どうながの映画読書ブログ

~自由気ままに好きなものを語る~

「刑事コロンボ」の傑作エピソード、「溶ける糸」を久々に観た

自分が子供の頃には地上波で度々テレビ放映されていた「刑事コロンボ」。

犯人を頭からネタバラシした構成、ヨレヨレのおじさんが切れ者というギャップは子供がみても新鮮で、あとから「古畑任三郎」を知った際には「コロンボのパクリやん!」とその感動は大分薄れてしまったものでした。

この「溶ける糸」はテレビ放映ではなく親が「コロンボで1番面白い話はこれ!」とビデオを借りてきて見せてくれた回だったのですが、公式の人気投票でも4位にランクインと評価の高いエピソードのようです。

www9.nhk.or.jp

いやー、めちゃくちゃ久しぶりにコロンボみたけど今見てもなんてクールなドラマなんでしょう。

当時は露知らずでしたが、犯人役は「スタートレック」のスポック博士役でおなじみレナード・ニモイと豪華ゲスト回だったんですね。

ニモイ演じる高名な心臓外科医メイフィールドは野心溢れる男。
共同研究者のハイデマン博士が心臓病を患ったのを利用し彼を殺害して名誉を横取りしようと企む…

この話で面白かったのは、冒頭にて犯人が手術で何か細工をしたことを示しつつ、先に殺されてしまうのはそれに気付いた看護師という意外な幕開け。

タイトルの「溶ける糸」がずばりトリックそのものを指していてネタバレになっている気もしますが、手術に使う糸にわざと「溶ける糸」を使い、時間が経つと弁が離れるように細工、そうして心臓発作による自然死に見せかけようという計画。

お医者さん怖っ!!とゾッとするこの仕掛けだけで面白かったです。

冒頭におじいちゃん先生は既に手術されてしまっているので今にも死んでしまいそう…制限時間のあるサスペンス要素も挟まれていて二重にドキドキさせられました。

 

子供の頃に観た際にも心奪われハッキリ憶えていたのはコロンボが最初に犯人に会うシーン。

看護師死亡の知らせを電話で受けたメイフィールドが電波越しには「どうして…」などと動揺した口調で話す一方、手はしっかり時計を直す作業を続けている…

その姿を後ろからみていたコロンボ「いやー、先生はすごい集中力の方なんですね。普通動揺して時計なんか修理してられませよ。」みたいに言う(笑)。

自分がコロンボだったら果たしてこういう違和感に気付けるのかなー、言われてみればだけど絶対スルーしそうと思ったりして、コロンボの「なんか引っかかる」の抜群の嗅覚、アンテナの高さをみせるところがやっぱりカッコいいです。

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↑洞察力ある男はカッコイイ!!

 

犯人がコロンボを一瞥して「あー良かった、パッとしない鈍そうな奴が担当刑事で」などと油断するもその後しつこく絡まれまくるというのもお決まりのパターン。

本作では自宅パーティーにちゃっかり紛れこんで、料理をたらふく食べた後「お腹痛いから胃薬くれます?」ってマイペースすぎる。コロンボの太々しさがみていて楽しいです。

犯人に対して直接的な疑問をぶつけることは案外少なくて「ああでもない、こうでもない」とひたすらお喋りする…犯人にしてみたら「あなたが犯人だから知ってるよね」と遠まわしに言われてるようで、プレッシャー受けた相手がポロっと言葉をこぼしたりする…それがこっちがみてても不自然な返しだったりして、やんわり雰囲気の中で繰り広げられる心理戦が最高です。

犯人捕まれーの思いとこんなに絡まれたらたまらんやろなーという思いとでごっちゃになります(笑)。

 

しかしこの「溶ける糸」回は犯人がかなりの凶悪犯。無関係な看護師さんを手にかけているし、偽造のためにさらなる殺人も躊躇わないというかなりヤバい奴でした。

「あんたが彼女を殺した」とコロンボが迫るシーンがありますが、犯人の方が冷静でコロンボが激昂というのはイメージが違ってびっくりします。

演技にはみえないけどもし演技だとしてもそれくらい圧をかけなければならない相手だったということで、強敵感の漂う犯人でした。

 

しかしラストは大逆転、呆気ないくらいにスッとした幕引き。衆人環視の中の再手術、証拠のはずの溶ける糸はどこに…

「冷静なはずのアンタが掴みかかるなんておかしいと思った」…犯人の人物像そのものを伏線にしたようなオチが見事でした。

サクッと綺麗にまとまってて見終わるとスッキリ!!

天井ガラスの手術室、昔の部屋のインテリアなど何てことはない舞台がやたら贅沢に映り、まさに上質という言葉がぴったり。あっという間の74分でした。

 


コロンボと「エクソシスト」の刑事は似てる…??

こっからコロンボからちょっと脱線した話になりますが…

最近映画「エクソシスト」を再鑑賞した際のこと、オーディオコメンタリーにてフリードキンと原作者ブラッティが登場人物のキンダーマン警部と刑事コロンボを重ねて話していてとても意外に思われました。

キンダーマンというのは「映画監督のバークを殺したのは誰なのか??」を調査する警官ですが、堅物刑事っぽいけど人柄は良さそう&関係ない雑談を振りまきながら案外しっかり事件を探る…とあのめちゃくちゃホラーしてる映画の中で特異な立ち位置のキャラクターでした。

フリードキンもブラッティもこのキンダーマンをすごく気に入っていたようで、人当たりマイルド刑事キャラとして時代の先を言っていた、コロンボがその先端と言われてるがその功績を取られている…みたいに話してて、全然コロンボに似てると思わなかったので何だかびっくり。

それがあってコロンボってどんなだっけ??と1番記憶に残ってたエピソードを拾ってみたのですが、やっぱりキャラとしてはまるで似てると思えませんでした。

でも意識すると、

・高圧的なザ・尋問はせずにお喋りするような会話で何かを引き出そうとする
・知らない分野にも丁寧な姿勢で挑もうとする

ところなどは共通してるようにも思えました。

リーガン宅でコーヒーを飲みながら母親と話すところのやり取りは言われてみれば〝っぽい〟かも?

 

公開された時期をみるとコロンボの方が古いので、「こっちが先だった」と言わんばかりのフリードキンの発言は不思議に思えましたが、もしかしてキンダーマンの方がコロンボに似てるって指摘が公開当時にあったのかなあ、原作は執筆に時間がかかったらしいからブラッティ的にも「先に考えてたのに」みたいな思いがあって癪だったのかなあ…って勝手に色々邪推。

古畑しかり探偵的刑事キャラって今だとそんな珍しくないと思うんですが、それまでのアメリカの刑事モノがごりごりのハードボイルド系で、それだけエポックメイキングで比較されたんですかね。

 

コロンボはテレビ放映されたのを観てたのと、二見書房から出てたノベライズ版を図書館で借りて読んでいたのとで、元々そんなに沢山みてない&だいぶ前に観たきりだから忘れてる状態だったので、久しぶりにみたらとても新鮮でした。

今回配信でみたけど日本語吹替がなく泣く泣く字幕で視聴…やっぱり「うちのカミさんがね」が聞きたい!!

レンタル店に吹替入ったDVD置いてないか今度チェックしたいと思います。