ジュリア・ロバーツ主演、キャメロン・ディアス共演の97年公開のラブコメ。
身勝手な登場人物ばかりでツッコミどころ満載、決して秀作とは言い難いのですが、なぜか心に残っている1本。
他人の結婚式って楽しくないことが多い…っていったら暴言だけど(笑)、招待客ほったらかしの余興を冷めた気持ちでみてしまったり、式には招待されず数合わせ的に呼ばれたような気がする二次会だけの参加にモヤモヤしたり…
そんな自分の隠キャマインドと嫉妬心メラメラのイタい主人公の気持ちに重なるものがあったからかもしれませんが、20代の頃に見直していいなあと感じ、それ以来お気に入りになった作品。
素直に気持ちを伝えることが大事とは言うけれど、タイミングを逃して後悔に駆られる主人公の気持ちも分かる気がするなあ…人生悲喜交々を感じさせるドラマがあって、粋なラストシーンにニッコリ。
粗も多いけれど節々に美しさを感じる作品でした。
◇◇◇
「28歳までお互い独身だったら結婚しよう」…別れた元彼とそんな約束を交わしていたジュリアン。(この地点でもう付いていけないw w)
28歳を目前としたある日、マイケルから連絡を受けて舞い上がるジュリアンでしたが、「20歳の女子大生と結婚することになったから親友の君に付き添い人をして欲しい」と思わぬを依頼されることに…
いまだにマイケルを愛している自分の気持ちに気付いたジュリアンは、あの手この手で結婚を破談にしようと企みますが…
大筋はスクリューボールコメディ的というかクラシカルな趣のドタバタラブコメ。
フィアンセの女子大生・キミー役を演じているのがキャメロン・ディアスですが、離れたところからこっちにやって来るときの余りのスタイルの良さに撃沈(笑)。
天真爛漫なお嬢様だというキミーですが、出会って5秒の主人公に「姉ができたわ」などと言いながら抱きついてくる…ジュリアンがマイケルの元カノなのを知りつつ「あなたは特別な人だからブライズメイドをやって欲しい」と笑顔で頼んでくる…距離感バグってて実際こういうタイプの人と付き合うのは結構大変そう(笑)。
巷ではキャメロン・ディアスの一人勝ち映画みたいに言われているらしい本作ですが、自分が肩入れしてしまうのは嫌な女のジュリア・ロバーツの方。
臆病でなかなか自分の本当の気持ちを外に出せない捻くれ者。過去を悔いては執着、自分とは明らかに違うタイプのナチュラル天然愛され女子に嫉妬しまくり…人間臭くてキミーよりもジュリアンの方が分かるなあと思って自分はみてしまいました。
マイケル曰くジュリアンはあまり感情を表に出してくれなかったけど、キミーは愛を口にするのを躊躇わずグイグイ来てくれるのが嬉しかったとのこと。
想いを口に出すのって大事、素直になれないと損してしまうことが多いのかも…
家族でも友人でも好意は思い切り伝えた方がきっと幸福度は高くて、それを面倒臭がったり、人の優しさにあぐらを掻いていると人間関係って簡単に終わってしまうこともあるよね…
年を重ねると共にこの映画で描かれているものが一段と胸に染みてくるような感じがします。
マイケルの仕事に付いて行くため、大学を思い切って退学するのだというキミー。
相手に合わせられるだけのゆとりがあるのが凄い、でもやっぱり勿体なくないだろうか…外野は勝手に色々思ってしまうけど、結婚って勢いが大事というのもこの世の真理な気がしました。
しかしここから主人公のとる行動が身勝手すぎてドン引き。
フリーのスポーツ記者であるマイケルにお偉いさんのキミーの父親がコネで会社にポストを用意している…マイケルが嫌がりそうなことをキミーが仕組んでいると誤解させて2人の仲を裂こうとするなど、やり口が陰湿(笑)。
お父さんの会社に侵入して勝手にパソコンメールを送るなど、倫理観ゼロのやりすぎな行動にも唖然。
そこから拗れた2人をみても悪びれることなく、さらに追撃して結婚式をダメにしようとするなど、擁護できない性格の悪さ。
傷ついた2人を見て罪悪感に苦しむシーンなどを入れてくれれば、もう少し主人公に感情移入できたと思うのですが…
しかし男のマイケルもかなり難がありそうな人物。
元カノとの思い出トークで盛り上がって婚約者を置いてけぼりにしたり、カラオケが好きじゃないと言ってる彼女にマイクを向けたり…こんな男のどこがいいのよ!?と思ってしまう無神経さ。
ジュリアンとは〝別れても男女の枠を超えた親友〟だったらしいのだけれど、あの指輪の外し方はなんなん(笑)…態度が思わせぶりすぎる。
2人の過去エピソードも希薄で、特別な関係性とやらがいまいち伝わって来ないのが残念でした。
そんな中一際光り輝いているキャラクターは、ルパート・エヴェレット演じるジョージ。
なんとしても元彼を略奪したいジュリアンは、ゲイ友達のジョージを自分の婚約者だと偽ってマイケルを嫉妬させる作戦に打って出ますが、このジョージが誰よりも大人で格好いい。
肉体関係には絶対にならずに女性の感情に理解を示してくれる〝女にとって都合のいいゲイ友キャラ〟以外の何者でもないですが、とにかく会話の切り返しがスマートでユーモラス。
アドバイスがどれも的確でこんな友達欲しいわーとなってしまいます(笑)。
散々悪質な嫌がらせをしたあと、なんでこんなタイミングで!?という時に一世一代の告白をして盛大に散るジュリアン。
言わぬが花なこともありそうで難しいけど、後悔が残らないよう想いを伝えることが出来てよかったのかな…
式の終わりにマイケルが彼女を抱きしめに戻るところには救いを感じて、2人の絆が垣間見えたようで良かったです。
それにしても新郎と花嫁がさっさと会場を去ってしまい、1人残されるジュリアンのなんと寂しいこと。
親友の幸せを願って送り出せたという結末ではありますが、若い青春時代が全て去って行ってしまったかのような切ない余韻。
おまけに周りが知らない人だらけの結婚式会場に1人ってもう堪らんよね…と思っていたらここから神エンディングに突入。
突然携帯電話にかかってくる着信音…楽曲隊が聞き覚えのある音楽を奏で始めると、そこにはタキシードに身を包んだジョージの姿が…
傷心の親友に寄り添おうとわざわざ舞い戻って来てくれるなんて、どんだけ優しいのよ…
(もうお前が結婚してくれ)
愛する人を失ってしまったビターエンドではあるのですが、去るもの追わず、終わってしまったことはしゃーない。今自分の傍にある幸せに目を向ければそれはどれほど尊いものなんだろう。
後悔することもあるけれどそれでも今この瞬間を大切に生きよう…そんな気持ちにさせてくれるエンディングが一際美しく胸に残りました。
オープニングからカラオケシーンに至るまで登場する楽曲が印象的な本作。
クライマックスでも掛かるバート・バカラック作曲の「アイ・セイ・ア・リトル・プレイヤー」は様々なアーティストにカバーされている有名曲ですが、レストランでジョージが歌い上げる場面は屈指の名シーン。
歌詞の内容が愛する人をずっと想う主人公の心の叫びとも重なっているよう!?
唐突に全員で歌い出すところはミュージカルのようで異様なテンションですが、自分はめっちゃオモロくて笑いました。
他にも印象的ないいシーンがあって、ジュリアンが散々やらかしてホテルの廊下でうずくまっている際に手を差し伸べてくれるポーター役はなんとポール・ジアマッティ。
〝悩みは時と共に去る〟もいい言葉。意外に名言のような台詞があちらこちらに散りばめられています。
ジュリア・ロバーツは我儘そうなイメージもあってあまり好きな女優さんではなかったのですが、こういう嫌な役もカラッと演じられるのがすごいなーと彼女の個性が生きた作品のように思いました。
各キャラクターがもう少し感情移入できるようになってたらもっと傑作に化けたのでは…と所々残念に思われますが、細かいことは気にしない90年代ラブコメの豪快さ。
随所に刹那的美しさを感じて、胸に残る1本でした。