「ダークシティ」のアレックス・プロヤス監督による1994年の作品。
子供の頃ビデオで鑑賞、怖そうで怖くなくて、哀しいけどカッコよくて…とにかく映像が強烈にのこる1本でした。
ブルース・リーの息子である、主演のブランドン・リーは、本作撮影中の事故で還らぬ人に…と奇しくも哀しい伝説となってしまった作品でもあります。
◆哀しい復讐劇&スタイリッシュアクション
舞台は近未来のデトロイト。
この街では近年、ハロウィンの前日、10月30日の夜は「悪魔の夜」と呼ばれ、無法者たちが放火をはじめ暴虐を尽くしていました。
結婚式を翌日に控えていたエリックとシェリーのカップルは、この悪魔の夜に、襲撃を受けて惨殺されてしまいます。
しかし1年後、死の国の使者であるカラスの力を得て、エリックは不死身の存在として復活。
かつて自分たちを殺した者たちに復讐鬼として襲いかかります。
SFにホラーにアクションに…とジャンル分けしにくい作品ですが、カルトコミックが原作らしく、アメコミのダークヒーローっぽい雰囲気に、プロヤス監督のつくる閉塞的な世界観がマッチ!!
とにかくクロウことエリックを演じるブランドン・リーがカッコいい!!
街の屋上を疾走する姿、銃口から噴きだす指輪、夕陽の中エレキギターを大演奏…ほとばしる厨二感!!
でもイケメンがやると絵になるんですねー。
お供のカラスを肩に載せて、暗闇からスッと敵の前に姿を現すところなんて、実に漫画ちっくですが、格好いい。
対する敵面々も…
長髪で刀振り回す姿がハイランダーっぽい悪の頭領・トップ・ダラー、妖しさ満点のバイ・リン演じる紅一点、「キャンディマン」のトニー・トッドが静かな迫力でたたずむグランジ…など、皆それぞれ印象的です。
クロウが敵を追い詰めるとき、過去の映像が執拗にフラッシュバックするところは、ザ・復讐ものといえばなマカロニウエスタン、「新夕陽のガンマン」が頭をよぎってきたりします。
ブランドンの肉体は見事で綺麗だけど、アクションは肉弾戦より、ジョン・ウーっぽい銃撃シーンの方が印象にのこるかなー。
これを白黒基調な暗い画面でやるのがまたカッコ良くて、ちょっと何が起こってるか分かりにくい!?→銃撃の光でパチパチと映るちょい見せで追いかけさせる…実にスタイリッシュ!!
プロヤス監督は、もともとCM、音楽ビデオ出身のようで、劇中オンボーカルの曲がジャンジャンかかっても、うるさくならず、これが味になっているというのが、またすごい。
「晴れる日もある。」
「死の存在を知ったときから人は子供でなくなる。」
台詞も意外にいいんですね。センチメンタルなポエム調なんだけどそれが不思議と物語に温かみを感じさせてくれます。
エリックって色々特殊能力も持ってるけど、基本は蘇ったゾンビのような存在。
それがもうやり残したことをやり遂げたらあとは消えるだけっていうのが最初から分かっていて切ないけど、ラストはハッピーエンドにも見えてくる、ロマンチックな作品です。
◆哀しすぎるブランドンの死
本作撮影時、ほぼ撮り終えていたタイミングらしいのですが、主演のブランドン・リーは28歳で亡くなっています。
なんでも銃撃シーンで用意してた銃に誤って本物の弾丸が入っていたみたいで、腹部にそれが当たってしまったとか…。
それと知らず発砲した役者さんの方もトラウマになってしまったみたいで、なんでそんなことが起こってしまったんだろう…事故だったんだろうけど、ブルース・リーの謎めいた死のイメージも重なって、信じられないような話です。
続編やテレビ版は未見。最近ではジェイソン・モモア(ゲーム・オブ・スローンズからアクアマンになった人)で再製作する話があったみたいだけど、うーん、繊細さが足りないような…ブランドンの奇跡の1作という感じがします。
それにしてもプロヤス監督はこれと「ダークシティ」で才能を使い果たしてしまったんだろうか…。
「ブレイド」や「アンダーワールド」など後続の作品に影響を与えてそうな気もするし、日本のアニメを観る層にもハマりそうな、今でも通じる作品じゃないかと思います。