「Faust」が心に刺さりました。
デ・パルマは昔から大好きな監督だけど、「ファントム・オブ・パラダイス」と「殺しのドレス」は自分の中では格別。至福の映画観賞タイムでした。