どうながの映画読書ブログ

~自由気ままに好きなものを語る~

「雨に唄えば」を午前十時の映画祭で鑑賞してきました

気になる作品がたくさん公開されている今月。

またまた旧作になってしまいますが、自分が人生で出会った最高の映画の1本、「雨に唄えば」を午前十時の映画祭にて鑑賞してきました。

普段ホラーサスペンス系の映画をみることが多く決してミュージカル好きではないのですが、この作品は衝撃的に面白かった記憶。

初めてみたのは確か中学1年生の頃…なぜ選んだのか全く憶えてないけど家族でビデオ屋さんに行った際に目立つスペースにあったからかレンタル。

家族全員初鑑賞でしたが、「なんだこの映画は!?」と騒然となった思い出があります。

それまでにも「ウエスト・サイド物語」や「サウンド・オブ・ミュージック」など大作ミュージカル映画をみたことはあったけど、それらとは明らかに違う底抜けに明るい空気。

まずコメディとして笑いがてんこ盛りなのが面白く、「サイレント時代の終焉」という映画史の一時代が描かれていてストーリー自体に引き込まれるものがあった。

ミュージカルは歌が中心でお話はやや退屈…というイメージが大きく覆されました。

 

ただそうは言っても歌と踊りがメインではあって、でもこれがまたとんでもなく凄い。

サーカスの曲芸でも見に行った気分になる位のびっくり仰天のパフォーマンスの連続。

ジーン・ケリーの名前は聞いたことがあったけど、それよりも親友コズモ役のドナルド・オコナーが飛び跳ねながら歌い踊る”Make 'em Laugh”が圧巻で、誰やねん!!となりました(笑)。

「いきなり歌いはじめるのに付いていけない」などミュージカルは好き嫌いがハッキリ分かれるジャンルだと思いますが、本作はお話がしっかりしていて、ジャッキー・チェンのアクションばりに目を見張るダンスが次々に登場。

普段映画をあまりみない夫に昔500円の安いDVDを貸してみせたら「こんな凄い映画はない!!」と大絶賛されたこともあって(笑)、苦手な人にも薦めてみたいと思ってしまうミュージカル。

とにかく衝撃的に面白かった作品でした。

 

今回は劇場にて初鑑賞、このチャンスを逃すまいとスクリーンが大きめな池袋まで観に行ってきました。

オープニングで傘さした3人が振り返って踊るところからもう泣きそう、劇場でこれをみられる喜び。

レッドカーペットに珍妙なセレブが登場する冒頭から自分は一気に心掴まれたのですが、明るさと共にどこか尖った視点が同居しているのがこの作品の1つの魅力かもしれません。

その後に続く隠れ苦労人・ドンの下積み時代の回想の数々…セレブの半生が嘘まみれで面白い(笑)。

主人公はちょっと鼻持ちならない尊大な感じもしますが、そんなところも含めてジーン・ケリーがハマり役。

改めて大画面でみるとキレッキレのタップダンスの中びくともしない体幹が凄まじく、体操選手のようなボディで物凄い身体能力。

ドナルド・オコナーの”Make 'em Laugh”もやはり圧巻、ワンカットで撮っているようで〝今まさに眼前で繰り広げられている〟という臨場感に満ち満ちていて大迫力。

顔の表情筋まで人間離れ(笑)、芸達者っぷりにただただ圧倒されます。

 

大スターと駆け出し女優の恋を描きつつ、同時に映し出される映画業界のバックヤード…「ジャズ・シンガー」の大ヒットにより業界に大革命が起き、トーキー映画に移行するため皆で四苦八苦。

大人になってみると〝時代の変化に付いていけないものは淘汰される〟というのが思った以上にシビアに感じられます。

トーキーのプロモーション映像をみた人たちの冷ややかなリアクション…いつの時代も新しいものは最初は敬遠されるものなのね…(最近の映画に付いていけてない者としては何とも突き刺さる内容)

煌びやかな世界の裏で繰り広げられる意外にも泥臭い努力の数々に驚かされつつ、スタジオ一丸となって必死にものを作っていく過程にワクワク。

スターや製作陣が1つの会社に強く結びつけられていた当時の空気感も伝わってくるようでした。

 

そして何よりも圧倒的インパクトを残すのがヒール役のリナ。

話せず歌えず踊れずで、皆が手を焼きますが、まさに時代に淘汰されし者。

サンセット大通り」や「アーティスト」をみるとこのリナのことが思い出されたりして、ある意味悲劇的な立ち位置のキャラクターだと思いますが、振り切った見事なコメディエンヌっぷりが素晴らしい。

人によって態度を変える意地の悪さ、「私は人間じゃない、スターよ」と言ってのける太々しさ(笑)…憎たらしいけど憎めない悪女。各キャラクターとの掛け合いが楽しく、あの音ズレのシーンも初めてみたときには大爆笑。

演じたジーン・ヘイゲンさんは実際は穏やかな声の持ち主で甲高い声の方を作って出していたらしく、この方も芸達者。助演女優賞ものの名演技でした。

 

ミュージカルパートも劇場でみると一層魅力的。

ブロードウェイメロディーのシーンだけ見る度いつも長く思っていたけど、劇場でみるとあっという間に感じられました。

緑のドレスの女性の妖艶な美しさ…長いヴェールが風になびきながら踊るバレエダンスもどうやって撮ったのか何気に凄い。

ここだけ完全に別パート、騎士物語にこれが挟まってくるってどんな映画やねん(笑)となりつつ、虚構の中の虚構、現実と映画内映画を行き来するのが大胆で豪華な構成でした。

 

そして最も有名な「雨に唄えば」のナンバーは、鬱々しい雨の日に思い出したくなる屈指の名シーン。

こちらも勿論素晴らしかったのですが、その前の”Good Morning”が大好き。

ピンチを一転してチャンスに…新しい朝が来れば気分はハッピーだ…!!

3人のダンスがキレッキレで揃って階段を降りてくるところなど、逐一心の中で拍手したくなってしまいます。

最後のひと展開までストーリーがしっかりと面白く、影の功労者だったヒロインの存在が皆に明かされるクライマックス。

新たなるスター誕生の瞬間ですが、映画は色んな人の働きや支えがあって作られているもんなんだなーとなって、いいエンディングだなあと思いました。

 

この作品が52年の公開当時には埋もれていてさして評価されなかったというのにはびっくり、本当に分からないものですね…

今回の上映は「ウィキッド」効果なのか若いお客さんが多くて意外、大変嬉しく思いました。

改めてみても圧巻、ミュージカルというジャンルを超えた最高の映画。

劇場で堪能できてめちゃくちゃ幸せなひとときでした♫