どんなB級映画に出ても美しい男、ルトガー・ハウアーがマッドマックス的世界で大暴れ!!
世界観と舞台装置だけでニッコリしたくなる素晴らしきB級作品です。
荒廃した未来。人々は皆、暴力的なあるゲームに夢中になっていました。
何やってるか分かりにくいけど、一応競技として成立してるっぽいこのゲーム。
・1チーム5人で対戦。
・基本ラグビーに似ていて、犬の頭蓋骨(ボール)をゴールに持っていた方が勝ち
・頭蓋骨を持てる選手はチームの中の1人だけ
・その他の4人は妨害行為にでる(=殺し合いのような暴力が繰り広げられる)
こんなルールっぽいです。
ボールを持てる選手は1人だけでその人がゴールすれば即試合に勝利ってところは、何となく「ハリー・ポッター」のクィディッチに似ている気がしますね。
絵面があんな爽やかとは程遠いですが(笑)。
妨害選手にはそれぞれ決まった武器があるようで、チェーンをぶんぶん振り回す役の人とかがいて、これだけでオモロイです。
試合時間は「石100個を吊るした皿に投げつける」という係のおじさんがいて、その人が投げ終わったら終了というカウント方法が取られています。
時計という文明の利器も存在しない世界を見事に表現!!しかしおっちゃんのさじ加減でどうにでもなりそうなテキトーさ。
劇中何度も「石何個分まで試合してたぜ!すげえ!」みたいな会話が当たり前のように交わされますが、何がどうすごいのかイマイチ伝わってきません(笑)。
さらに選手は皆頭部をヘルメットのようなもので覆っていて見分けがつきにくく、チームの色分けすらない状態なので、とにかく全編何が起こってるのか分かりにくいです。
しかしこの世界にはもうこの娯楽しかないということ、そして選手には負傷が付き物で怪我をした者は苦しい引退を迫られるということが、荒々しい中にきちんと描写されていて説得性を感じる世界観になっています。
ルトガー・ハウアー演じる主人公はサロウというかつて強リーグに所属していた選手。
金持ちの愛人に手を出したため追放され、今は流れ者チーム所属になっていました。
とある村を訪れた際、選手になりたいと願う女性・キッダがサロウに憧れてチームに弟子入りします。
キッダ役、ジョアン・チェンは華奢なエクゾチック美女で大男+少女っぽい組み合わせがアニメらしくてまた良し。
他メンバーもそれぞれ個性が出ていて、炭治郎のようにずっと箪笥を背負っているおっちゃんが良キャラです。
しかしある日サロウは片目を負傷してしまいます。過去にどうしても付けたいケリがあったのか、かつて所属していたリーグが在る街へ向かいたいと訴え、メンバーはそれについて行くことに。
街はエレベーターで深く潜る地下都市で、暗い中たくさんの人が物を売り買いしている様子が何とも言えぬ荒廃感です。
街を支配するローブを着た白塗りの顔の貴族…爬虫類や昆虫のゲテモノ料理…金網越しに試合を大興奮で観戦する群衆…
特に印象的なのは地下世界のホテルで、梯子を登っていくと壁に吊るされたベッドがたくさん並んでいる景色は異世界感に満ちています。
サロウはこの街でかつての仲間・ゴンゾと再会します。
長身の大男で顔は傷だらけ、頭の一部はブリキで出来ているという特殊メイクも素晴らしいキャラデザ。
そしてサロウのチームが挑戦者というかたちでゴンゾチームと対決することに。
貴族からサロウを痛めつけるようにと指示を受けていたゴンゾですが、意外に正々堂々と戦ってくれ、キッダが大活躍をみせ勝利!!
群衆の歓声に包まれ、デスゲーム設定はどこに行ったのか、爽やかなスポーツもののようなエンディングを迎えます。
でもサロウはもう歳で負傷もしてるから街には残れない。若者だけスカウトされてチームは解散。そんなほろ苦ラストにも余韻が残ります。
肝心の試合シーンをもうちょっと分かりやすく見せてくれれば一皮剥けた傑作になったんじゃいかなーと思う反面、そういうのを無視したからこそ味があるような気もするし…
尖った作品のようでスポーツ映画らしさがしっかりあるところが素晴らしいです。
設定資料集とかあったら欲しくなるタイプの作品。
ルトガー・ハウアーはゴツゴツ衣装着てても隻眼になっても美しく、こういうアニメ的世界にはピッタリ、それだけでも美味しい映画でした。