日本では「ゾンビ3」というタイトルになっているもののロメロの「ゾンビ」とはもちろん無関係、原題が「Zombi3」である「サンゲリア2」とも全く関係のない作品。
81年公開、監督はアンドレア・ビアンキというイタリア人でこの時期につくられたマカロニ・ホラーの中では評判の1作!?のようです。
ドワーフのような長い髭を生やした考古学者のエアズ教授はエトルリア文明の研究者。
地下墓地を発掘中に太古の呪いが解かれ死者が蘇ってしまいます。
そんなことは露知らず墓地近くの屋敷にてバカンスを過ごそうとやって来たカップルたちは死者の群れに襲われてしまいます…
舞台がずっと家から移動しないスケールの小さいゾンビ映画ですが、枢機卿の別荘だったというロケ地の古城はゴシックホラーに出てくる幽霊屋敷のようで雰囲気たっぷり。
登場人物はカップル3組+使用人2人+子供1人という構成で、唐突に挟まるカップルのエロシーン。
セールスのためなら何でも撮ったる!!という強い意気込みを感じます(笑)。
しかし登場人物の中で最も強烈な印象を残すのはマザコン息子のマイケル。
子役が使えなかったため低身長の25歳の男性に12歳の子供役を演じてもらったらしく、結果「エスター」的な異様な雰囲気が醸し出されることに…
ゾンビが館に入ってきても「ママ!ママ!」と叫びながら母親にベタベタ。親子とは思えない親密なキスと愛撫を披露…
一体何の映画をみてるんだ!?ゾンビそっちのけでハラハラさせられます。
ゾンビものとしても見所はあり、本作のゾンビは土成分多めのパサパサしたやつで「サンゲリア」のゾンビに似た風貌。
「サンゲリア」ではスペインのコンキスタドールが蘇ってきて400年位前にしては死体新鮮すぎない??と思ったけど、こちらは紀元前の遺体なので保存状態いいどころの話じゃありません(笑)。
うじ虫が顔に付いたゾンビが土の中からゆーっくりと起き上がってくるシーンは「サンゲリア」のミミズゾンビ登場シーンにそっくり。
その他にもフルチの目玉潰しを完全にトレースしたような場面が登場したり、目のクローズアップがあったり、「地獄の門」を想起させる工具で頭部破壊(やりそうでやらない)のシーンが出てきたりします。
本作の特殊効果担当はジノ・デ・ロッシ。
「サンゲリア」と同じ人だからセルフパロディみたいに同じようなのつくったのかな…と思いきや「サンゲリア」を手掛けたジャンネット・デ・ロッシとは別人。
(ややこしい…さらにジノ・デ・ロッシは「地獄の門」の特殊効果担当で「サンゲリア」にもクレジットはされてないが参加はしていたようだ)
ゾンビの造形も含め損傷した皮膚から血肉がただれる様子など「サンゲリア」の方がつくりが圧倒的に丁寧ですが、本作も食事シーンのグロ描写などよく出来ています。
歩く速度こそゆっくりなものの、動作がキビキビとしていて物悲しさが全くないのがこちらの特徴。
道具を持って皆で協力してドアを破壊するなどビックリの知能派です。
暗殺者の如くゾンビが短剣を投げつけ鎌を持って女性の首を刈りとるなどゾンビ映画らしくない珍妙な光景が続出。
逃げ込んだ僧院にて修道服を着て化けたゾンビたちに襲われるシーンは「どんだけ頭いいんだよ!」と不条理感が極まっていました。
アクションシーンで主にかかるシンセサイザをきかせた曲は過剰すぎてチープ、役者さんはキャリアのない人が多かったようで、1番若いカップル組の演技は棒を越えて酷い。
全体的にC級な中、マザコン親子だけが高い演技力で他を圧倒します。
ラスト、12歳の息子に母乳を与えようと乳を差し出す母親。しかしゾンビ化したマイケルは母の乳房を嚙み千切る…
なんの変態プレイみせられてるんや…
昨年フルチ祭りをしたときに関連作として発見、意外にAmazonのレビュー数が多く嬉々と語られている方ばかりでこれは観ねばと思い鑑賞したのですが、好きな人間(変態)には刺さる映画。
昨年みた「サンゲリア2」の方がロメロの引用が多く「ゾンビ3」のタイトルがしっくり来て、こちらの「ゾンビ3」の方がフルチのトレースが多く「サンゲリア2」っぽいですね。(ややこしい)
「サンゲリア」好きなら必見の作品、みれてよかったです。