「ポセイドン・アドベンチャー」に「ダイ・ハード」が突っ込んできて「エイリアン」が無双する…そんな感じの98年公開モンスターパニック映画。
10年程前までは年に1回位テレビ放映されてた気がするのですが最近はすっかりみなくなってしまいました。
忘却されるには大変勿体ない、このジャンルの中では「トレマーズ」と並べたくなるような作品です。
主人公・フィネガン船長(トリート・ウィリアムズ)は密輸船の船長。
荒れ狂う海を飄々と航海する姿が有能さを醸す、さすがのゾンビコップ。
しかしガラの悪い依頼人たちの持ち込んだブツが魚雷だと発覚、彼ら傭兵団の目的は近くにいる豪華客船をシージャックすることでした。
ところが肝心のアルゴノーティカ号は謎の生物に襲われ乗客はその餌食となっていて…
意気揚々と乗り込んだ傭兵団が乗客が1人もいない船にポカーンとするシーンからしてワクワク。
冒頭あった客船のパーティーシーンが華やかだっただけにほぼ全ての乗客を一瞬で見捨てて生存者数人にまで減らすプロットが潔い!!B級だからこそできる豪胆さ。
生き残りメンバーはクズ船主、強盗団、女泥棒…と誰一人善人のいない烏合の衆で、彼らが「ジーザスクライスト!」「サノバビッチ!」と喚き散らしながら戦う姿が楽しくて仕方がありません。
真紅のドレス→白タンクトップの衣装チェンジも眩しいまるで峰不二子なファムケ・ヤンセンの美しさ。
アホの子のようで案外しっかりしてるパントゥーチの愛らしさ。
キャラクターも1人1人立っています。
肝心のモンスター、グリードの全貌がなかなか現れないのはこういう映画のお約束。
ドアがぐしゃっと歪んだり、床板が外れていったり、1匹なのかどれくらい大きいのか分からないまま襲撃が続きます。
船内を探索しながら進んでいく様子はどこかゲーム的で潜水して次の目的地に行くところなんかまさに「ポセイドン・アドベンチャー」。密室パニック感がきっちり出ているのもポイント高いです。
そしてようやく登場するモンスターの見た目はタコ野郎。触手の先がグワーッーと開くとトゲトゲした牙が…
98年の作品ということもありCGの出来はショボいしモンスターそのものが特に優れているわけではないけど、このグリードに丸呑みされるとゆっくり肉を溶かされ骨だけ吐き出される模様…
半分だけ消化された仲間が吐き出されて絶叫する場面や喰われた3000人の血骨が発見される場面などグロホラーなサービスシーンも出来がよいです。
傭兵団のウェポンがやたら高性能で絶対途中で弾切れすると思ってたら無限に弾丸が出てくる謎仕様(笑)。
リアリティ皆無ですがテンポ損なうことなくアトラクションのように楽しませてくれ、1人1人散っていくキャラクターの死に様にも華がありました。
↑うしろうしろー、で丸呑みされるかと思いきや意外に奮闘、けどやっぱり後ろから殺られるモリガン(ジェイソン・フレミング)。
↑背後からゆっくり食われてる最中のハノーバー(ウェス・ステュディ)。せっかくパントゥーチが残してくれた銃弾1発を無下に扱い因果応報…!
↑ヴィーヴォ(ジャイモン・フンスー)の船の生存者に斧で頭叩き割られるという理不尽な死に様も豪快。冒頭から傑作の予感しかしません。
フィネガン船長とファムケ・ヤンセンがジェットスキーで船内を駆け回り脱出するところは「バイオハザード4」、お約束どおり魚雷で客船が木っ端微塵になるのも爽快。
最後には無人島に辿り着きハッピーエンドかと思いきや「お次はなんだ?」の台詞も最高にキマっていました。でもなんだかんだでこの3人はしぶとく生き残りそう。
原題はDeepRising、モンスターの正式名はオクタクルスだったという本作。
日本の配給会社のつけた「ザ・グリード」、喰って喰って喰いまくれ!!のタイトル&宣伝文句は秀逸。何でもいいから売ったれ!!という「バタリアン」のような気概を感じます。
海外ではBlu-rayが発売されているようですが、国内再ソフト化が切望されるタイトル。
というかテレビでまたやってくれないかなあ。