どうながの映画読書ブログ

~自由気ままに好きなものを語る~

「ボディ・ダブル」…ラッキースケベ満載なデ・パルマのめまいごっこ

デ・パルマが「殺しのドレス」「ミッドナイト・クロス」に続いて撮った、女性が殺人犯に狙われる系のサスペンス映画。

ラズベリー賞の監督賞にもノミネートされちゃってるし、一般的な評価はかなり下の方なのかな。

ボディ・ダブル [DVD]

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個人的には一応初めて観たデ・パルマ映画!?で、結構好きな作品。

子供の頃テレビ放映されてたのを途中までしか観せてもらえなくて、長らく途切れ気味の記憶だったけど、映像のインパクトがとにかくすごかった。ドリルのシーン手前で打ち切られたのはもう堪らなかった(笑)。


ストーリーを整理すると…

主人公はB級映画専門の売れない俳優・ジェイク。

ある日自宅に戻ると浮気中の妻に鉢合わせし、さらには仕事もクビとどん底の中、同じ俳優仲間のサムから、自分の代わりに豪邸のお留守番係をして欲しいという願ったり叶ったりな依頼を受けます。

しかもその豪邸!!謎の高性能望遠鏡を完備、夜な夜なエロティックダンスを踊る美しき人妻の部屋を覗き見し放題というではありませんか。

調子に乗って、覗きまくっていたジェイク、しかし美女・グロリアに怪しい人影が迫る…!!ジェイクは殺人を止められるのか!?

 

ネタばらしすると…

全て(主人公に部屋を貸した)サムの計画犯行で、サムは実はグロリアの旦那でした。大金持ちの妻の財産を奪いたい…ということで、殺人を計画。

望遠鏡で、ジェイクに「覗かせる」ことで、夫以外の人間の犯行だと証言させようとした…というオチ。


・望遠鏡で必ず殺人シーンをみてくれるかはジェイク次第と不確定要素大きすぎ!!
・変装してるけど実行犯はサム本人。見るからに怪しいし、職質でもされて捕まったらどーすんのよ!?

…ともう矛盾点だらけなストーリー。しかし、

 

・覗き見要素は「裏窓」
・後半発覚する女性入れ替えネタは「めまい」

…とデ・パルマとしては、敬愛するヒッチコックの作品をふんだんにトレースした意欲作でもあったのではないでしょうか。

 

「めまい」の主人公が高所恐怖症なのに対し、本作のジェイクは閉所恐怖症。

妻に浮気され、自信を失った男性が、エロティックな世界に触れて自分を克服していく物語としてみれば、一本スジが通ってる気もします。

 

ジェイク、完全に変質者にしかみえないけど(笑)。

アダルトビデオみてて「あれ!?このエロエロダンスはもしかしてお隣さん!?」とハッとなる展開が間抜けすぎるけど(笑)。

 

それにしても女優陣が魅力的なのは嬉しいところ。

覗かれる人妻・グロリアを演じるのは、デボラ・シェルトン。

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元ミスUSA。なんと「ネメシス」でサイボーグを演じてた方ですね!!

ボディコンルックが最高に似合う、こんなギラギラした美人は滅多にいない…!!

高級下着ショップの試着室でカーテンがちょっと空いてるラッキースケベには、誰しも歩みをとめてしまうでしょう。

 

後半のヒロインは、ガラっと変わって、明るい雰囲気のメラニー・グリフィス

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ティッピ・ヘドレンの娘!ダコタ・ジョンソンの母!

覗き見してたストリップシーンが彼女だったなんて!!とビックリ!!

よくみるとグロリアよりスレンダーな体型。微妙に隠れていたとはいえ、人間、あんな場面では思ったより人の顔をみないものですね(笑)。

 

ボディ・ダブルというタイトルは「替え玉」という意味もあるらしく、デ・パルマは「殺しのドレス」のシャワーシーン撮影中に本作のアイデアを思いついたのだとか。

 

本作のラストシーン…主人公が映画の撮影をしているというメタ的な場面…。顔だけの女優と、バスト部分だけの女優と、分けて別撮りしてるシーンも、鮮烈に印象に残りました。


昔どこで読んだか、超美脚なキャメロン・ディアスでさえ、足のアップは別人だという話があって驚いたのですが、「映画でうつる裸が本人のものとは限らない」というのはもう凄い騙しのトリックを知った気分でした。

 

映像的な見せ場も多い作品でもあり、公開当時は女性の権利団体から抗議がきたという、電気ドリルの殺人シーンは強烈です。

床を突き抜け、1階にいる主人公に血が滴る…ここはヒッチコックというよりアルジェントっぽいかも…ホラー的見せ方としては素晴らしいと思います。

でも電話コードの首絞めシーンは何となく「ダイヤルMを廻せ」がよぎってきますね。

 


またジェイクがグロリアを追跡するシーンの長回しもかなり迫力があり、ここは「めまい」を見事にトレースしているのではないかと思います。

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デ・パルマあるあるな俯瞰のカット。エスカレーターとかエレベーターも好きですねえ。

モールにありがちな構造がエッシャーのだまし絵っぽくも映ってくる。どこに行くのか、主人公のあとをさらに尾行してるような気分に浸れます。

 

間借りする宇宙船みたいな邸宅もインパクト大!!

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こういうふざけた家、こち亀に出てきそう(笑)。

観る人を選びまくる80年代イケイケの独特な世界。でも映画は虚構だ!という迷宮ミステリ感とマッチしていて、自分は大いに楽しめました。

 

終盤犯人との対決がアッサリしているのは残念ですし、「キャリー」を観たあとだと、その完成度の低さに驚きますが(笑)、もう全編デ・パルマのPVってことでいいよ!!と変わらず好きといえてしまう作品です。


出番ごくわずかですが、浮気した主人公の妻役はバーバラ・クランプトン!!ボディ・ダブルなしとお見事でした…!