先日「ローリング・サンダー」を観に行った際にシネマートさんで告知されていた「狂い咲きサンダーロード」45周年記念復活上映。
大入りの大盛況だったようで3週目に突入。滑り込みで何とか観に行くことができました。

タイトルは知っていたけどずっと未見、出ている俳優さんも全く知らずでして…
暴走族が主人公の映画って個人的にハマらなさそう…アート志向でとっつきにくそう…勝手な偏見を持って遠ざけていましたが、めちゃくちゃおもしれーじゃねぇかよ!!
体感70分くらいで上映時間があっという間。
頭を空っぽにしてみれる映画で、ストレートにめちゃくちゃ面白かったです。
開始10分位は同じような格好をした暴走族がいっぱい出てきてキャラの判別が不安、騒がしくてやっぱり好みの映画じゃなかったかも…と思いましたが、主人公・仁さんが活躍しだすと一気にエンジンがかかり激アツ。
主演・山田辰夫さんの特徴あるお声がなぜか聞き取りやすく、シネマートさんの音響のおかげで大迫力。
ロックが延々と背後で鳴り響きながら怒涛のテンポで場面が切り替わっていきますが、なぜか疲れることがなく、終始釘付けで心地よくみることができました。
◇◇◇
マッドマックス風近未来の世界、新道路交通法が施行され暴走族たちもルールに従うことに…
仁の所属する暴走族チーム・魔墓呂死だけはツッパリ魂を貫こうとしていましたが、リーダー・健が恋人のために堅気に生きることを決意。平和協定に参加を表明します。
リーダーの何ともいえない腑抜けた感じ。恋人とイチャイチャする白いワンルームの異世界感、突然サイレント映画のように会話がテロップになるなど、2人だけの甘い世界が展開する独特な絵作りが面白かったです。
ノロノロ走ってられるかよ!!と仁は志を同じくする子分3人と共に反発。
ルールを無視して爆走、暴走族チームの大集会で大暴れ。
「ウォリアーズ」を思い出させる場面に〝バトルロワイヤル広場〟というネーミングセンスが時代の先を行っています(笑)。
ところがある日仲間の幸男が人質に捕らえられ、圧倒的不利な人数を相手に立ち向かうことに…
「3人でもやってやろうじゃねえよ!!」…迷いなく切り込んでいく仁さんに続き、後ろの子分2人が突撃する姿になぜか涙が出てきました。
たった2人といえど付いてくる部下がいるのすごい。仁さんめちゃくちゃ慕われててカッコいいやんと感動してしまいました。
しかし弟分・茂は元リーダーの健とその顔馴染みである右翼団体幹部・剛に助っ人を依頼。
望まぬ形で窮地を救われ、仁たちは成り行きで新たな組織に加入することになってしまいます。
スーパー右翼というのもまた凄いネーミングセンス(笑)。
その前にあった勧誘シーンにて「君が代」をズレたテンポで歌ってくるのと、「誰なんだよテメエ」「話が分かんねえんだよ」と仁たちが啖呵を切りまくるのにめっちゃ笑いました。
スーパー右翼で特訓の日々が始まりますが、新聞紙で固めたマネキン相手に特攻する虚ろな戦争ごっこ…新組織に馴染めず衝突を繰り返す仁。
「人間向き不向きがあるってよ、足りねえ頭で考えてみろよ」…この世の本質を突いたような仁さんの名言がいちいちカッコいいです。
一方弟分だった茂は剛に愛人として囲われ、スーパー右翼で出世街道を歩み始めていました。
突然男色シーンが挿入されるのに驚いてしまいましたが、身も心も売ってしまった茂の方に共感してしまう自分がいます。
父性的存在を乞う気持ち、どこかに所属しているという安心感…自分もこういう変な組織に洗脳されて染められそうなところめっちゃあるわーと思いながら見入ってしまいました。
自分を捻じ曲げてでも誰かに認められたいという思いも、ある意味1つの社会適応といえるのかもしれません。
茂と対照的に己のエゴを突き通す仁が眩しく映りますが、周囲に合わせることに窮屈さを感じることも怒りの湧く瞬間も人生には確かにあるある。
変われない己があるのもまた真理。それは生き辛さでもあるけど、それも生きることの本質なのかも…
今年の春にシネマートさんでみた「パピヨン」も主人公とドガの〝それぞれの自由〟に人生哲学を感じましたが、本作もそれに近しい内なる心のドラマが胸に迫ってきました。
暴走族だし、特に背景が描かれているわけでもないのに、主人公・仁が好きにならずにいられないキャラクターとして成立しているのがとにかく凄いです。
右翼グループにも暴走族グループにも目をつけられた仁はとうとうリンチされ、片足片手をチェーンソーで切られてしまいます。
「ローリング・サンダー」に続き、なんとこちらも四肢欠損の義手主人公。
打ち捨てられたスラム街に辿り着きますが、そこで麻薬密売人の小学生と知り合いに…(なんちゅー世界観)
ここから急に漂いだすサイバーパンク感。
爆弾魔や謎の外国人から次々にアイテムを調達、完全武装で何もかもをぶっ殺したる!!と大暴れのクライマックスへ…
黒ずくめのフルフェイス、鍵手で銃をぶっ放す姿がめちゃくちゃカッチョよく、バズーカを軽やかに使う爆弾魔とダイナマイトを投げつける小学生にもニヤニヤが止まりません。
そして仁の前にかつての友・茂が立ちはだかります。
「ずいぶん変わったな」と言った後てっきりクサすのかと思いきや「カッコいいじゃねえの」と続くのが意外。
決意を持って自分の道を進んだ茂を認める仁さんの一言にシビれました。
しかし…!!戦闘中の2人に剛が銃弾を浴びせ絶命する茂。
「町もあなたのことも私が守ります」と茂は操を立てていたのにこの仕打ち…大人社会は何とも冷酷。
仁が仇をとるのかと思ったら、ジャンキー小学生が剛を仕留めるのにびっくり(笑)。
「そんな体でバイク乗れんのかよ、ブレーキどうすんだよ」…ラストは納得の着地点ともいうべき美しいエンディングで、仁さんの表情と最後に映る火山が最高にカッコよかったです。
仁さんのキャラクター、自分は「群盗荒野を裂く」のジャン・マリア・ボロンテが思い出されましたが、愚直な人の美しさが胸に迫りました。
荒削りではあるものの見辛いということは不思議となく、実験的でユニークなシーンがたくさん。
仁さんが病院を退院する場面、背後でパントマイム的演劇!?が繰り広げられているところはシュールな悪夢のようでじーっと見入ってしまいました。
子分の1人が重体になってしまうシーンは、ギプスに〝植物〟と書かれているのにビビりましたが、何とも大胆で明快な見せ方。
スーパー右翼で過ごす日々では、画面が横移動していく授業風景、合間に挟まれる雪景色など時間経過が表された絵作りが豪華。とても学生の卒業制作とは思えない&低予算を感じさせないクオリティに終始驚かされっぱなしでした。
3週目だったのに大盛況で上映終了後には拍手が…ディスプレイも気合が入っていました。

先日「ローリング・サンダー」を見に行ったときから設置されていて、随分華奢だなーなんて思ったけど、本編の仁さんが本当にこんなだった。

グッズもたくさん売られていて完売のものも…

(9月6日17時55分、上映前時点)
キャップ帽を被っている方がいて自分も欲しいなーと思ったけどもう売り切れ、とりあえずパンフレットだけ購入。

分厚くてめちゃくちゃ充実した中身、インタビュー満載。
まだ全部読めていないのですが、2006年の山田辰夫さんインタビュー記事で「大学に入学して初めて学校に行ったのがゴールデンウィーク明け…」のエピソードのところで爆笑してしまいました。
13日木曜までの上映らしく、もう行けないけどもう1回みたいなあ…
集中してみていたつもりだったけど、新幹線に乗っててすごくいい景色がすごい速さで流れていったような感覚。
複数回みて気付くところ、深く味わえるところが沢山ありそうで、リピーターが多いのも納得の作品でした。
食わず嫌いせず観に行って、劇場で体験することができて本当に良かったです。