2001年公開のドイツ製サスペンススリラー。
テーマを煮詰めた真面目映画にもB級娯楽作にもどっちにもなりきれてない感はするものの、なんだかんだで面白くみれた1本でした。
タクシー運転手のタレクは2週間で4000マルク貰えると言う大学の心理実験に参加することになった。
その内容は地下に作られた擬似刑務所で20人の男を「看守」と「囚人」に分けそれぞれ与えられた役割を演じるというものだった…
1971年にスタンフォード大学で実際に行われた実験を参考にしてつくられたフィクションだそうで、ホンモノの方は6日間で実験が中止になったらしい…そんな話をきくと余計に不気味に思われるストーリー。
映画でも面接では和やかに話していたはずの20人がいざ2グループに分かれると看守側が1日目から高圧的な態度をとり始めます。
エルヴィスのモノマネする看守役の人はかなり人柄に問題ありそうで、権力を握ると途端に加虐的になる人間性が怖いです。
けれど主人公のタレクもなかなかの問題児で記者のバイトをするため無断で盗撮のカメラを仕込み、ドラマある映像を撮ろうとわざと看守を挑発しているような節がみられました。
タレクのロールプレイングの秩序を乱す行為、看守個人を侮辱するような行為が相手を刺激する要因になったのも事実。
そしてタレクの反抗態度を鎮めようと看守チームのボス的存在になっていくのがベルス。
空港勤務のごく普通のサラリーマンのようで事前のインタビューでは、「7年間一度も遅刻したことがない」と語っていました。
勤勉で義務に忠実な人だけど考える力がなく与えられた役割に依存しがち…奴隷気質なの自分もそういうところあるあるなのでこの人の暴走がみてて1番怖かった。
最初から役割を放棄したような主人公タレクの行動はあれはあれで問題があったと思うし、役割を演じるというのも社会基盤を支える上では重要だとは思うのですが、何の目的で自分はそうしているのか、人間は環境に支配されるという自覚がないとこんなトチ狂ってしまうことがあるのかも。
「何かあれば上が止めるだろう」と責任転嫁して考える事を放棄してしまうのも組織や集団でハマりがちな落とし穴、追い詰められると自分に都合のいい解釈しかしなくなっていくところもリアルでした。
だんだん看守たちが暴力行為に酔いしれたようになってくのは鬱展開ですが、明らかにヤバいのに止めない大学の管理者たちが杜撰すぎて緊迫感を削いでるのは否めないです。
途中から得体の知れない冷蔵庫みたいな懲罰ボックスまで持ってくる教授、完全に変態趣味としか思えません。もっとアクシデントで孤立してしまうとかの展開の方がよかったかも。
また男だらけの地下刑務所というワンシチュエーションの方が俄然盛り上がったと思うのですが、全く意味をなさない主人公の彼女とのシーンを入れてくるのが大変邪魔でした。
主人公と同室の空軍少佐・シュタインホフのキャラが立ってたのでどうせなら男同士のアツい何かの方がみたかった…
↑ドイツ映画でよく見かける顔!?「イングロリアス・バスターズ」にも出てたクリスチャン・ベルケル渋くてカッチョイイ。
全体的には真面目映画するかボンクラ映画するかどっちつかずで惜しかったですがそれでも充分面白く観れたサスペンスでした。