B級映画には違いないんでしょうが、この映画のルトガー・ハウアーがカッコ良くて大好きでした。
監督はのちに「パトリオット・ゲーム」「今そこにある危機」などを手掛ける、フィリップ・ノイス。1989年公開作品。
ベトナム戦争で視力を失ったニックは、助けられた村人のもとで刀剣術を教わり、20年ぶりにアメリカに帰国しました。
戦争中わかれ別れになった戦友、フランクの下を訪れると、本人は不在。
しかし偶然、麻薬組織が彼の息子を誘拐しようとしているところに出くわします。
ニックは少年ビリーを連れて、父親フランクの元へと送り届けようとしますが、そこに次々と刺客が…。
ザ・銃社会アメリカでピストル持った敵が次々迫り来る中、仕込み杖から抜き出る刀1本で敵を斬り伏せていくルトガー・ハウアーがとにかく格好いいです。
自分は勝新太郎の「座頭市」を知らず、観たのといえば北野武のリメイクだけなんですが、〝目を閉じず開けている〟というのが、このニックの特徴でしょうか。
時折視線を彷徨わせるような美しい瞳にドキドキしてしまう…イケメンという言葉は彼には軽すぎる気がするけど、美丈夫、まさに美しい男です。
目が不自由という点は一応ハンデとしてきちんと描写されていて、超人としたヒーローにはギリギリなっていないところがまたいいバランス。
物音の立つ狭い家の中、視界の悪いトウモロコシ畑、廊下の一本道、暗闇…と主人公が優位にたてるロケーションがアクションの場になっているところも素晴らしいです。
そして、少年ビリーとの友情の育みは、「シェーン」のように心あたたまるものがありました。
ビリーも初めからのいい子ちゃんではなくて、最初はニックを馬鹿にしてからかったりしていましたが、次第に心通わせるようになる…。
どこか寂しそうな少年にみえるビリー。
父親フランクと母親はもう離婚していて、父親は賭博に入れ込んで、麻薬組織と関係を持ってしまった…。
なぜそうなったかというと、ずっとフランクはニックが戦死したと思い込んでいて、仲間を助けることができなかったことを悔いて、心がどこか壊れてしまっていたから…。
メロドラマっぽくわかりやすく説明されるわけではないけれど、自然とこうなんだろう…と観客にさりげなく読ませる、説得力あるストーリー展開になっていたように思います。
多分友に見捨て置いていかれたことには怒りもあっただろうニック、「パパは何も悪くなかったよ。」と語る表情には哀しみが溢れていました。
20年越しに傷痕を癒す男たちの友情…B級映画だけど、意外にドラマも破綻なく良く出来てる作品です。
昔中古ワゴンセールの叩き売りで入手した、VHSとDVDのジャケ写。
DVDの裏面にでかでかといる謎のニンジャは本編に一切登場しないという見事な詐欺っぷり(笑)。
でも日本人アサシン役で、ケイン・コスギのお父さん、ショー・コスギが出演していて、クライマックスのチャンバラは大盛り上がりです。
ラスト、少年との別れのシーンも、伏線を回収したかのような、粋な締めくくり方に思いがけずほろっとさせられました。
90年前後のルトガー・ハウアー出演作、これは個人的に大当たりだった、大好きな作品です。