どうながの映画読書ブログ

~自由気ままに好きなものを語る~

「ゾンビコップ」…とにかく明るいゾンビ

秋葉原のワゴンで100円で売られてたVHSを拾ったらあまりの大当たりにニッコリ。
珍味なB級作品かと思いきや意外、満面の笑みでA +をつけたくなるような80年代ホラーアクションです。

ロス市警の2人が主人公のバディものスタイルですが、スーツに身を包んだ太眉がりりしい知性派・ロジャーと革ジャンに身を包んだ上腕二頭筋がたくましい肉体派・ダグ。

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この絵的な組み合わせからしてワクワクが止まりません。

強盗事件が勃発したある日のこと…2人は犯人を射撃しますが相手は撃たれてもなぜか死なずしつこく襲ってきます。

ようやく倒した犯人の遺体を持ち帰ると検視官レベッカから「この遺体は前にも検視したことがある」と衝撃の一言が…

遺体についていた薬品を追ってダンテ製薬会社に調査に向かう2人でしたが、今度は見たこともないような怪物が突然現れます。

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↑3人の人間が合体!?「バイオハザード」にでも出てきそうなワクワクな造形のクリーチャー。

肉体派ダグが怪物を倒している間、知性派ロジャーは何者かに減圧室に閉じ込められ殺されてしまいます。

しかし施設にあった妙ちきりんな機械をみつけたダグとレベッカはその中にロジャーを放り込みます。

すると…何事もなかったかのように起き上がるロジャー。けれどその心臓はもう動いておらず皮膚を切っても血が出てきません。

お前はもう死んでいる…
「身体が腐るからせいぜい寿命は12時間」という衝撃の告知を受けるロジャーですが、「僕を殺した犯人をみつけてやる!!」と予想外の能天気さで再び相棒と捜査に乗り出します。……

本作でまず素晴らしいと思われるのは特殊効果の数々。

悪化する顔色、どんどん崩れていく皮膚などゾンビコップ・ロジャーが急速に変貌していく姿にドキドキ、最終形態はターミネーターにも負けないカッコよさを披露してくれます。 

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また途中とあるキャラクターが迎える衝撃の死…身体がドロドロに溶けていくその姿はまるで「エルフェンリート」。ルチオ・フルチもニッコリしそうな目を見張る出来栄えです。

お茶目なグロシーンも愉快で、主人公一行が調査のため精肉店に入ると蘇生装置がその場で作動、豚の丸焼きや北京ダックが襲いかかる…!!

私たちが日頃命をいただいていることを再認識させてくれる深い道徳倫理に迫るシーン…になっていないこともなく、主人公の「俺も今日からベジタリアンだ!」という台詞が最高にキマっています。

84分という短い作品にて本筋に全く関係ないこういうシーンがやたら長いのもご愛嬌です。

ホラー要素は極めて低くジャンルはむしろアクションコメディですが、冒頭の銃撃戦からしてアクションシーンは意外によく出来ていました。

「撃たれても撃たれても立ち上がるキャラクターが味方サイドにいる」というのが新鮮。
ラストの主人公の突撃は「男たちの挽歌」を彷彿させるカッコよさ、ゾンビ人間同士が互いのボディーに撃ちまくるアホみたいなシーンにも爆笑です。

ゾンビの設定も悪役の行動も一貫性がなく矛盾しかないというポンコツ脚本なのですが、映画見慣れてる人でも度肝を抜く、普通では考えられないようなびっくりするような展開が急にはじまるなど、想像の遥か斜めをいくストーリーが予測不能すぎてこんなドギマギ感を味わえる作品は滅多にありません。

そもそもバディ2人の友情が友情があるのかどうか疑うレベルであっさりしているのが衝撃的です。

ロジャーの余命があと12時間と知ったダグ、「AIBOOOOーーー!!」と絶叫するかと思いきや何事もなかったかのようにカラッとしていてそこには死への恐怖や悲しみが一切ありません。

しかし異様にスーパーポジティブな2人の姿が不思議と深い死生観を醸しているような気もしなくない…そんな味わいのある作品となっています。

もし今日が死ぬ日なら何をするか??って意外に深いテーマ!?ですが、死を前にしても主人公が潑剌と好きな仕事に向かっていく姿は観ていると元気が湧いてきます。

ラストシーンは最高にカッコいいエピローグでした。

人を食べない異色ゾンビものだけど、それにしても「ゾンビコップ」(原題Dead Heat)という邦題は秀逸!!