正式な続編は「デモンズ2」まで、アルジェントが制作チームに入っているのは「デモンズ4」まで…その後もランベルト・バーヴァやミケーレ・ソアヴィが関わりつつ6まであるデモンズと名の付いたシリーズ。
ルチオ・フルチが90年に監督したこちらの「新デモンズ」もオリジナルと全く関係ない代物でビデオ会社が便乗して名付けたものだと思われますが、これ系観る人間は限られるのでもう何でもいいか…むしろ嗜好を汲んでくださって有難うございますなタイトルなのかもしれません(笑)。
1486年シチリア。
魔女狩りのような雰囲気の中修道院にて5人の女性が磔にされ処刑されてしまいます。
全員修道服を着ているため誰が何なのかサッパリ分かりませんが、女性の額には?な刻印があるのでおそらく修道女たちの方が悪魔信仰の異端者。
釘を刺されるゴア描写は「ビヨンド」にて画家が処刑されるシーンと重なるオープニングです。
その約500年後の現代…カナダから来たライザとポール夫婦は発掘調査のためシチリアを訪れていました。
町の頂にある古い廃墟の修道院に心惹かれるライザでしたが、迷信深い地元住民は過去の遺物を掘り出すことを良しとせず調査に苦言を呈します。
警告を振り切り修道女たちのミイラを発見するライザ。
すると何かが目覚め次々と人々が謎の死を遂げていきます…
ストーリーは黄金期フルチに立ち戻ったような王道オカルトホラー。
過去に殺された修道女たちが地元住民(子孫)に復讐する話なのかな…過去からは逃れられない壮大な因果律とアンチキリスト的テーマを孕んだ一大傑作…!!
…になるかと思いきやなぜか殺される面々の殆どはよそ者の発掘者チーム(笑)。
脚本は一貫性なく支離滅裂ですが、90分で6人の犠牲者を出すそのゴア描写は中々力が入っており、フルチ映画に馴染みのある面々が登場。ファンには楽しめる1本になっていると思いました。
1人目の犠牲者は遺跡発掘者仲間のポーター(サンゲリアに出演、ビヨンドで死体に脳波計つけてたアル・クライヴァー)。
修道女の亡霊にボウガンの矢で刺されるという霊攻撃なのか物理攻撃なのか全く意味不明な殺され方で死亡。
2〜3人目は遺跡発掘を手伝っていたアイルランド人2人組。
夜中修道院を探索中にインディ・ジョーンズのような罠にかかって死亡。
4人目はライザと同じく過去を霊視できる町の占い師(クロックのおばちゃんメイド、雰囲気あるお顔のカーラ・カッソーラ)。
飼い猫に襲われ目を抉られ死亡、フルチ映画あるあるで1位にきそうな死に方。
5人目の犠牲者は「町の秘密を暴くな」と警告してた肉屋のテューリ(ホラーハウスの犯人役リノ・サレム、イタリアンなイケメン)。
冷凍室にて吊るされた豚肉に襲われ、現れた修道女に舌を釘で刺されて死亡…舌が長すぎるけどこのシーンの特殊効果もよく出来てます。
6人目の犠牲者は遺跡発掘チームの一員ジョン。
連れ去られた息子ロビーを追いかけてるかと思いきや次のカットではなぜか自身が縛られてて股を引き裂かれて真っ二つになり死亡。特殊効果炸裂のゴアシーンですが前後の繋ぎがめちゃくちゃすぎて頭が追いつきません(笑)。
最後に犠牲になるのはライザの夫ポール…(イノセントドールでドM医者を演じたブレット・ハルゼイ。あんな目にあってもまたフルチ映画に出てくれるなんてきっといい人)
…かと思いきや夫は死なず、ラストには修道女に取り憑かれたライザが地元住民に追い立てられ火炙りに…するとライザの肉体が離脱して亡霊だけが再処刑…??
主人公が助かったのかそうでないのかもよく分からない終わり方で、そもそもライザと修道女の接点が何だったのかもサッパリ分かりません。
見せ方次第では閉鎖的な町の住民の狂気を描いたり、異端迫害を追及するようなもっと深みのある映画になった気もするのですが…
修道女たちが被害者なのかと思いきや、過去の霊視描写をみると散々乱行に走った挙句生まれた赤ちゃんを火炙りにするなど紛うことなき鬼畜集団でこれには冒頭の処刑もやむなし、となってしまいます。
主人公夫妻には冷たい空気が流れており、ここももっと掘り下げれば迫害された過去の女性達のドラマとリンクしてすんごい深い話が展開できたような気もしなくないけど、そういう「サスペリア2018」みたいなの観たいかと言われればそうでもないような気もする(笑)。
お話はともかくとして特殊効果は全盛期には及ばずとも見所がある出来栄えとなっており、舞台になっているシチリアのカルタべッロッタでのロケ映像も美しいです。
山と海に囲まれた白い家の連なる街並みだけで抜群の異世界感。
古代ギリシャ遺跡のような野外円形シアターにてライザ・ポール夫妻が夢で交信する幻想的な場面も美しく、ロケーションのよさだけでゴシックホラーとして充分成立してると思いました。
フルチ自身も警察役で出演、制作費節約のためだったのかもしれないけどいつもよりかなり出番が多い(笑)。
黄金期の作品のような覇気はないけど意外に好感度は高い作品でした。