どうながの映画読書ブログ

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「死神ジョーズ・戦慄の血しぶき」…サメときどきジャーロ!?まったりしたイタリアの偽ジョーズ

DVDタイトルは「ジョーズ・アタック2」になっていますが、VHS時代には「死神ジョーズ」の名でリリース。

ジョーズ・アタック2 [DVD]

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84年の作品ですが、88年の「ジョーズ・アタック/死海からの脱出」に便乗してあとから付けられたタイトルのようです。

2010年には「シャークトパス」というタイトルでリメイクもされているらしく、知る人ぞ知るサメ映画!?

「死神ジョーズ」というタイトルだけは知っていて、こないだ「ジョーズ」をみたときにふと思い出し、未見だったのを初鑑賞してみました。

死神ジョーズ

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監督はランベルト・バーヴァ。ケレン味は今ひとつで、意外と小ざっぱりまとまった仕上がり。  

全長12メートル、口の大きさは2メートル。30ノットの速度で進み蛸の触手とイルカの知能を持つ…これだけ聞くとめちゃくちゃ面白そうなのに、とんだ期待外れ(笑)。

脱力させられるゆるーい1本でした。

 

◇◇◇

カリブ海の島で水死体が発見。

時を同じくして海底から発せられた奇妙な音声により、水族館に住む生き物たちが錯乱する珍現象が起こっていました。

イルカ調教師のステラとその上司ボブが調査に乗り出しますが、海で見つかった死体にはサメのものとは思えない大きな歯形が残されていました。

謎の生物の行方を追うため、ステラたちはソナー装置を開発しているピーターに協力を要請することに…

 

3人で海に出て生物の行方を追うものの、探知映像ばっかり映して一向にモンスターが登場しません。

(ずっとこんな感じww)

スピルバーグの「ジョーズ」も機械が故障したため、あえてサメの姿を出さない演出になったという逸話がありますが、この映画はそんなレベルを遥かに超えている…(呆然)

 

サメの代わりに挟まれる、男女の色恋沙汰。

ステラとボブが恋人同士なのかと思いきや、ステラとピーターがいい感じに…でもピーターにはサンドラという年若い恋人がいて浮気者っぽい??…さらにはジャネットという古生物学者の女性まで登場…人間関係がコチャコチャしていて困惑(笑)。 

1人タイタニックをキメるヒロインのステラさんは、なかなか攻めたデザインの水着を着ていて無駄にドキドキさせられます。

 

一方、町では海洋研究所で働く女性が浴槽で変死する事件が起きていました。

「タクシーを呼んでおいて風呂に入ると思うか?」…謎の名探偵ぶりを発揮する保安官(笑)。

女性は何者かが雇った殺し屋に殺害されており、知ってはいけない秘密を知ってしまったようでした。

最早モンスターパニックではなく空気は完全にジャーロ(笑)。

次々に謎めいた登場人物が現れて不思議と退屈はしません。

 

そうこうするうちにやっとモンスターが登場、船を漕ぎに出ていた民間人が襲われて犠牲になってしまいます。

化け物の触手のみを映して襲われる様を描くところはなかなか上手く撮れていて、蛸のような質感、ギザギザの歯など部分的に映る姿は大変魅力的。

怪物の口内から映したショットも素晴らしくロマンを感じさせます。

しかし本家「ジョーズ」と違ってデカさの恐怖が全く伝わって来ないのと、全体像がイマイチよく分からんままなのが非常に残念です。

 

再び海に怪物狩りに出るステラたちでしたが、同時に謎の殺し屋にも襲われて危機一髪…!!

殺し屋を雇って怪物退治を阻止しようとしているのは一体誰なのか…

希少生物を捕らえようと企む野心家のウエスト博士が黒幕かと思いきや、なんと犯人はその部下のデイヴィス。

「モンスターを造って海の乱開発を防ごうと思った」…動機がめっちゃエコ(笑)。

こんな映画なのに意外と深いテーマが…

さらにはデイヴィス博士がウエスト博士の妻・ソニアと不倫中だったことが明らかになります。

「君は夫と愛人に同じ時計をプレゼントするような無神経な女だ」いきなり展開される中年夫婦のドロドロ。

やっぱりジャーロだったのかよ(笑)。

序盤から思わせぶりに腕時計が映し出されていて、ウエスト博士を犯人だと思わせるミスリードをしっかりと用意。

意外と丁寧に作っていてストーリーに破綻は少ないですが、なぜこれをモンスターパニック映画にぶち込んでくるのか…(呆然)

 

それでも終盤には化け物と町の皆が対決する偽ジョーズらしいクライマックスがしっかりと展開。

町の保安官たちが爆薬をあちこちに設置しますが、怪物が自己再生能力を持っていることが判明。

散り散りになるとその分無限再生してしまう…

急遽作戦を変更し、ピーターが録音した生物の音声を使いサメを入江まで誘い出して燃やし尽くすことに。

カリブ海にはみえない、緑色の池みたいな場所で「地獄の謝肉祭」の如く火炎放射器が活躍するクライマックスの画だけはなんかめっちゃ好きでした。

 

ラストはやっぱりバッドエンドがよかったなあ…観終わってみるとジョーズの便乗映画という感じはあまりせずマッティ&フラガッソと比べると勢いに欠けるなあ…

物足りなさもありますが、陽気なプログレ曲といい、謎にジャーロな空気感といい、イタリアンホラーをみた満足感は残りました。

脚本の原案にはセルジオ・マルチーノ、ルイジ・コッツィが関わっていたそうで…「ラストコンサート」といい「エイリアンドローム」といい、コッツィの映画はいっつもヒロインの名前がステラやね…

 

「死神ジョーズ」というイカした邦題には名前負けしちゃってますが、海洋パニックものを撮ろうとした真面目さはなぜだか伝わってきて、ゆるーく楽しめる1本でした。