どうながの映画読書ブログ

~自由気ままに好きなものを語る~

「ゴーストワールド」/押し寄せるブシェミ萌え、オタクに沁みる青春映画

サブカルおしゃれ映画っぽいポスターとは裏腹にグサグサくる作品でした。

ゴーストワールド [DVD]

ゴーストワールド [DVD]

  • 発売日: 2009/06/19
  • メディア: DVD
 

高校のはぐれ者コンビ、イーニドとレベッカ
卒業後も2人仲良く過ごすはずが、自立への道を歩み始めるレベッカに対し、無気力な毎日を繰り返してしまうイーニド。
2人の間には次第に距離が出来てしまう…

2人のダサかわファッションが1周まわってオシャレ。

「ワタシ皆とちょっと違うのよ」っていうサブカル女子。自分は皆より大人だと勘違いして心閉ざしたり若い時はこんなもんだよなー、かつての自分をみているようでグサグサ突き刺さります(笑)。

しかし気の合う親友だったレベッカが「何もしないままでは居られない」とカフェでバイトをするようになります。

嫌な客は来るし我慢しなきゃいけないこともあるけど、生活していくってのはそれだけ大変なこと。選べない人間関係の中で揉まれて狭い世界から抜け出していくレベッカ

一方イーニドは周りを見下しつつ普通になることを拒んで次第に孤立していきます。

自分は特別な人間なのだと開き直っていればいっそ楽でしょうが、彼女はもっと賢くて自分の不器用さ、甘さを内心認めているからこそ余計に傷ついていきます。

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イーニドが美術の補修を受けているシーン。

クラスメイトが訳のわからんオブジェ提出して「これは女性の権利を描いてます」って言って先生に褒められてるの、うっざ!!ってみてるの、めっちゃ分かる(笑)。

学校に1人か2人はいそうな自己陶酔型の嫌な教師が痛すぎて何だか笑ってしまいますが、好きな分野でも決して自分のありのままが受け入れられるわけではない。

誰かに認められたいという思いと、自分を偽るのは嫌だっていう思いと…イーニドの純粋さも分かるなあと観てると切ない気持ちになります。

 

そんなイーニドが意気投合したのがオタクのおっさん、シーモアスティーヴ・ブシェミ)。

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薦めたレコードを褒められて嬉しさを隠しきれないところとか、ブシェミの国境を越えるオタクオーラがハンパない(笑)。

初めはからかってたイーニドですが、なぜかどんどんこのブシェミに惹かれていきます。

不器用で生き辛さを抱えつつも「自分の世界」を持っている人。

仕事があって、趣味があって、おまけにそれを分かち合える知人までいて、それで充分幸せなんじゃないかと思いました。

「大きな夢や目標を持って好きなことをして生きる」…世の中それが実現できるすごい人ばかりではなくて、好きなことに支えられながら日々生きる人もいる。

イーニドが「あなたは私のヒーローよ」と言ったのは、自分と似た内面を抱えつつも自分らしさを失わずにこの世界で生きているシーモアへの尊敬の気持ちではないかと思いました。

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決してイケメンではないブシェミ、静かに好きなものを愛する姿が何とも言えない不思議な魅力です。

イーニドとシーモア付き合っちゃうの??めっちゃ歳離れてるけどどーなんの!?って観てたらイーニドがさんざん利用した挙句去るっていうめちゃくちゃ可哀想なブシェミ。

イーニドのシーモアのことを好きな気持ちも嘘ではなかったんだろうけどいかんせん不安定な10代、マジになったシーモアの気持ちとは差がありすぎました。

彼と付き合っても依存的になるだけだと最後に離れたのは正解だと思います。

 

途中イーニドの計らいで同年代の女性といい感じにもなってたシーモアですが、これもまたビミョーな関係でお洒落なジーンズプレゼントされて「有難いよね」って言ってるとことか何とも言えない気持ちになります。

趣味も性格も合わない人と無理して付き合うのが果たして幸せなのか…誰かと一緒になるってある程度の妥協、歩み寄りは必要だから割り切るべきところなのか…どっちが幸せなんだーとみてて溜息がでます。

そもそもあの女性、彼氏と別れたばっかりで、前から切り取ってた広告に電話してくるってどうなんだろ。

シーモアの趣味を破壊しそうな相手にみえて「その女もやめとけー!!」と思ってしまいました。

 
◆曖昧なラスト、意外な暗さ

ラストはハッキリしなくて、イーニドが来ないはずの謎のバスに乗って街を出て行くという曖昧で幻想的なエンディングでした。

この世に居場所を見つけられずにあの世に旅立った…と考えるのは悲観的すぎる気がするし、新しい場所で幸せになりました…と思うには楽観的すぎるような気がするし…
彼女のフラフラした不安定さを描いただけのように思いますが、あのまま宛所なくずっとバスに乗ってそうな気もして暗さを感じるエンディングでした。

最後にイーニドと会ったレベッカが「電話してね」って親友気遣ってたのが優しかったです。


有名なコミックらしい原作は未読なのですが、〝モブ〟の人たちのパンチ力も素晴らしく、シリアスに寄りすぎてないバランスが絶妙でした。

音楽も妙に耳に残って、ゆるっとしてるようで高い完成度の作品でした。