どうながの映画読書ブログ

~自由気ままに好きなものを語る~

「ゴースト/ニューヨークの幻」…一粒で3度美味しい優等生エンタメムービー

ビートたけし絶賛!!

90年公開の作品で、自分は子供の頃テレビ放映で見たのだと思いますが、あの有名な〝ろくろ〟のシーンがあちこちで取り上げられていて、何だか気恥ずかしかった記憶(笑)。

同時期の幽霊もの「愛が微笑む時」を先にみていてVFXに目を奪われ鮮烈、内容も甘め恋愛映画のムードだった「ゴースト」よりこちらの方がお気に入りでした。

でもあるときビートたけしの映画エッセイ「仁義なき映画論」にて大絶賛されているのをみて驚き。

キレッキレの映画論評、大抵の映画がバッサリと切り捨てられているのに、リンチの「ワイルド・アット・ハート」と「ゴースト」はベタ褒めされていて、そんなに面白かったかな…と見直したらとてもよく出来ていて感心。

死と幽霊を描くホラー設定、触れられない恋人を思い続ける一途なラブストーリー、インチキ霊媒師が味方になるドタバタコメディ…まさに一粒で3度も美味しい映画になっていて、そのまとまり方が素晴らしい。

 

主演3人の中ではウーピー・ゴールドバーグが圧倒的に輝いていて、本作でオスカー助演女優賞を受賞。

今みると「モブサイコ100」の霊幻師匠を思い出してしまいますが、インチキ霊媒師がマジもんの霊に絡まれるというネタが鉄板で面白く、掛け合いが最高でした。

監督は「フライングハイ」「裸の銃を持つ男」のジェリー・ザッカーでコメディはお手のもの。

「裸の銃〜」の2作目では堂々自作をパロディ。

粘土がポコチンに見えてしょうがない(byビートたけし)。

志村けんのバカ殿様だったかバラエティ番組でも真似されていた記憶があるのですが、子供心にエロスを感じたというか、エロいを通り越した何かを感じてしまう名シーンでした。


一方脚本は「ジェイコブズ・ラダー」のブルース・ジョエル・ルービンで、「ブレイン・ストーム」「デッドリー・フレンド」など死を題材にした作品を手がけていることが多いような気がします。

本作でも〝気付いたら死んでいて自分の死体を眺めている主人公〟の描写は真に迫っていてなかなか恐ろしい。

駆け出して犯人を追って行ったと思ったら実はもう霊体になっていて…というところの見せ方が秀逸で、ミスリードに騙されてビビりました。

〝黒い影によって地獄らしき場所に連れられていく〟悪役の最期もホラー映画のムード。

(ガラス板で処刑という死に様も残酷!!)

悪いことをしたら必ずその報いがある…ある種子供の童話のような結末が強い印象を残します。

監督お得意のコメディ要素と、人死にを描くのが好きな脚本家の持ち味が上手く噛み合った作品だったのかなーと思いました。

 

パトリック・スウェイジ演じるサムは特に肩入れしたくなる主人公というわけでもなく、生前の描写はあっさりめ。

美人の恋人がいるのに浮かない顔、人生の次のステージに踏み出すことに億劫な様子。

「愛してる」と言われても気恥ずかしくて「同じく」としか返せないヘタレ男。

人間いつ死ぬか分からないから悔いのないように今日1日を大切に生きよう…ベッタベタだけど、こういうゴーストものとは相性抜群のテーマ。

飛行機事故のニュースをみるくだりや、吊り上げた彫像をキャッチする無鉄砲な性格など、序盤から不穏さを漂わせる伏線が丁寧なのにも感心してしまいます。

個性の少なめの主人公でしたが、それゆえ万人がみやすく作られているようにも感じました。

 

一体何の陰謀があって殺されることになったのか…容疑者が複数いて謎解きミステリみたいになってたらもっと面白かったのに…と思ってしまいますが、120分強でまとめるには明らかにトゥーマッチ。

登場人物を絞って、〝信じていた友人に裏切られた〟というシンプルストーリーにしたのは英断。

カップル2人+友人1人って組み合わせよくないよね…嫉妬心が動機かと思いきや麻薬の資金洗浄に関わってたかなりダメな奴でびっくり(笑)。

下手人に財布をスラせるだけで殺すつもりはなかったみたいですが、終盤ではモリーにも銃を突きつけていたり擁護のしようがなくて残念…!!

 

映画が一気に盛り上がるのはウーピーが出てきてからですが、まさに嘘から出た誠で霊能力が覚醒し相談所は大繁盛に…

大金を寄付する場面にも爆笑、小切手を受け取ったシスターが掴んだ手を離さないのもよかった(笑)。そのまま「天使にラブソングを…」が始まっても違和感がありません。

 

その他では主人公が現実世界の物体に触れる練習をするシーンも印象的で、幽霊になっても特訓というのが新鮮。

先輩幽霊のおじさんに教えを乞うことになりますが、なかなか癖の強そうなおじさん。

「俺は突き落とされたんだ!!」と言ってたけど、どうにもアル中っぽくて自分で線路に転落したんじゃないのかな…

亡くなった現実を受け入れられず天国にも地獄にも行かずあのままずっと彷徨っているんだろうなーと、なんともいえない物悲しさの残るキャラクターでした。

 

超常現象を信じられない彼女とすれ違っていくドラマもよく出来ていてドキドキ。

そして1ペニー硬貨が宙を浮くクライマックス。事件が片付いて未練のなくなった主人公の下についに天からのお迎えが…

いつの日からか自分はこういう天国地獄の描写を信じなくなってしまったけれど、童心にかえるような美しいエンディング。

最後に恋人と直接言葉を交わせたの、奇跡というかえらいボーナスだと思ったけど、こんな風にお別れできたらいいよね…

悔いはあるかもしれないけれど、愛する人への想いを胸に、納得したかのように去っていく主人公の姿が感動的でした。

 

先日「サブスタンス」を鑑賞して〝デミ・ムーアの若い頃ってどんなやったかな…〟とふと思い起こして見てみましたが、主人公カップルのキャラクターは良くも悪くも個性に乏しくあっさり。

自分的には「素顔のままで」や「GIジェーン」のようなクセ強映画の彼女の方が鮮烈だった気がします(笑)。

でも「こんな美人の彼女がいたら未練いっぱいで死んでも死にきれんわ!!」と納得してしまう美しさで、美しい映画がよりエモーショナルになっていました。

 

どうでもいいけど、テレビドラマの「フレンズ」で「デミ・ムーアの髪型にして」と頼んだのが勘違いでダドリー・ムーアになってしまう回で爆笑した記憶(笑)。

 

世界のキタノ絶賛も納得…!!

ロマンチックで笑えてドキドキがいっぱい、バランス抜群の文句なし90年代エンタメムービーでした。