どうながの映画読書ブログ

~自由気ままに好きなものを語る~

「ミッドサマー」、ディレクターズカット版を鑑賞

先週レンタルしてみたミッドサマー、好き嫌いがとことん分かれそうな作品ですが、自分的にはもうグイグイ惹かれる作品で、この監督はユニークで面白いなーと夢中になってしまいました。

勢いでセル版Blu-rayを購入、早速ディレクターズカット版を鑑賞することに。

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すごく豪華なパッケージ。

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怖い絵のポストカードも入ってた(笑)。

 

・オリジナル版・・・147分
・ディレクターズカット版・・・170分

と追加シーンは23分ほど。

大きく印象が変わる場面はなかったのですが、クリスチャンをはじめ男性陣の印象がよりゲスくみえるような場面が多め、ダニーの依存的な部分もより強調されてる感じがしました。


以下ネタバレで追加シーンはこんなだった…というのをあげていきたいと思います。

※抜け落ちてる箇所もあるかもです
※かなり短いシーンには(短)をつけています

 


・冒頭の口論場面が長めに
「旅行行くのきいてなかったけど」の殺伐とした会話に続きがあって、ダニーが「ごめんなさい」と謝り、クリスチャンは「君もサプライズで誘おうと思ってたんだよ」と取り繕い、ちょっと仲直りした感じに。

謝るダニーはより情緒不安定で依存的な感じがするし、なあなあで思ってもないこと平気で言うクリスチャンのテキトーさもより強調された感じ。

こうやってズルズルきたカップルなんだなーと分かりやすく見せてくれる遣り取りでした。

 

・ホルガに行くまでの車中のシーンが長め
ジョッシュとマークが下世話で暴力的な会話を続けているのが追加されて、とことん無神経な感じのする男性陣。

ダニーには遠方の友人から1日早いけどお誕生日おめでとうのメールが…。

ジョッシュはルーン文字の文献を持って来ていて、卒論テーマがクリスチャンと似てるかも…とダニーが指摘。

色々フラグを立てたシーンをここに詰め込んでたみたいですが、クリスチャンは旅行に行く前からテーマ取る気だったのかも。

 

・村の儀式追加(おやつ?を皆で食べる)
皆んなで草むらに座っておやつ?を食べるシーンが追加。

ルーン文字状に並んで座り、感謝を捧げる歌を歌うおじさん。ダンとイルヴァもこのときから登場。

皆が揃う前から食事に手をつけようとするマーク、なんでも内容を翻訳してくれとペレに頼むジョッシュ、2人とも空気読まずとことん自分のことしか考えてないアメリカ人のよそ者、って感じですね。

 

・イングマールの嫉妬!?(短)
キスをするイギリス人カップル、サイモンとコニー…をそっと横目で見るイングマール。

DC版では彼の顔のアップとさらにその表情をみるダニー…と数秒長い仕上がりに。

コニーはイングマールとちょっと付き合ってからサイモンに乗り換えたんでしょうか。村に連れてきた動機は横恋慕と復讐という個人的なものな気がします。

そして人の表情や感情にとことん敏感なダニー、シンドイ子…!

 

・ペレ「誕生日だよ」(短)
クリスチャン誕生日忘れとるやんけ!のシーン、オリジナル版は「彼女が何か言ってた?」の台詞からだったけど、DC版は「誕生日だよ」というペレの親切な一言が追加。

 

・夜中逢引するホルガ民!?(短)
初日寝付けず夜中目を覚ますダニー。

オリジナルは壁の絵を見てるだけだったけど、DC版では夜中に外にこっそり出て行くホルガの男女をみてしまう…。

ホルガ民は個人的な恋愛にはとことん淡白なイメージですが、夜中に秘密のミッションでもあったのでしょうか。それとも置いて行かれなくない恐怖症&彼氏の浮気心を疑うダニーの幻覚??…にしては随分はっきりしたビジョン。

こっそり自由恋愛してるカップルがいれば面白いけど…

 

・ダンとイルヴァの歌追加
いけにえの2人の最後の食事。変な息吐くだけの軽めなシーンが、2人ともガッツリと歌を歌ってました。

 

・ルビ・ラダーを歌うおばちゃん追加
飛び降り儀式の前、村のボス感漂うおばちゃんが歌を熱唱。

加えて絵具で塗りつぶされた聖書ルビ・ラダーがここでしっかりと映ります。

何読んでんだよ、自分の都合のいいように解釈してんじゃないの、とついつい思ってしまいますが。


・クリスチャンとジョッシュの口論が長めに
飛び降り儀式を見てなかったマークは下世話なラジオを聴いて1人過ごしていた様子。

そして宿舎に戻って「俺もここの論文書くから」と急に言い出すクリスチャンに激昂のジョッシュ。

電子図書館の使い方も知らんくせになんで院生やってんだよ!」とより口論シーンが長めに。

クリスチャンのとことん目的なく流されるタイプなところが更に露呈。真面目に勉強してるジョッシュの怒りはごもっともです。

 

・ウラにインタビューするクリスチャン
論文を書くと決めたからか、ホルガの女性(マヤとウラ)に話しかけて色々聞き出そうとするクリスチャン。

「あの飛び降り儀式何回みた?」「その年齢に達する人がいるならだから何回も。」

やっぱりあの儀式は90年に1回じゃないんですね。

メイクイーンも毎年やってそうだし、よそ者大量いけにえ&種付けがレアイベントな年だったのかな??

それにしても皆さん殺しの手つきが手馴れすぎてて、村の秘密を知ったよそ者を定期的に粛正してたんじゃないかと思ってしまいます。

 

・川沿いでまた変な儀式
ガッツリ削除されてたシーン。
特別な儀式があると誘われて集まると、ホルガ民が演劇口調で「もっといけにえを捧げなければ…」と騒ぎ出す。

そんな中1人の子供が「自分が死ぬ、故郷に帰るだけだから死は怖くない」と名乗りをあげ、重しをつけられて沈められそうになるも、ダニーが「やめて!」と叫ぶと村の女性陣がそれに同調し、男の子は救われる…。

なんのイベントなんでしょう、コレは。

儀式に共鳴してくれる人がいるか、村人による試験的なもので、それにパスしたのがダニーだったのでしょうか。

そして村人がいけにえにならなかった代わりにコニーが沈められたのでしょうか。

それにしてもこんな怖い儀式を半笑いでみてるクリスチャンと、スマホ撮影にしか余念がないジョッシュの鬼畜っぷりが際立っていました。


・大口論のダニーとクリスチャン
上記の儀式の帰り喧嘩になってしまう2人。

いい論文が書けると宣うクリスチャンに、外にそんな情報出させないと思うけど…とそういうとこ冷静でしっかり者のダニー。

心理学科生らしく2人の関係を分析的に言葉にしてみたら余計にクリスチャンを怒らせてしまい、挙句「昼食のときに花束を渡されたの、誕生日忘れてたことの当て付けみたいて不快」と容赦ない一言浴びせられる…。

クリスチャンのクズっぷりがこれでもかと強調されてますが、「俺に非があると思わされる」ってすごい重い言葉。

気が利くけどどっかで見返り求めちゃう彼女と、まったく気が利かないくせに疑り深い彼氏と、とことんすれ違う2人。早よ別れなはれ。


・アホなマーク、村の女性に救われる
先祖の木で用を足すという大チョンボをやらかしたマーク。

ペレにも咎められてるとマークに熱い視線を送ってた女の子がやって来て「知らなかったんだから。私がウルフに説明しておくわ。」と庇ってくれる…。

それを「あの娘、俺に惚れてるから庇っちゃってさー」ととことんアホなマーク。ストレスなさそうで幸せだなー。

 

・仲直りしてしまう2人
昨日大喧嘩したダニーとクリスチャン…だけどダニーがやって来て「昨日は悪かったわ」とクリスチャンに謝る。

クリスチャンの方はごめんなさい言ってないのがイヤな感じだけど、別に悪くもないのに先に謝っちゃうダニーもアカンのよね。

結局依存したいがために自分を悪者にして縋り付いちゃうダニーの痛々しさが際立つシーンでした。


・ウルフは〝守る人〟
友人達が見当たらないとダニーが心配する中村人にインタビューしてるクリスチャンのシーン…ちょっと会話が追加。

先祖の木への粗相に激怒してたおじさん、ウルフは〝守る役〟を与えられてかつては医者として巡礼にも行ってたのだとか。

それなのに痛くないおくすり信じて火あぶりで断末魔だったのかーと気の毒なお間抜けさんですね。

そしてインタビュー中もやたら半笑いが多いクリスチャンの好感度は順調にだだ下がり。


・ダニーを見守る長老のおばさん(短)
ホルガ村の女性たちと一緒にミートパイをつくるダニー。

帰りたいとか言ってたくせに外部者の中で1番馴染んでます。

それを外から温かい眼差しで見守る長老おばさんの姿が…「あの娘いいわね」スカウト決定の瞬間ですね。


・マヤと交わってください
長老のおばちゃんに呼び出されたクリスチャン…2人の会話シーンもより長く追加。

「ペレが写真をみせあなたの来る前から夢中に」…ってペレは相当なやり手。

〝一晩だけ交われ〟ってもうその後殺されるの必至ですが察しの悪いクリスチャン。

でも一応ゴネて断ってはいたんですね。この場面はあえて短い方がクリスチャンへの不信感が高まってよかったかもです。

 

 

◆◆◆

後半は練り上げられたシーンの連続だったのでしょうか、その後のシーンは全部オリジナル版と同じにみえました。

しかしレンタル版ではボカされていたモノがクッキリと映っていて、よりスッキリした気持ちで儀式を見送ることが出来ました。


てっきりダニーの家族や聖人扱いされてる障害のある男の子の詳細が追加されてるかなーと思いきや、それはなし。

総じてみるとDC版は「郷に入っても郷に従わない」無神経なメンズが強調されていた印象です。

特典映像の中で出演者が「ホルガは高度なレベルの集団」「魅力的」とも語ってましたが、個人主義アメリカ社会の中で疲れた人にとって集団主義には惹かれるものがあるのでしょうか。

同調圧力の集団か、協調性ゼロで自由を貫く個人か…どっちに転びすぎても生きづらい…そんな不安感を上手く表した社会派ホラーなんじゃないかと改めてみて思いました。


特典映像では、アリ・アスター監督のお姿も初めて拝見したのですが、気難しくて怖い感じの人かと思いきや、物腰丁寧な感じの優しそうなお兄ちゃん…!

前作、今作ともに新しさを感じるホラーで個人的には大満足。次回作もとても楽しみです。

 

 ↓↓オリジナル版(初見)の感想はこちら

dounagadachs.hatenablog.com