どうながの映画読書ブログ

~自由気ままに好きなものを語る~

「眼下の敵」…駆逐艦vs潜水艦、爽やかな戦争映画

第二次世界大戦中の南大西洋
英国の暗号書を受け取る任務を負ったドイツ軍Uボートが米国駆逐艦と遭遇。
互いの動向を探り合いながらの死闘を繰り広げることになるが…

普段あまり観ないジャンルの作品だったけど食わず嫌いせずにみたらとても面白かったです。

撮影にはアメリカ海軍が全面協力したとのこと、艦内の密室感、水しぶき上がる爆雷攻撃などCGのない本物の映像が50年代の映画とはとても思えない迫力でした。

民間からやって来たという謎めいたアメリカ軍のマレル艦長(ロバート・ミッチャム)と前大戦からの叩き上げであるドイツ軍のシュトルベルク艦長(クルト・ユルゲンス)。

どちらも切れ者で人格者、ともに戦争で家族を失った身で戦争に疑問を抱いている…

シュトルベルク艦長はナチスに批判的でこの年代の作品が敵側のドイツ軍も〝善く”描いているのが意外に思われました。

服装もキッチリ着込んだ軍服でなく汗だくのシャツ1枚、前がはだけてて胸毛飛び出てる…っていうムッワァァァな容姿も他の戦争映画でみるドイツ軍のイメージと違ってびっくり。

f:id:dounagadachs:20210629191610j:plain

脇の登場人物が主演を引き立てるための無能キャラになっていないところも好ましく、2隻以外の外の様子は一切映さないシンプルさが恰好いいです。

軍事系の知識のない人間はついていくのに必死になってしまったので、戦いの経過を少し整理。

【索敵】
駆逐艦側が潜りきってなかったUボートをレーダーで発見。Uボート側も遅れてソナーで反射像を発見し潜航します。

f:id:dounagadachs:20210629191557j:plain

第二次世界大戦、既にレッドオクトーバーみたいな電子兵装がされてたんですね…

U-ボート側はわざと針路を変えてそれに付いてくるか様子見しますが、切れ者のマレル艦長は気付いてないフリして針路を変えない。

一方シュトルベルク艦長も全く油断せずジグザグ進行を続けます。

「レーダー電波の向こうに頭脳を感じる」って台詞が渋い…!!

そして元の進路に戻ったUボート駆逐艦が追い2隻は接近します。

【交戦】
潜られてしまうと下から魚雷攻撃を受けることになる駆逐艦側ですが、相手にわざと魚雷を撃たせ再装填する間に攻撃しようと策を練るマレル艦長。

「多分今ごろ指示出しして各作業にかかる時間がこれくらい…魚雷はあと10分後にくる!」って読みが神がかってます。

ギリギリで魚雷避けるシーンにドキドキ、これにて部下の心も一気に掌握。

今度は駆逐艦側が攻撃にまわり爆雷を投下しますが、シュトルベルク艦長も切れ者で一気に針路変更し「駆逐艦の真下を通って」逆方向に逃走。

f:id:dounagadachs:20210629191604j:plain

「見失った」と相手に思わせるため機体の耐えうるギリギリの深度まで潜って静止、駆逐艦が去るのを待ちますが、マレル艦長は「絶対に下にいるはず」と上で静止することに決めます。

【膠着→再交戦】
時間が経過し任務もあるのでついに動き出すUボート。「やっぱりいた…!」と追いかける駆逐艦

マレル艦長は「残った爆雷を1時間ごとに落とし相手の針路を妨害、あわよくば浮上させて降伏か交戦に持ち込む」という作戦を立てました。

連続攻撃を受けて疲弊するドイツ軍ですが艦長は歌をうたって士気を取り戻させ、これまでに駆逐艦がとった動きを振り返って予測、「並行に並んだ瞬間に異なる角度で魚雷を一斉発射する」という作戦を立てます。

これが見事に命中、勝敗はついたかのように思われました。

【決着】
マレル艦長は看板に燃やしたマットレスを置いて食らったダメージをわざと大きくみせました。それをみて浮上するUボート

「5分で自艦を捨てよ」というドイツ軍メッセージに「了解、感謝する」と返すアメリカ軍。

しかし!!近づいて来たUボートの艦尾を砲撃するアメリカ側。

ここだけフェアじゃないように思ってしまったけど最後まで気を抜いたらダメ、あきらめなかったもん勝ちってことなんですかね。

両艦とも水没、タイタニックみたいな救命ボートに乗る兵士たち。

負傷した部下とともに死を覚悟したシュトルベルク艦長でしたが、マレル艦長がそっとロープを投げ込む…

戦争映画にしてはきれいすぎるという印象もありますが、決して好き好んで戦争してるわけでない軍人像に説得力があり、その戦いぶりから互いの人間性を認め合う2人の関係には爽やかさが残りました。

何が起こってもパニくらず、責任は全部背負う、普段から物腰柔らかで部下を威圧したりしない…2人ともめちゃくちゃカッコいい上司です。

ラストの水葬シーンなど「死」もきっちり描かれてはいて、途中指を失った兵士が職業が時計工だと明かすシーンは淡々としてたのが余計に切なくなってしまいました。

スリリングな駆け引きと迫力ある戦闘シーンとじーんとくるヒューマンドラマと…すごいバランスで配分されていて名作と呼ばれるのも納得!!見応えのある1本でした。