その後のアンドリュー・ガーフィールドのピーターにしっくり来ず、トム・ホランドの新しいのはかなり良いと評判なのにまだ観ておらず…。
かつてライミ版「スパイダーマン」をみたあと鑑賞して、「似てる!」と唸ってしまったのがこの「ダークマン」。
アメコミ原作があるわけではない、サム・ライミ自身による脚本&監督。
簡単なあらすじは…
科学者・ペイトンは人工皮膚の再生実験に成功しましたが、光のもとでは99分しか持続しないという問題点を抱えていました。
そんな彼は、ある日、恋人の女性弁護士の事件に巻き込まれ、マフィアに顔面と両手を破壊され、全身大火傷を負ってしまいます。
恋人は彼が死んだと誤解、さらに運ばれた病院にて肉体改造ともいえる治療を受け、「痛覚を感じないが、副作用として感情のコントロールが効かなく」なってしまいます。
やがてペイトンは、復讐の怒りを抱えたダークヒーローへと変貌していく…。
ペイトン役はまるで大型犬のような安心感のリーアム・ニーソン。
「なんで今!?」というタイミングで恋人にいきなりプロポーズしてしまうところなど、ちょっと間の悪い素朴な感じもハマっています。
黒コートに顔を隠した見た目は「シャドー」、感情で暴走してしまうところは「ハルク」と重なりますが、スパイダーマンシリーズともたくさん共通点があるように思います。
まずは「スパイダーマン2」のドックオック。
マッドサイエンティスト系の人がヴィランになってしまうのは、グリーンゴブリンもそうだったし、バットマンにもそんな敵がいたし…とあるあるだけど、仕事とプライベートを両立させている温厚そうな人柄の下に一枚、こういう研究に身を捧げる人ならではの、ストイックさ、結果への固執、孤独感を漂わせている姿が重なって、より悲劇的にみえます。
そして「スパイダーマン3」で自身のダークサイドと相対したピーターにもペイトンの姿はどこか重なります。
・復讐心に取り憑かれて、憎しみに飲まれそうになる。
・シンビオート(黒いどろどろ)に取り憑かれて、攻撃的な一面が増長される。
ペイトンの「自分の内面が外面になってしまった」という自己嫌悪するかのような台詞は悲しいですが、どんな人にも外に出せない暗い感情はある…。善い人であるには葛藤と努力もあるけどそれでも…3作目のピーターはペイトンの別ルートにも思えてしまいます。
また愛する人のもとを去るという、ロマンスの結末は、1作目のピーターとMJに重なります。
恋人ジュリー(フランシス・マクドーマンド)が、イケメン社長とちょっとくっついちゃったりして、「どっちやねん!」って思わせるとこもMJっぽいかも(笑)。
ジュリーもラストには変貌したペイトンの姿も受け入れてくれそうな感じがしたけど、それ以上に、もう自分の負の感情が制御できないから一緒に暮らせない!!ってことなんでしょうね。
好きだけど身を引く…不器用男のラブストーリー、哀愁が漂います。
自分は原作のアメコミを全く読んだことがないのですが、
コミック好きのライミが原作「スパイダーマン」からインスパイアされたのがこの「ダークマン」と観るべきなのか、「ダークマン」でのアイデアを昇華させたのが「スパイダーマン」と観るべきなのか。
わからないけど、併せて観ても楽しめる作品のような気がします。
アクション的な見せ場も、ヘリコプターにぶら下がってブランブランするところ、高層ビルの鉄骨渡りなど、1990年の映画と思えない、先取りしたような見応えあるシーンがたっぷり。
その反面、予算がなかったからなのか、当時の技術の限界だったからなのかよく分かりませんが、チープにも思える漫画みたいなシーンもちらほら。
でもこれが逆にアニメのようで観てて楽しく、時折〝やりすぎ感〟で笑わせてくれるところも、ライミっぽい気がします。
シリアスなシーンのはずなのに、遊園地で指折って3人で絶叫するとこはおかしくて笑ってしまう。
また「ダークマン」といえば入れ替えなりすまし要素も見所ですが、「敵の顔を写真で撮って機械で読み取ると、立体マスクが出来上がる」という謎技術の3Dプリンタが大活躍。
99分のリミットで敵に変身して撹乱するという展開にドキドキだけど、なんか体型まで変わってない!?ってツッコミたくなる(笑)。
敵役のギャングのボスで指コレクターのデュラント(ラリー・ドレイク)は、迫力ある悪人面が西部劇っぽくて素晴らしいですね。
ラストシーンではライミ作品お馴染みのあの人がおいしい登場の仕方…!!
振り返るとスパイダーマンシリーズも「ブルース・キャンベルを探せ!」が楽しい特典になっていました。
「ダークマン」は「スパイダーマン」を楽しめた人なら好きになれる…しかもたった1本、95分という短さで綺麗にまとめられていて、大満足な作品だなあと思います。
新しいマーベルもそのうち観たい…。