山奥に遊びに出かけた若者たちを血に飢えた殺人鬼が襲う…
ホラーのテンプレみたいな設定しつつ他作と異なる趣向が盛り込まれた80年代異色スラッシャー映画。
パッケージ詐欺というか、意外に殺人も流血も少ないアクションコメディテイストな楽しい1本です。
冒頭からホラーらしからぬ幕開けで、人気のない町で緊迫の銃撃戦を行う男たち…
なんと弾丸はペイント弾でサバイバル・ゲームに興じていただけ、BGMも西部劇ちっくなメロディが流れたりと中々凝った楽しいオープニングです。
ミリタリールックな主人公サイドに対し敵チームの衣装はウエスタン風に古い軍服とバラバラ…サバゲー界隈のことは全く存じ上げませんがこんな統一感なくていいんでしょうか(笑)。
ともあれランボーvsナチスドイツ!?という完全にアウツな決闘をみせてくれるのはB級映画にしかできない所業。
念願の優勝を決めた主人公チーム・ゼロボーイズでしたが、リーダーのスティーブは「ゲームに勝ったら敵主将のガールフレンドを賞品として貸してもらう」という約束をこっそり取り付けていました。ゲスの極みすぎる(笑)。
一悶着ありつつ一行にジェイミーが加わり、男3人、女3人のグループとなって人里離れた山奥にツーリング。
そこに嵐が訪れ無人のログハウスで雨宿りすることに…とスラッシャー映画あるあるな展開を辿っていきます。
他所様のお宅でやりたい放題、モラルに欠けた行動はまさしく「ホラーで処刑されるにふさわしい若者」なのですが、サプライズでお誕生日会始めたり仲良さそうでなぜか憎めない感じの6人(笑)。
ビッチにみえたジェイミーが実は心理学の優等生というのもユニークなキャラクター像で、メンバーの中でもっとも洞察力に長けスタンガンで見事な応戦をみせるなど有能オブ有能なヒロイン。
もう1人の女性キャラ・トリッシュは犯人に襲われる前から元々足にギプスつけてる…と何の意味もない設定が雑すぎて笑ってしまいますが、彼女も足手まといにならず必死について来て一緒に戦う。
女性キャラが悲鳴要員に収まらずサバゲー野郎のメンズの方が頼りなく映ってくるという不思議なメンバー構成であります。
一方殺人鬼サイドの方も単独犯でなく2人がかりで襲ってくるという珍しいパターン。
登場シーンのシルエットは只ならぬ気配がしてカッコいいのですが、6対2な上、ちゃっかり実弾も持ってた銃火器実装のゼロボーイズに対し、殺人鬼の武器は鉈とボウガンのみと圧倒的不利(笑)。
落とし穴や仕掛け縄を用意してるあたりは面白いのですが、どれも決定打に欠けて恐怖感は薄く、もっとジワジワ追い詰めてくるような展開が欲しかったように思われます。
殺人鬼勢はあっさりと顔出しもしますが、特徴のないフツーのおっちゃんでマスクの存在はやはり偉大。
衣装を何かの制服や軍服にするなどもっとキャラを特徴付けるモノがあった方がよかったかも…
「殺人鬼は全部で何人いるか分からない」というオチも悪くないのですが、それならば尚更所属するキーアイテムみたいなのを見せた方が引き締まったんじゃないかなーと思いました。
殺人鬼役の1人はマーティン・シーン弟のジョー・エステヴェス。(似てる)
緑いっぱいの沼地を歩く姿をみてると「地獄の黙示録」がよぎるような(笑)…意図的なキャスティングだったとしたらシャレがきいてます。
拷問部屋となっていた納屋では被害者を殺す様を記録したビデオが発見されますが、このシーンはホラー映画らしい不気味さが漂っていました。
スナッフフィルム的なやつの先駆けというか「ホステル」みたいなイヤーな感じがよく出ています。
納屋でメンバーの1人が危うく殺されそうになる場面は「スクリーム」冒頭の殺人シーンによく似ていて、殺される彼氏の名前もスティーブと共通点が…
監督はギリシャ出身のニコ・マストラキス。
美術アシスタントとして若き日のフランク・ダラボンが、音楽にはハンス・ジマーが参加しているから驚き。
マーチっぽいビートをはらんだオープニング曲がスタンリー・マイヤーズ担当で劇中アクションシーンで掛かってるスコアがジマー担当のように思われますが、シンセサイザ響かせたノリノリの音は疾走感爆上げでめちゃくちゃいい仕事してます。
もーちょい殺人鬼側のパワーを強くして、罠ももっとヤラしいやつにして恐怖度上げれば傑作ホラーになったんじゃないかな…色々惜しく思われますが、仲間もあまり死なず流血もほぼなし、スラッシャーらしからぬ独特の陽気さが謎の魅力。
なんか元気の出るご機嫌なホラーなのでした。