どうながの映画読書ブログ

~自由気ままに好きなものを語る~

「オペラ座 血の喝采」…アルジェントの目玉いたぶり変態プレイ

フェノミナ」以降、ジャーロもの路線に回帰するも「サスペリア2」のような伏線を回収する鮮やかなサスペンスはみられず、サイコホラーにファンタジーが混じったような、よー分からん作品が多い気がするアルジェント。

でも撮りたい画ありきで好き放題やってるのが観てて楽しかったりして…

オペラ座 血の喝采 完全版 [Blu-ray]

オペラ座 血の喝采 完全版 [Blu-ray]

  • 発売日: 2014/07/25
  • メディア: Blu-ray
 

この「オペラ座血の喝采」はオペラの荘厳な雰囲気に展開するグロシーンがハイセンスにみえてくる、もう映像だけでお腹いっぱいな作品でした。

 

イタリアのミラノスカラ座で上映されるオペラ「マクベス」の主演女優が事故で負傷。代わりに舞台に立ったベティは大成功を収めるものの、関係者が次々に殺されていく…。

オペラ座の怪人」をトレースしたようなストーリーですが、本作で殺人シーンそのものよりエグいのは、拘束されるヒロインの処遇。

犯人は「殺人を主人公にみせつける」ことに興奮する変態さんで、その目が決して閉じられないようにと、目の下に針を貼り付けられます。

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なんて悪趣味なんだ!

ルチオ・フルチの目玉串刺しより、こっちの方がみててキリキリします。目の周りに血が滲んでるとことか痛々しい…こんなの思い付くアルジェントが変態やな。

 

殺される人物で1番印象的なのは友人ミラ役を演じたダリア・ニコロディでしょうか。

犯人を確かめようと鍵穴を覗いた瞬間、目ごと頭部を吹き飛ばされるシーンは、スローモーションがやたらキレーにみえてしまいます。

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それにしても元妻になんたる酷い仕打ち…!

 

そして何といっても1番の見所はカラスを使った撮影。

劇中上演されるオペラは〝生きたカラスを劇場に飛ばす〟という斬新な演出にチャレンジしていて、カラスの視点から始まるカメラワークが面白くて引き込まれます。

この設定がストーリーにも生かされ、同胞を殺された目撃者のカラスを利用して犯人を指差ししてもらう…クライマックスにて展開する大胆な作戦が面白い!

カラスの目視点のカメラが、空中から客席めがけて回転するように迫っていくシーンは大迫力です。

ヒッチコックの「鳥」へのオマージュなのか眼球つつきシーンもCGでない本物の鳥を使っているからか、一層痛々しくうつります。

 


映像的な見所だけでなく、ストーリーも鬱屈した家族関係を匂わせていて個人的にはとっても好み。(以下ネタバレ)

 

真犯人はかつてベティの母親と恋仲で、その母親に頼まれて殺人をするようになったと。

お母さんは「自ら手を下さず殺人をみるのが趣味」という倒錯志向の人で、犯人は娘も同じだろうと昔のプレイをやりに来たっていう…よくよく考えると犯人は「悦ぶと思ってやった」という悪意のない奴なのが気持ち悪くていいですね。

 

ヒロイン役、クリスチーナ・マルシラックは、華奢で童顔だけど意志の強そうな感じのする美人。

他人が殺されても案外動じず、果敢に犯人に向かっていき、「死んだお母さんと一緒にしないでよ!」とトラウマ克服ドラマにも見えてくるのが不思議な爽快感です。

最後に屈折した男を見捨てて現実をとるというところも、「オペラ座の怪人」をトレースしてる感じがします。

 

衣装に付いてた金のブレスレット何だったんだよ、犯人あの状況でマネキンを死体に見せかけて脱出って地獄の傀儡師かよ、と真面目にみたらツッコミが止まらないんですが…。

支離滅裂だけど、お隣さんの女の子と通風口這って逃げてくシーンや、「サウンド・オブ・ミュージック」な景色の中殺人鬼と鬼ごっこするシーンなど、シュールでファンタジックで夢見心地にさせてくれる映像の世界になぜか見入ってしまいます。


ラスト唐突に流れる男性ナレーションのポエム。

「もう誰にも会いたくない。完全に消え去りたい。なぜなら私は彼らと全く違う異質の存在だから。」

あれもヒロインの心の呟きなのかまったく意味不明ですが、アルジェントに「こういう映画撮ってる僕の気持ち、お前らにわかるか、フン」と言われてるみたいで、そんな変態プレイに巻き込まれるのが楽しい1作でした。