今月8日から公開されているダリオ・アルジェントの動物3部作。
1番みたかった「歓びの毒牙」を先週鑑賞できたけど、あとの2作もみたいなあ…でも時間的にどっちか1本しかみれなさそうだなあ…果たしてどっちを選ぶべきか…
「わたしは目撃者」は昔ビデオで見て、その後DVDで鑑賞。
磨きのかかった殺人シーンが楽しく、合間に挟まるカーチェイスシーンなども華麗でユニーク。
けれど全体的にはかなりとっ散らかっていて、面白ポイントが点で味わえる作品といった印象。
「4匹の蝿」は長いことずっとみれていなくて、数年前にDVDで初鑑賞。
ジャーロから超自然の世界へ…アルジェントの進化を感じられるような作品だった気がします。
よく分からないところも多々あったものの、病みまくり犯人の動機が面白く、ラストシーンが美しかった記憶。
目撃者と蝿、みるならどっち!?蝿でしょ…!!…ということで「4匹の蝿」を劇場で味わって来ました。
入場特典のポストカード、いただけました♫
しかし改めて観ると蝿もかなりとっ散らかった作品だった(笑)。
妻との不和、何者かに監視されている恐怖感…孤立感溢れる主人公かと思いきや、頼りになるホームレスの友人が出てきたり、無能かと思われたオネエ探偵が一生懸命捜査してくれたり…不穏さと明るさが奇妙に同居していて、チグハグ感は否めない印象。
映像的には面白いシーンがいっぱいあって、飛ぶ蝿と謎の心臓が不安感を煽りまくる演奏シーンからかなり攻めててユニーク。
車移動できないはずの道を突き進んでいく、探偵事務所を訪れるシーンのカメラワークも面白い。
ハイライトはやっぱりメイドが殺されるシーン。
不条理感が極まっていて、のちの「サスペリア」「インフェルノ」に通じるものを感じます。
どっかにお出かけしたとき急に人気がなくなってて、「あれ、もうこんな時間!?寒っ!!」ってなることあるかも(笑)。
自分だけ取り残される恐怖感にシンパシー、それを悪夢の世界として見せてくれる、独創性溢れる映像には惹きつけられてしまいます。
今回2回目の鑑賞ということもあって、余計に闇を感じた犯人の動機と行動。
ニーナのお母さんにも精神的疾患があった…お父さんは男の子を望んでいてニーナを男子のように扱ったというけど、実の父親ではなかった??
結局どういう家族関係だったのか改めてみてもサッパリでしたが、〝似ている〟というだけで代わりに憎しみをぶつけられるのは理不尽で恐怖。
ミムジー・ファーマーとアルジェントの元奥さんがそっくりだったというエピソードを知ると、どんな気持ちでこの映画つくってたんだろう…実生活で抑圧されてた気持ちが漏れ出たにしてもかなり闇深そう…昨年みたアルジェントのドキュメンタリーで元奥さんが怒っていたのにも納得(笑)。
サウジアラビアで斬首刑にされる悪夢のシーンは主人公の罪悪感から来る巧みな心理描写…かと思いきや、最後に急に予知夢だという話になって、これまた突飛。
でもこういうスピリチュアルな描写が以降の作品に上手く昇華されていて、その片鱗が伺えるようでとても面白かったです。
音楽は今作もモリコーネ。
アルジェント×モリコーネの組み合わせで自分が1番好きなのは「スタンダール・シンドローム」かも…本作の音楽は大人しめの印象でしたが、ラストシーンに流れるメロディと映像は残酷で美しく、素晴らしかったです。
なんだかんだ見所の多い作品で、アルジェント作品の中で回数を観ていなかったというのもあってか、新鮮な気持ちで大いに楽しむことができました。
今回もトークイベントのある回に参加することができて、山崎圭司さんと伊東美和さんが登壇。
すごく腑に落ちるというか、なるほどーとなるお話が多く、とても楽しく拝聴させていただきました。
まとまりはないけどデビュー作のあとの2作は実験的なこと、やりたいことをやってそれがサスペリアPART2に続いている…というのに納得。
そして笑いのセンスがコテコテというか、ヒッチコックのような尖ったセンスがないというのにも納得で、確かに棺桶屋のシーンとかディオが出てくるときのハレルヤの曲とか、古くてダサい感じだった(笑)。
私生活が反映される監督だという考察も面白く、パートナーとの出会いがあったとはいえオカルトを信じてないのに「サスペリア」を撮れるなんて凄いなあ…
「歓びの毒牙」の元ネタになった「通り魔」、マリオ・バーヴァの「知りすぎた少女」など、興味深いお話をたくさん伺えて、またアルジェント作品をみたくなる、とっても楽しい時間でした。
動物3部作…「サスペリアPART2」をはじめとする以降の作品への道のりとしてみるのも面白いし、どこか違う世界に旅に出たような心地になるのも楽しいし、やはり見応えのある作品。
劇場でみることができて感激でした☆彡