「ヘル・オブ・ザ・リビングデッド」の監督ブルーノ・マッティと脚本家クラウディオ・フラガッソがホラーで初タッグを組んだ81年の作品。
昨年購入した「ヘルオブ」パンフレットで解説されていて気になっていたのを初鑑賞してみました。
閉鎖的な修道院で起こる怪事件…神父がお祓いに訪れるとそこには悪魔の子が…
「サスペリア」「エクソシスト」「オーメン」を混ぜ合わせたようなプロット。
時折「サスペリア2」が混ざってきてクライマックスは「キャリー」に…
さすがこのコンビの作品だわ(笑)とその節操の無さに絶句。
「ヘルオブ」ほどのテンションの高さはないけれど、ふざけているようで大真面目に作っていることが伝わってくる、楽しいイタリアンホラーになっていました。
◇◇◇
人里離れた修道院。
なぜか院内にある死体置き場のような謎の実験室。
先輩シスターが若いシスターに修道院にまつわる噂話を聞かせていますが、姦通したシスターがいて悪魔の子を産んだだの、前院長は殺されただのトンデモない話ばかり。
「生殖器は罪への門」と叫びながら遺体の子宮を抉り出す先輩シスター(笑)。
しかし突然何者かに操られたかのように錯乱、後輩シスターをメッタ刺しにしてしまいます。
その後も修道院では怪事件が頻発し、何かを語ろうとしていたシスターが身体のあちこちから出血して変死。
調査のため、信仰心厚いイナルド神父が派遣されるも、突然体が燃えて焼死してしまいます。
教会は心理学に通じた現実主義のヴァレリオ神父を新たに送り込みますが…
冒頭から珍事の連続…!!とにかく変な修道院ですが、尼僧たちを影で支配する院長シスター・ヴィンチェンツァは魔女のような迫力。
「ビヨンド・ザ・ダークネス/嗜肉の愛」のフランカ・ストッピさんがいい表情をたくさん見せてくれます。
神父が隠し部屋を探すと首を吊るされた人形が登場、どんだけ吊るすのよ(笑)。
別の部屋からは子供が描いた不気味な絵を発見。
神父が床のタイルを剥がすところも壁画を削る「サスペリア2」に激似。
製作陣のやりたい放題に閉口しつつ、名作ホラーのごった煮のような内容に不思議と気分は上がってきます。
なぜか修道院のそばでは凶暴そうな犬が多頭飼いされていて、その世話をしているのは庭師のボリス。(ヘルオブのサントロさん)
「サスペリア」よろしく案の定飼い犬に襲われる展開に…
思ったよりグロは控え目、地味な作品ですが、個性的な顔立ちの役者さんたちによる怪演にクラクラしてきます。
教会の調査を拒むシスター・ヴィンチェンツァに、ヴァレリオ神父は彼女が何かを隠しているのではないかと疑います。
そんな中、布で顔を覆った謎のシスターが神父の前に登場。
なんと彼女はシスター・ヴィンチェンツァの娘。
院長は実は教会を裏切って悪魔と契約、庭師とまぐわって悪魔の子を出産していたのでした。
終盤はとっ散らかっていて、何が何だかさっぱり分かりません(笑)。
念力で人を殺すこともできれば、死人を蘇らせることもできる、すごい超能力者の娘ちゃん。
シスター母はどうやら娘の力を利用して修道院を支配してきたようです。
なぜか突然出会った神父にフォーリンラブする娘でしたが、子供の自立を許せない母親は我が子の背中をメッタ刺しに…(いきなり始まるキャリー)
「あなたはいつまでも私の子供よ」「私の子なんだから私を憎まないで」…独り善がりなお母さんで、2人の会話はなんだか切ない…
「ママ」と呟きながら刺された体で母を追いかける娘の姿もなんだか哀しい…
親子対決になるも、娘が蘇らせた父親の死体によって首を絞められ絶命する母親。深手を負った娘も死亡…
チープでパクリだらけですが、壮絶な家族ドラマをみせられたような気がしないでもない、怒涛のクライマックスでありました。
最後の最後にもうひと展開用意されていて、良く言えば真面目、悪く言えばくどい(笑)。この辺りもヘル・オブに何だか似ているなあと思いつつ、サービス精神満点。
突然フクロウが舞う映像が挟まれたり、猫の様子を捉えた映像が流れたり…動物ムービーをインサートしてくる手法もこのときからやっていたのか…!!と驚き。
音楽はゴブリンのアルバムから使用されたそうで「ビヨンド・ザ・ダークネス」の曲がじゃんじゃん掛かっていましたが、聖歌隊とも不思議とマッチ。
「ヘルオブ」のような動的な面白さはなく、しっとりしてて地味めですが、間違いなく2人の片鱗を伺わせる作品。
破茶滅茶だけど、お腹いっぱいになる楽しい1本でした。