どうながの映画読書ブログ

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「暗闇にベルが鳴る」…「ハロウィン」「スクリーム」の原点、クリスマス真っ暗ホラー

子供の頃家に誰もいないときに掛かってくる電話ってドキッとして怖かったりして、電話には独特の不安感!?がありますね。

1974年にカナダで制作された低予算スラッシャー映画ですが、電話を小道具にした効果的なサスペンス、「ハロウィン」「スクリーム」など後続のホラーに大きな影響を与えたと言われる作品です。

オープニングは女子寮に忍び込む不審な人物……犯人の主観を映したカメラは今では珍しくないけど当時は画期的だったのでしょう、「ハロウィン」の冒頭にも確かに似ています。

寮内はクリスマスパーティーで賑わっていましたが、そこに掛かってくる不気味な電話。

卑猥で挑発的な言葉を繰り返す相手は1人なのか複数人なのか、男の声と女の声が混ざったような気味の悪い音声がとにかくよく出来ています。

皆の知らぬ間に寮生の1人・クレアがひっそりと殺されてしまいますが、屋根裏に隠された死体を誰も発見しないまま次々に殺人が続いていきます。

ビニール袋を被せられた最初の死体が時折映ってはジーーッと外みてるのが不気味、スプラッタ描写皆無なのに下手なホラーよりよっぽど怖いです。

その後も立て続けに鳴る不審な電話の相手をすることになるのが主人公・ジェス(オリヴィア・ハッセー)。

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ジェスは実は妊娠しており「子供を中絶したい」と彼氏のピーターに相談するも大反対にあってギクシャク…なんでクリスマスにこんな話すんねん、な真っ暗なドラマが同時展開。

電話の相手が支離滅裂な会話の中で「赤ちゃんを殺すな」などと言い出したのもあって、ジェスは恋人のピーターが犯人ではないかと疑いはじめます…

ボーイフレンドが殺人鬼なのか!?「スクリーム」の展開もこんな感じでしたね。
本作の彼氏役は「バニー・レークは行方不明」にも出ていたキア・デュリアで、整った顔のサイコパス役がぴったりというかナイスキャスティングです。

 

クレアが行方不明になったことで脅迫電話との関連を疑い警察も捜査に乗り出します。

ジョン・サクソン演じる警部補が「回線を特定するから会話を長引かせて!」って言うのもこういうサスペンスあるある。「発信元が分かりました」「しっかりしろ、そこは受信元だぞ」の遣り取りにはNooooーー!!

実は犯人は冒頭から一貫して家内に居り、ずっと中から電話かけてたって展開が秀逸です。

クライマックスに1人2階へ向かっていくオリヴィア・ハッセー、まさに「逃げられないのに2階行っちゃうホラーあるある」の先駆。

外からやってきた(ように見える)ピーターが彼女に近づいてきますが…

 

(以下ネタバレ)
ピーターと揉み合いになり彼を殺して何とか助かったジェス。気を失った彼女を警察が保護しますが、ラストに犯人と思しき人物が屋根裏にひっそり姿を隠していた…

結局ピーターは無罪だったのね、1人になったジェスはこれからトドメ刺されるのかも…とゲームのバッドエンドっぽい幕の閉じ方でエンドロールを迎えます…

犯人が誰だったのか丸投げのラストには賛否両論あるようですが、一貫して犯人をみせない演出が正体不明の殺人鬼の不条理さを際立たせており、個人的には評価したいエンディング。

近くにある最初の死体に誰一人気付かないところもクリスマスなのに皆無関心的な寂しさが極まってますし、子供たちが玄関先で聖歌を歌っている裏で寮生がメッタ刺しにされる…など作った人はクリスマスに恨みでもあんのかな??と疑う情け容赦のなさ(笑)。

寮生のメンバーが下ネタ言ったりする所々息抜きな場面も挟みつつ、警察の人が話通じない無能だったり、寮母のおばちゃんが誰いない所で皆から貰ったクリスマスプレゼントの悪口言ってたり…とどこか冷たーい感じも漂っていて、カナダの寒空と相まっていい感じに陰鬱ホラーしてます。

大仰な音楽は一切ない静かな映画でありながら、りりりりりっって鳴るダイアル式の古い電話の着信音が最近では味わえない独特の恐怖効果。電話口の犯人の声は「エクソシクト」の悪魔憑依リーガンにちょっと似てるかも。

「アグネス、俺たちのしたことは秘密だ」「ビリー、やめて!」…いかにも多重人格な雰囲気で会話していましたが、監督によると一応兄妹という設定を考えていたようです。

近親相姦で出来た赤ちゃんをどうするか話してたのか何なのか、細部は一切分かりませんが音声だけで「サイコ」感バツグンな不気味な犯人でした。

そういえば「スクリーム」の主人公の彼氏の名前はビリー・ルーミス。本作と「ハロウィン」(ルーミス医師)から半分ずつ取っていたのかも。

舞台がほぼ寮の建物に終始していて逃げ場のない密室感が生きているのもホラーのお手本といった感じ、後年まで語り継がれているのも納得の1本です。