今年リバイバル上映された「パピヨン」のパンフにて、同じく脱獄ものとして宇多丸さんが紹介されていた1本。
「網走番外地」のようなシリアス脱獄ものかと思いきや、主人公があまりにもめちゃくちゃで爆笑。全体的にどこか牧歌的なムード。
脱獄してはすぐに捕まり、またすぐに脱走…コントのようなアホらしさで、両津勘吉みたいなメンタリティの主人公が痛快。
ムワッとした昭和の空気感も特濃で、めちゃくちゃ楽しい脱獄ムービーでした。
◇◇◇
終戦後の昭和22年。
植田正之(松方弘樹)は仲間と共謀しヤクの売人であったフィリピン人を射殺。
モルヒネを強奪するも、逮捕され20年の禁固刑を喰らうことに…
植田はすぐに脱獄を決意するが…
アメリカ映画とは全く異なる昔の日本の刑務所の景色。
毎朝囚人は〝かんかん踊り〟と称する謎ダンスを披露。

大股開きでジャンプしながら、真っ裸で大きく口を開け自分の番号を絶叫。
口にも何も隠し持っていないことを看守が確認する一種の身体検査のようですが、恥ずかしくてプライドがへし折られそう。
列をなして順番で湯船に浸かっていく風呂の様子など、ザ・集団生活な刑務所の景色に圧倒されます。
監獄医の診察はかなり雑。

(聴診器をあてずにヨシ!!)
「お前らの95%は仮病だ。バカにつける薬はない」と言い切るなど、人権もへったくれもありません(笑)。
収監されるや否や植田は便所穴から這い出て、腰を痛めながら脱走。
他の脱獄ものにあるような用意周到さはなくあまりにも突発的。
シャバに飛び出ると彼女の下にまっしぐら、何はともあれ体にむしゃぶりつく生命力の強さにびっくり(笑)。
その後刑事に扮したつもりで映画館で片岡千恵蔵の映画をみていたら通報されお縄に…

(どうみても不審人物ww)
警官は撃ってこないと判断するも米軍兵が現れるとたちまち降参、そこはしっかり冷静な主人公に笑ってしまいます。
再逮捕され独房に入れられていると、ベテラン囚人(若山富三郎)が大暴れの植田を一喝。

「何があっても腹ん中で赤い舌出してりゃそれでええやないかい」は名言。
雑居房に戻り、囚人仲間と野球賭博を楽しんでいたら、大事な局面で所内放送が入ってラジオが中断。
これに激怒した囚人の1人・末永(梅宮辰夫)が所内で立て篭もり事件を起こす事態に…
「所長がかんかん踊りして謝って!!」と無理難題を要求、どんだけ恨むんだよ(笑)。
求めに応じて部下を守り、その後しっかり逮捕に踏み切る所長(金子信雄)がなかなかの漢でカッコいい。
一方この一件で末永の度胸を見込んだ植田は、自分のいる房に末永を移動するよう手配。
同じ雑居房入りの岡田とともに3人で脱獄することに…

計画をアシストすべく、かつての仲間が面会中に物を差し入れ。
差し入れ弁当の天ぷらの衣の中に刃を入れる大胆な手法に唖然。でも刃が劣化して使い物にならない(笑)。
鉄格子枠の建て付けが甘いことに気付き、力技で棒を引き抜く作戦に変更。
四つ這い姿勢で仲間を支え、擦り切れる手を動かしながら一週間がかりで棒を撤去。こんなに根性あるのに、なんでそれを実社会で活かせないんだ(笑)。
高塀をロープ1本でよじ登っているあいだ、看守の目を逸らそうと人知れず助けを入れてくれる若山富三郎。
悠然と歯磨きを取りに行く姿がカッコ良すぎてシビれました。
脱獄成功したと思ったら、次のシーンが全員下痢という場面転換が鮮烈。
3人道を違えることになりますが、別れた直後米兵の車に轢き殺される岡田…あまりにも唐突すぎて悲惨な死に様なのに笑ってしまいました。
植田は妹のいる四国へ向かうことにしますが、なんと妹が7歳のとき以来の再会。
夫がフィリピンで戦死、牛解体をしている三国人に土地を貸し身体を売っている妹の暮らしぶりが刑務所よりもさらっと惨くてビビります。

植田は男たちをボコり自らも違法の牛解体に参加し金儲け。
しかし娼館で暴れてしまいまたまたお縄に…
「わしゃホンマにバカじゃ」って一応自覚はあるのね…
路地裏を抜け、豪邸に逃げ込み、飾ってあった甲冑を着込んで目をくらますシーンは完全にコント。
刑務所に戻ると、同じく再逮捕されていた末永と再会。
同じグループのヤクザ囚人に目をつけられ大怪我を負ってしまった末永。
「毎日俺の肩を揉め」って何かの隠語ですか…
行為後に腹をくだす囚人がいたり、植田がホモ囚人のラブレターを読まされたり、時折BLな景色が挟み込まれます。
回復した末永が相手を殺すつもりらしいことを知り、既に殺人犯である自分がやった方が安くつく…友達思いの行動に出る植田ですが、「懲役20年でも40年でも100年でも一緒!!」という開き直りが凄い(笑)。
景気のいい音楽と淡白なナレーションと共に刑期がどんどん加算されていくのが妙に心地いいです。
しかし殺した相手がヤクザ者だったことからその師弟から決闘の申し込みを受ける植田。
「男らしい決闘は今どき流行らん!!」…騙し討ちして風呂場で相手を刺殺、やり方が汚すぎる!!
追加判決を言い渡された矢先、窓の外にいる女性たちをふと見かけて「あきらめかけていた社会がみえた」と訳のわからん言葉を呟きながら突然外に飛び出し激走。
またまた妹のいる四国へ…
三国人の1人と再会、「あんた日本のジャン・バルジャンなんだってな」ってどこがだよ(笑)。
以前は温かく迎えてくれた妹も今回は激怒。
「いいときには来なくて、困った時だけ頼ってくる」、本当にサイテーのお兄ちゃん、ついに絶縁を言い渡されてしまいます。
しかしそこに警察が突入、すると途端に兄貴を庇って警官を棒だたきする妹。
食べてもらえなかったお膳をみて哀しそうな表情を浮かべているのが切ない。
兄と妹、本人たちにしか分からない血の絆があるものなのね…
警官隊に追われ、木材用ロープウェイにしがみつき大立ち回りをみせるも、川に転落。それでも何とか逃げおおせる植田。
大根を齧りながら歩き、道に落ちてたシケモクを拾って映画は終劇。なんちゅー終わり方や…
情けないのになぜかちょっぴりカッコいい最後の姿。欲望に忠実でブレない主人公に清々しい気持ちが残りました。
Wikiをみると、「パピヨンみたいな脱獄ものを考えろ」ということで制作された作品のようですが、「パピヨン」とは大違い(笑)。
パピヨンは一応自称無実の罪でしたが、こちらはハナから殺人罪な上追加で人を殺しまくっていて言い訳のしようがない悪党。
刑務所の劣悪さに重きが置かれているわけでもなく、なんのために脱走しているのか分からなくなってくるあまりのアホらしさ。
自由を求めて…というけれど、もうあんた1番自由やろ(笑)。

(すごい猫背と謎メイクにも爆笑)
怒涛のテンポが心地よく、映像と音楽とナレーションがビタッとハマっていてゆるっとしてるようでハイセンス。
なんだか凄いものを見たなあ…という気持ちになる、めちゃくちゃ楽しい脱獄映画でした。
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