「ミッドサマー」の元ネタらしいと知って、未見だったのを今更鑑賞。
2006年のニコラス刑事のリメイク版も観ていなかったので、新鮮にみれました。
敷居が高いということは全くなく、思った以上にエンタメしてて楽しい作品…!!
行方不明の少女の捜索依頼を受けたハウイー警部はスコットランドにある孤島へ。
住民たちは皆どこかおかしな人たちで、島に生贄の風習があると知った警部は殺人事件を疑って、1人で捜査を続ける…。
「2000人の狂人」や「悪魔の追跡」みたいな、見知らぬ土地の人たちがおっかない系ホラー。
でもジャカジャカとフォークロックがかかって村人たちが歌い出すというシュールな世界が展開。
「ミッドサマー」では種付けの儀式でおばちゃんがいきなり歌い出すとこで爆笑したけど、この「ウィッカーマン」はもっとミュージカルしててあの可笑しさが全編貫いてる感じ。
金髪の美女が♫やらないか(※意訳)って、全裸でお尻叩きながら踊るの、ニヤニヤしながら観ちゃいました。
そしてなんと収穫祭、メイポールの設定も「ミッドサマー」と丸かぶりです。
こういう西洋の風習のことは皆目分からないのですが、キリスト教誕生前から存在してた土着信仰の文化が残っている土地があちこちにあるみたいですね。
そのほか、マズそうなお菓子や料理、不意打ちでちょこっとグロみせてくるところ、ホテルの看板のイラストデザイン…と見れば見るほど「ミッドサマー」にそっくりな所がいっぱい。
でもモチーフがすごくよく似ていても、話の中身は全く異なっていました。
「ウィッカーマン」には「ミッドサマー」みたいなメンタルヘルスに突き刺さるような個人のドラマは全くなく、もっとシニカルにキリスト教批判に徹している印象です。
「ウィッカーマン」の主人公、ハウイー警部はガチガチのキリスト教徒で、村人のことを「異教だ」「野蛮だ」と罵りまくりながら捜査します。
自分の尺度でしかモノをみれない嫌な奴…童貞という設定は聖職者の暗喩でしょうか。
こういうドラマでは珍しい、絶妙に感情移入しにくいタイプの主人公でした。
ラストのネタバレになりますが、主人公は実は手の平で踊らされていて、生贄の火炙りにされてしまう…というこういうホラーのあるあるエンドを迎えます。
今回の生贄は言ってみれば村の飢饉を救うためのようなもの。人を救うために自ら磔になったキリストとは対照的に、キリストを賛美する主人公は徹底的に犠牲になることを拒否する。
すんごい皮肉に思えます。
異端者の火炙りはキリスト教がしたことでもあるし、キリスト教への意趣返しをビシバシ感じて、ここまでやるかーと圧倒されてしまいました。
またこの村には領主様なる人がいて、クリストファー・リーが怪演しています。
一見キテレツな教祖様ですが、この領主だけ島民たちと違って「本当にこの島の土着宗教信じてるのか、どっちだー!?」って印象でした。
農学者だった祖父の跡を継いで、村にいるというこの人はある意味〝よそ者〟の子孫。
最後に警部が「俺を殺して豊作にならなかったら次に殺されんのお前やぞ!」みたいに言ってましたが、あり得るんじゃないですかねー。
宗教の知識がない&信仰心のない自分からすると、この島民にも全く魅力を感じなくて、結局豊かさを求める群衆とリーダーが信仰を利用しているだけなんじゃないの、とか思ってしまいます。
でも土着信仰とか土地の風習・文化ってそもそも生きていくために合理的に選択されたもので、自分も普段意識してなくても多少そういうものを持っているのかもしれません。
「異なる文化の人間を全く理解できない」「結局ヒトは自分の価値観でしか物事をみれない」っていうのがこういう系ホラーの醍醐味。
「ウィッカーマン」は余計なドラマを一切挟まず、冷たーく突き放したエンドが良く出来ていてゾゾッとさせられました。
私が今回みたのは88分版でしたが、いくつかバージョン違いがあって、94分のファイナル・カット版が今年あちらこちらでリバイバル上映してるみたいですね。
監督が最初につくったのは2時間位の長さだったらしく、どうせなら長いやつが見たいなあと思ったんですが、Blu-rayにもなってないみたいで…
でも短いバージョンでも完成された印象で、テンポよく楽しく観れました。
「ミッドサマー」がこの作品にすごく影響を受けているのはよくわかって、大満足。面白かったです。