ジュリアーノ・ジェンマ主演、78年公開、フルチが最後に撮ったマカロニ・ウエスタン。未見だったのを初鑑賞してみました。
マカロニ後期の作品ということもあってか、伸び伸びした明るいムード。
ジェンマ本人は最も好きな西部劇だと語っていたのだとか。
フルチのマカロニ3作の中では最もフルチらしさを感じにくい作品でしたが、子役の子供がめちゃくちゃ可愛くてにっこり。
話は意外と考えられていて、クライマックスは突然ジャーロに(笑)。
スッキリしたあっさりめの作品でしたが、楽しくて元気の出る1本でした。
◇◇◇
地主バレットとその手下ルークに裏切られ、路頭に迷うことになったブラッド一家。
理不尽を訴えた父親は手下に殺されてしまいますが、息子のロイが父の銃を取り、ルークを射殺。
10歳で凄腕ガンマンと恐れられるようになったロイは町の人から避けられ、孤独な流れ者となっていました。
ある日ロイは依頼を受けて賞金首が待つという墓地へ向かいますが、なんと現れたのは幼い少年。
少年がかつて自分達を貶めたバレット家の甥だと知ったロイは、少年を荒野に置き去りにしますが、紆余曲折あって行動を共にすることに…
身代金狙いの悪漢が次々とトーマスを襲いますが、どうやら裏には黒幕がいるようで…
とにかく可愛すぎるトーマス・ジュニア。
こういう子供キャラは大抵生意気なパターンが多い気がしますが、この子は礼儀正しくて利発。
大人の言わんとすることを汲み取って健気に振る舞う姿には、庇護欲をかきたてられること必至。ハートを撃ち抜かれてしまう主人公にも納得であります。
初対面こそロイに見捨てられたトーマスくんですが、泣き言1つ漏らさず、貰った水筒を枕に荒野に寝そべる姿には只者じゃない大物オーラが(笑)。
修道院で教わったという謎のサバイバルスキルを発揮、蛇を仕留めたり、自ら銃をぶっ放したり…〝守られるだけの子供〟じゃないのが新鮮。
〝水筒爆弾〟を少年がポイポイ投げて戦うファイトシーンも軽快で楽しかったです。
主人公自身が、望まない状況で幼くして人を殺めた過去がある身。
憎い敵の身内という因果を乗り越えて、「お前には俺と同じ辛酸は舐めさせないぞ…!!」と少年に優しさをみせるようになる主人公の心情がしっかり伝わってきて、意外と丁寧なつくりの作品。
そんな2人と奇しくも行動を共にすることになるのが、〝2発屋のスネーク〟と呼ばれる謎のはぐれ者ガンマン(ジェフリー・ルイス)。
死人から金品を奪い取るガメつい男だけれど、根っからの悪人ではなさそう。
「ウエスタン」のジェイソン・ロバーズ的立ち位置で軽快な音楽と共に登場、散り際も含めて美味しい3枚目小悪党キャラ。
抜け目ないスネークは、ロイの名前を使って坊ちゃんの身代金を要求する手紙をバレット家に送りつけていました。
父親が死んだ後、姉弟が莫大な財産を受け継いだというバレット家。
執事のフレッチャーは資産と美貌に惹かれて姉マーガレットに言い寄っていました。
強欲執事が黒幕かと思いきや、ロイがフレッチャーを倒した後にまたしても誘拐される坊ちゃん。
叔父のバレットは「あの姉弟には世話になった」と大金を手下に預けて、身代金を払うことにしますが…
何となく予想はついてしまうのですが、黒幕はこの叔父さん。
姉弟を亡き者にしようと、執事をたきつけて遺産を横取りしようと画策。誘拐犯のならず者一味とも手を組んでいたのでした。
最後の最後、畳み掛けるように推理を披露するジェンマが急にジャーロっぽい(笑)。
敵を撃ち殺さず法の手に委ねるところで終わるのが、主人公が過去を乗り越えた感じがしてとても良かったと思いました。
ラストは主人公が1人去っていく「シェーン」エンドかと思いきや、ポニーに乗ってロイを追いかけていくトーマス。
子供もポニーも可愛すぎる~♫
2人並んで馬に乗っているラストの画がロマンチックで、思わぬハートフルエンドに悶絶でした。
残酷描写は極めて少なめですが、坊ちゃんが悪党一味に鞭で打たれる場面が…所々で子供にも容赦ないフルチ(笑)。
トーマスを匿った修道士たちが惨たらしく殺されている場面もホラーちっくで、アンチクライストなフルチらしい一幕。
音楽は「荒野の処刑」と同じくビクシオ&フリッツィ&テンペラで、優しいメロディの主題歌がノスタルジックな雰囲気。
ジェンマはやはり軽やかな身のこなしのアクションが格好よく、子供にカードマジックを見せる場面は爽やか。
姉のマーガレットがヒロイン枠かと思いきや、男女の色恋を無理に入れずに子供とのドラマに絞ったのが大正解。
目のズームアップがしっかりとあるのには、思わずニンマリしてしまいました。
フルチのマカロニ3作品、それぞれカラーが違っているのが凄いし、このあとに撮るのが「サンゲリア」というのもまた凄い…
個人的にはホラー色の強い「荒野の処刑」がやはり飛び抜けて好みでしたが、それぞれよく出来ていていい作品でした。