どうながの映画読書ブログ

~自由気ままに好きなものを語る~

「真昼の用心棒」…時々光る残酷描写…!!フルチのマカロニ・ウエスタン第1作目

先月、別冊映画秘宝でなんとルチオ・フルチ本が発売…!!

ネットで品切れになったりしていたようですが、ヨドバシで無事購入することができて、まずはざっと一気読み。

そのあと少しずつじっくり読ませてもらっています。

(裏表紙も最高だぁ〜♫)

フルチの経歴から始まって時系列順に作品が取り上げられていて、とても読みやすい。

これまでもBlu-rayの特典映像やドキュメンタリーでフルチのバックグラウンドを知れる機会はあったものの、話が飛び飛びでエピソードがぶつ切り…この本は初心者にはとっても有難いです。

世間一般には評価が低くあまりスポットの当たらない晩年の作品も俄然みたくなりました。

フルチ以外のイタリアンホラーの監督を取り上げたコーナーもあったり、当時のジャンル映画を解説したコーナーがあったり…にわか者にはこちらも有難く、気になる作品がいっぱい。

最後に収録されている”女優名鑑コーナー”はなんとも言えない古臭さで実にノスタルジック…!!

自分は数年前にU-NEXTにフルチ作品が大量入荷されたときに未見の作品もそこそこ観れたつもりだったのですが、それでも本著に取り上げられている作品の半分もみれているかどうかというところ。

この本を指南書に未見の作品をみるぞ…!!と思ったものの、輸入版やVHSを探さないと鑑賞が困難なものも多そう。

そんな中意外にも!?比較的手を伸ばしやすそうなのがマカロニ・ウエスタン。 

「フルチの手掛けた西部劇は生涯たった3本に過ぎないが、その1本1本はいずれも印象に残るものだった」…こちらもかなり面白そうで、まずは未見の「真昼の用心棒」を観てみました。

 

66年公開、フルチが初めて撮った西部劇。

ストーリーはマカロニによくある話で新鮮味はあまりないけど、所々に目を引く残酷描写が…

主演はフランコ・ネロですが、それよりも印象に残るのは、アル中なのに凄腕ガンマンの兄貴と、サイコパスオーラが漂う坊ちゃんフェイスの敵役。

個性が光りつつも全体的には手堅くまとまっていて、普通によく出来た面白い1本でありました。

 

◇◇◇

人間狩り!?でスタートする異様な幕開け。

大勢の男たちが犬をけしかけながら1人の男を追い立てていき、男性は犬に食われて川で絶命してしまいます。

次に映し出されるのは川辺で砂金拾いをしている主人公。

川から川へ…流れるように移っていく場面転換がなんだかスマート。

オープニングの主題歌もマカロニらしくてテンションが上がってきます。

 

フランコ・ネロ演じるトムは、兄のジェフリーとともにインディアンの養母に育てられましたが、農場は兄が受け継ぎ、長らく実家に帰っていませんでした。

しかし故郷の知り合いから「早く家に戻った方がいい」という警告めいた謎の手紙を受け取ります。

久々に訪れた故郷は様子が一変。

残酷な男・スコットとその息子ジュニアに支配され、兄の農場も彼らに奪われていました。

兄と養母は町の片隅に住居を移し、ジェフリーはすっかり酒浸りに…

養母メルセデスは「危険だから早く街を離れなさい」と何かを隠した様子でトムを突き放します。

 

トムは手紙を送ってきた知人の下を訪れることにしますが、スコット一味に襲撃され殺されてしまう一家。

ここの死体の見せ方が急にホラーっぽい(笑)。

子供の死体までしっかりみせる容赦のなさ、死体→窓の外の下手人を映し出すカメラワークもユニークで、所々に〝らしさ〟を感じてしまいます。

 

続いてスコット家のガーデンパーティーに乗り込むトムでしたが、ジュニアによるムチのリンチを受けることに…

このシーンは異様に長い(笑)。

主人公に尋常ならざる憎しみを向けてくるジュニアですが、後に驚愕の事実が発覚…!!

本人も知らなかったけれど、なんとトムは町の支配者・スコットの実の息子。

父スコットは狂気じみた次男ジュニアにお手上げで、もう1人の実子・トムに家を継がせようと、知人に手紙を書いてもらい、トムを故郷に呼び寄せていたのでした。

しかし怒りに駆られたジュニアは父親を射殺してしまいます。

 

意外にも家族の確執!?を描いたドラマが展開。

悪役ドラ息子のジュニアを演じているのは「シェルブールの雨傘」のニーノ・カステルヌオーヴォ。

首を斜め45度に傾けながら「僕を愛してるよね?」とパパに詰め寄る姿が病的、ファザコンオーラが凄まじいです(笑)。

 

それに対しインディアンの養母に一緒に育てられたという兄ジェフリーは朗らかな豪傑。

「ヘイ、ジェントルメン!!」と声を掛けてから撃つ謎に紳士なアル中ガンマン。馬を横乗りしながら敵を撃ち倒すシーンは主人公が霞むインパクト。

終盤この兄貴から主人公の出自が一気に明かされるのが唐突(笑)。

結局どんな家族関係だったのか、イマイチよく分からないまま話が進みますが、父スコットに続き養母メルセデスもジュニア一味に殺されてしまいます。

ジェフリーも怒りに燃え、兄弟はついに一味に殴り込みをかけることに…

 

クライマックスにはフランコ・ネロも華麗なアクションシーンをみせてくれて、空中でバク転してから敵を一網打尽にする”大回転ワゴン撃ち”がカッコいい。

トムとジュニアの因縁の兄弟対決はガンファイトではなく殴り合いに…あっさりめなのが残念ですが、最後の揉み合いと転落死は「マッキラー」を思い出して嬉しくなりました。

お兄ちゃんと鳩をみつめるラストは朗らかな気分になって、何だかいいエンディング。

 

残忍な敵の描写、軽快なアクションシーン…飽きずに楽しく見れる作品になっていて、途中には「荒野の用心棒」を意識してなのか、棺桶屋のキャラクターも登場。

孔子の言葉を語りつつも守銭奴という謎の中国人(笑)、ドライな死生観が垣間見えたようで面白かったです。コミカルな場面を息抜き的に挟んでいるあたりも、唸る職人監督っぷり。

全体的にはあっさりめだけど、フルチを知らなくても楽しめるし、残酷描写の片鱗みたいなものも所々伺えて、大変愉快な作品でした。