どうながの映画読書ブログ

~自由気ままに好きなものを語る~

フルチの犬映画「白い牙」…西部劇+動物アドベンチャーな意外と優しい1作

昨年購入したフルチ本でも取り上げられていたフルチの犬映画!?1973年制作「白い牙」を初鑑賞。

安い輸入版DVDを発見して購入したのですが、なぜか同時収録されているのはフルチの撮った続編「名犬ホワイト 大雪原の死闘」ではなく、別監督の撮った第3弾という謎DVD(笑)。

2作品が1枚のDVDに収録されていて画質はVHS以下、英語字幕もなく画面が妙にスクイーズされているという仕様でしたが、それでも何とか鑑賞。

そり犬を題材にした「野生の呼び声」で知られるジャック・ロンドンの作品が原作らしいのですが、西部劇に動物アドベンチャーが加わったような明るめの作風。

犬が可哀想なシーンが多いと嫌だなあと懸念していましたが、残酷描写は思ったより控えめ。主演のフランコ・ネロの影が薄い(笑)。

全体的には爽やかな印象であるものの、所々にフルチの反骨精神が感じられるところもあって、楽しんでみられる作品になっていました。

 

◇◇◇

1896年カナダ。

先住民族のチャーリーとその息子ミッツァが1匹の野生のオオカミに出会いました。

危険な動物だと父親はオオカミを遠ざけようとしますが、少年とオオカミは心を通わせるように…

白い牙を持っていたことから2人はオオカミを〝ホワイトファング〟と名付けます。

ある日ミッツァが氷の池に転落、ファングがチャーリーに危機を知らせにやって来ました。

凍傷で重体となった息子を救うため、父親はドーソンシティへ彼を連れて行くことにします。

一方ジャーナリストのスコット(フランコ・ネロ)も執筆のため同じくドーソンシティを訪れていました。

腐敗した町の異様な空気を嗅ぎつけるスコット。町はビューティー・スミスという男に牛耳られており、スミスは横暴の限りを尽くしていました。

治療のため町を訪れていたチャーリー親子たちはスミスに遭遇、ファングがスミスの闘犬を打ちのめしてしまいます。

「ファングを高値で買い取りたい」と申し出るスミスでしたが、チャーリーは犬を売ることを拒否。

するとチャーリーが衆人環視の中スミスの部下に刺殺されてしまいます。

ただならぬ状況を知ったスコットはスミスの悪事を摘発しようとしますが…

 

犬が主人公なのか、少年が主人公なのか、フランコ・ネロが主人公なのか…主軸が定まっておらず、マカロニ的ストーリーが展開しつつピンチの度に突然犬が出てくるという構成は雑な感じが否めません。

けれど雪原から森林、町の酒場までロケーションをフルに活用しながらテンポよく話が進められていき、フルチの職人監督としての腕が如何なく発揮されているように感じました。

 

オオカミというけどジャーマンシェパードにしかみえないファング(笑)、少年を心配してずっと後を追いかける様が健気で愛らしい。

闘犬シーンやクマと戦わせられるシーンが登場しますが、画質が粗かったせいもあるのか思っていたより痛々しく映りませんでした。

所々で着ぐるみを使っているようで、編集で上手く切り貼りしている印象。

 

フランコ・ネロはガンマン役かと思いきや、やたら腕っぷしの強いジャーナリスト(笑)、あまり似合っていない明るめの金髪姿で登場。

憎たらしい悪党、町の権力者スミス役はジョン・スタイナーが好演。

スミスの子飼いとなったアル中の事なかれ主義の牧師役は「フレンチ・コネクション」のフェルナンド・レイが演じています。

町の人に「異人種を攻撃するな」と説教を垂れる一方、殺人を目撃していてもダンマリ。

バーの歌手として働いている娘との親子関係も皆には知らせず秘密にしている…と一筋縄では行かない聖職者。

フルチのアンチクライスト観!?が滲み出ているようで印象的なキャラクターでした。

 

ヒロイン枠ではシスター・エヴァンジェリナという女性も登場。

町に病院を建てようと奮起、負傷者や重病人を次々に手当てして、工事現場にも堂々と参加、この眉毛なし美人シスターが有能すぎる(笑)。

十字を切って祈ろうとしたのを途中でやめて子供を抱きよせるところがよかったです。

 

クマとの戦闘で傷を負ったファングを救出したスコットは、スミスの横暴を知りミッツァの父親を殺した犯人を捕らえようと政府に通報。

そんなスコットを邪魔者に思ったスミスは下手人を放ちますが、名犬ファングがそれを阻み見事に犯人を成敗します。

住民を騙して金を奪っていたスミスは悪事がバレつつあるのを知って、別の土地にトンズラすることを決意。

思いを寄せていた牧師の娘・キャロルを無理やり連れて行こうとしますが、揉み合った末キャロルが机の角に頭をぶつけて死亡。

(突然挟まるホラーなカットww)

娘を亡くした牧師が呪詛を吐くように悪事をぶちまけるという、子供向け動物映画とは思えないシーンが度々挟まります(笑)。

 

町民たちが逃げたスミス一味を追跡する中、先陣を切って突き進んで行くスコットとファング。

しかし追跡中にダイナマイトが爆発し川の堤防が決壊、悪党たちが散ると同時にファングも行方知れずになってしまいます。

その後…スコットとシスターとミッツァが3人家族のような佇まいで蒸気船に乗って町を出発しようとしていると、そこにファングが後を追ってやって来ました。

向こう岸から犬かきで必死に泳いでくるワンちゃんが可愛すぎる…!!

ファングを発見し川に飛び込むフランコ・ネロ…犬と友情で結ばれてたのは少年の方じゃなかったの!?ちょっと唐突な感じもしますが、抱き合う1人と1匹の姿が感動的。 

カルロ・ルスティケッリの音楽もぴったり。蒸気船が町に到着するシーンなど、美しい場面が所々にあって、小粒ながら見どころはしっかりとある作品に思われました。

 

様々なジャンルを手掛けていたフルチ、意外とファミリー向け映画テイストもイケる優しげな1本。(でも時折残酷さが垣間見えてそこがいい)

続編と併せてみれる機会を改めて切に願うフルチ作品でありました。