どうながの映画読書ブログ

~自由気ままに好きなものを語る~

「女子大生・恐怖のサイクリングバカンス」…田舎景色の密室感、〝妙に残る〟じっとり系サスペンス

「魔鬼雨」のロバート・フュースト監督、「ヘルハウス」のパメラ・フランクリン主演の1970年イギリス製サスペンスホラー。

下世話な邦題がナイス(笑)。

劇場未公開作だけどテレビ放映されていたらしく、〝記憶に残る一作〟と名高いのを初鑑賞してみました。

 

◇◇◇

イギリスからフランスの田舎町に旅行にやって来たジェーンとキャシーの2人。

太ももを露わに異国の田舎町を自転車で長距離移動、なかなかパワフルな旅行者。

休憩がてらカフェでお茶をしているとキャシーは気になる男性を発見、その姿をこっそりカメラに収めます。

アバンチュールに興味津々。行き当たりばったりに旅行を楽しみたいキャシーと、計画的に物事を進めたいジェーンと…2人の間に亀裂が生じ、仲違い。

木陰で寝そべるキャシーを置いてジェーンは先に目的地へ進むことに…

 

男を誘ってるつもりなのか、パンツやブラジャーを木に天日干し。

時間も気にせず延々と木陰で昼寝するキャシーがいくらなんでもダラしなさすぎる(笑)。

しかしふと気付くと自転車が破壊されていて、何者かに出くわしたキャシーはそこから忽然と姿を消してしまいます。

 

一方、先に到着した村で友人を待ち続けていたジェーンは一向にキャシーが現れないのを不安に思い始めていました。

やがて村の人から、女性旅行者を狙った暴行殺人事件が3年前にあったことを聞きつけます。

いなくなった友人の行方を尋ねて周辺を右往左往するジェーン。

小さな村と友達が行方不明になった林の藪と…近いところを行ったり来たりするだけのロケーションに、密室サスペンス的閉塞感が漂います。

 

アメリカ映画とはまた趣の異なるフランスの田舎の景色。

車道の狭い古風な道、ヨーロッパらしい石造りの簡素な家など、美しいけれど物寂しさもあってミステリアス。

晴天の田園風景とジトッとした恐怖のコントラストが秀逸です。

 

そして続々と怪しいキャラクターが登場。

「こんなところに1人で来るなんて!!」…険しい表情でジェーンに迫るカフェの女主人。

堂々英語で話しかけるヒロインでしたが、見事に撃沈。

言葉の通じない異国の地で孤立を深めていく展開が鉄板ながらサスペンスフル。

女主人の夫が帰宅すると突然夫婦喧嘩が勃発、ますます居心地の悪い空気に…

日本版DVDには丁寧にフランス語字幕が付けられていましたが、あえて字幕なしでみると「何を言ってるか分からない主人公の不安感」をより濃密に味わえそうな気もしました。


一見人の良さそうな別のカフェの店主も「以前は殺人事件のおかげで店が繁盛した」と嬉しそうに語っていてデリカシーゼロ(笑)。ズレた人間性にどこか冷たいものを感じてしまいます。

同郷のよしみか、フランス文学を教えているというイギリス人女性だけが親切に接してくれますが、「困ったら私の家に泊まりに来てもいいのよ」とまで言ってくれるのは優しすぎる気が…みているうちにどの人も怪しくみえてきます(笑)。

 

さらにジェーンは自分たちの後を追って来ていた謎めいたスクーターの男・ポールと遭遇。

ジェーンの言葉を翻訳して村人に伝えてくれるものの、地元住民の発した〝過去の殺人〟というワードをなぜか伏せて秘密にするポール。

国際警察に勤務していて3年前の事件を独自に調べているのだと語りますが、こんな田舎町にわざわざ1人で来るものなのか…

キャシーが撮ったカフェでのカメラフィルムをなぜか突然破棄するなど、言動が怪しすぎてジェーンが逃げ出すのも無理はありません。


何も見つけられないままのジェーンは偶然飛び込んだ警察官宅でキャシーの行方を相談することに…

夫婦喧嘩していたカフェ女主人の夫が3年前の事件の容疑者だったらしく、真っ先にそこへ向かう警察官。

ワイングラスに酒をめいいっぱい注がせる手つきが荒っぽくて、この警官もあまりいい人ではなさそう…

そして警官宅では同居のお父さんとやらが登場、戦争のPTSDを患っているらしく危うげな行動ばかり。またしてもジェーンは孤立感を深めていきます。

 

そんな中、警官宅に1人残されたジェーンのもとに自称国際警察官のポールがやって来ました。

「今すぐここを開けろ!!」荒ぶるポールにジェーンは身をすくませますが…

 

(以下真相ネタバレ)

ドア越しに怪しい奴がやって来る、ホラー映画あるあるのシチュエーション。

近くの森に逃げこみ追いかけっこが展開するクライマックスは実に悪夢的。

キャンピングカーの廃車置き場というロケーションが一層不気味さを盛り上げます。

クローゼットからついにキャシーの死体を発見するジェーン。

迫って来るポールの頭をガツンと攻撃、そこに警官が助けにやって来ますが、抱きしめた手が突然お尻に…

ねっとりした触り方が妙にリアル、こいつが暴行殺人犯だったのかー!!

格闘になるも大ピンチ、そこへ負傷したポールが起き上がり真犯人を成敗して事件は解決を迎えます。

 

勘違いして気まずいけど、犯人ムーブしまくったポールは怪しすぎて自業自得にしか思えない(笑)。 

3年前に殺された被害者女性のお墓を訪れている場面がありましたが、実は元恋人で犯人をずっと追っていたとか、そういう描写があればもう少し納得できたような気がします。

ジェーンとキャシーのことを「犯人が手を出しそうないい獲物」だと思って事件が起こるのを待って後をつけていたのだとしたら、この人も単純ないい人ではなさそう。

警官が犯人な結末といい、どこまでも冷たいものが残りました。

 

キャンプカーを上から捉えた映像がキャシーの死体の足を映し出すのにゾゾッ。

そして冒頭でも流れた朗らかな音楽と共に、新たなるサイクリング女子が登場。

バカンス気分にご用心!!皮肉めいたループエンドが仄暗い余韻をさらに残していきます。

 

脚本家が「見えない恐怖」の人と同じらしく、突き放したような冷たさが何だか似ているなーと思いました。

村が物凄く排他的だとか、分かりやすくホラーな人が出て来るわけではないのだけれど、地味な嫌さがいい具合のリアリティ。

思わせぶりな描写が多く、決して緻密に作られた作品ではありませんが、全編漂う閉塞感と不気味さに抜きん出たものを感じました。


パメラ・フランクリンは髪型もメイクも全然似合ってなかったけど、それでも愛らしい。

ピンクのサンダルに青いアイシャドウ、ジェーンとキャシーのファッションカラーのコントラストにも目を引かれました。

 

邦題はとんでもない詐欺で、2人は女子大生ではなく看護師さん(笑)。

テレビ放映で見た人の記憶に残っているというのにも納得の、〝妙に残る〟作品でした。