どうながの映画読書ブログ

~自由気ままに好きなものを語る~

「核戦士シャノン」…超能力者と怒りのデスロード!!人間讃歌のラストに悶絶するイタリア製B級SF

ジョー・ダマト監督による、83年のイタリア製SFアクション。

サンゲリア」の旅の仲間、「ビヨンド」で死体に脳波計をつけていた謎の医者…フルチ作品の常連俳優アル・クライヴァーが主演だからか、先日発売されたフルチ本で大きく取り上げられていて面白そうだったのを初鑑賞。

バトルランナー」と「マッドマックス2」と「ニューヨーク1997」を混ぜ合わせたような内容ですが、テンポよくアクションが続く快作。

時々ホラーな場面が出てきてニッコリ、ラストシーンは謎のカッコ良さ…!!

チープだけどとても楽しい映画でした。

 

◇◇◇

2025年…核戦争により荒廃した世界。

人々は「デスゲーム」と呼ばれるゲームに熱狂していました。

その一方で、核汚染により突然変異の人類が誕生。

その中でも人の心を読む知的ミュータントたちは政府の脅威になると秘密裏に殺害されていました。

デスゲームの連続優勝者のシャノンは、ある日ゲーム中にテレパスの女性と出会います。

「自分たちミュータントを市外まで送り届けてくれれば、受け取り主が金塊を渡す」…シャノンは力になる仲間たちをスカウトし、200マイル先の町をゴールにトラックを出発させますが…

 

ハンター役3人が翌朝までに獲物役を殺すというデスゲーム。

設定が凝っていて、全編この調子で行くのかと思ったら、3人の刺客を立て続けに倒してあっさりエンド(笑)。 

序盤は「バトルランナー」に雰囲気が似ていますが、公開年はこちらが先のようで…

バトルランナー」にパクられたと主張していたフルチの「未来帝国ローマ」もあるし(笑)、デスゲームものの先駆エリオ・ペトリ監督の「華麗なる殺人」もあるしで、意外にイタリアの得意ジャンル!?

隙あらば栄養ドリンクのCMを挟んでくる番組の奇天烈さなど、いい具合にディストピア感が出ていました。

 

デスゲーム中にテレパスの女性・リリスと出会うシャノンですが、ロケを封鎖せず全く同じ場所で超能力者狩りが行われているのがカオス。

直接脳内に語りかけてくるテレパスに対し、心を読んでもらって普通に返事を返している主人公も超能力者にみえてきます(笑)。

 

シャノンはリリスの依頼を受けることにしますが、2日後に200マイル先の町へ行かなければならないというのに、悠長に仲間集め。

眼帯にロングコートのおっさん、ナイフ投げの達人、ガタイのいいデブなどをスカウト。

空手の達人で〝忍者〟と呼ばれる日本人も仲間に加わりますが、銃をぶっ放しまくりで全然忍者してない(笑)。

そして冒頭のデスゲームでシャノンに敗れた積年のライバル・カーナックも、主人公一行に纏わりつきながら共闘します。

 

トラックにワイブズたちを積んだ「怒りのデスロード」の如く、テレパスたちを荷台に詰めた車が出発…!!

政府軍に追われる展開になるかと思いきや、全く関係ない集団と出会しては戦闘を繰り返す珍道中がスタートします。

 

最初に出会すのは、黒い布を被った盲目の男たちの集団。

目が見えていないはずなのに一行を果敢に攻撃。

なんと彼らは捕えたテレパスを利用し、視覚イメージを全員で共有していたのでした。

この場面は撮影の技もあってか、敵が大人数にみえて一大バトルシーンに。

黒服集団が問答無用で襲いかかる光景は、走るゾンビもののような異様な空気が醸し出されています。

捕虜のテレパスを救助するのかと思いきや、斧を投げて脳天直撃させる薄情な主人公にはびっくり(笑)。

 

さらには「マッドマックス2」のようなバイカー集団に遭遇。

彼らの中には猿や魚人に似た異様な見た目の者たちが…

超能力を持たない新人類の中には、原始への後戻りをする者がいて、エラやウロコが生えてくる者もいるのだと言います。

リリスがバイカー集団に攫われてしまいシャノンが救出に向かいますが、魚人男の手篭めにされてしまうリリス

ヒロインが犯される凄惨な展開なのに、その後何事もなかったかのように話が進んでいくのにびっくり。

それにしても同じミュータントなのに、超能力のない者は醜くて仲間になるわけでもない…なかなかシビアな世界観であります。

 

過酷な旅の中、スカウトされた仲間たちが1人ずつ命を落としていきますが、ガタイのいいデブの死に様だけなぜかホラー。

体を壁に埋め込まれて拷問されていたのを、心を読んだリリスが「殺してくれと言っているわ」と言い、カーナックが首をへし折って楽にしてやりますが…

捻れる首といい、滴る血といい、このシーンだけ妙な力の入れ具合(笑)。

 

最後には追ってきた政府軍とバトルになるも、念動力を持つ子供サイキッカーが無双。

シャノンが自分の心を少年に読ませることで相手を攻撃…という描写ですが、突っ立っているだけにしか見えない主人公、最後に活躍しなくていいのか(笑)。

サイキックパワーで敵の頭を自ら撃たせて血が飛び散るなど、ちょいちょいホラーなシーンが挟まります。

 

一行はようやく約束の地に辿り着きますが、迎えに来るという人間は本当に味方なのか、果たして金塊はもらえるのか…もう一悶着を期待してたら、普通にヘリのお迎えが来て終わりとめちゃくちゃアッサリ。

「あなたも一緒に来て」とリリスの誘いを受けるも、「君は未来の人間だ、俺は過去の人間だ」と言って誘いを断るシャノン。

台詞が渋くて格好いい…!!

 

1人に残されたシャノンの下に、死んだと思われていたライバル男・カーナックがやって来ます。

いつぞやの勝負の続きを…ナイフを取り出しバトルをおっ始める2人。

心を読めなくても主人公には心通じ合う好敵手がいた…!!

突然画面がフリーズし、そこから流れるエンドロールがめちゃくちゃカッコいい…!!

 

テレパス女性は「あの人はあなたを殺そうとしている」とカーナックを警戒していたけど、理屈では説明できない人間の絆、不思議な感情の結びつき…不完全で愚かだけれど刹那的美しさを感じる男2人の姿に悶絶。

過去に生きる男、それもいいじゃないか…!!「ワイルドバンチ」のような寂寞感をたたえつつも朗らかさに満ちていて、最高にシビれるエンディングでした。

 

戦闘シーンで毎回流れる勢いのある曲も耳に残ってなんだかゴキゲン。

チープでとっ散らかってるようで意外とまとまりがあって見やすく、鑑賞後にジワジワといい映画を観たなーという気分になる、不思議な魅力の1本でした。