どうながの映画読書ブログ

~自由気ままに好きなものを語る~

「モンキー・シャイン」…牙を剥く高知能ザル!!ロメロのアニマルサイコスリラー

近日公開予定の作品をネットでみていたところ、猿を映したホラー映画のポスタービジュアルが…

モンキー・シャインのリメイクするの!?と思ったら、これが全然違ってスティーヴン・キングの短編を映画化した新作なんだとか。

(めっちゃ似てるw w)

 

そんなわけで急に思い出した映画「モンキー・シャイン」。88年のジョージ・A・ロメロ監督作。

同じく猿が暴れるアニマルホラー「リンク」と共にVHSワゴンセールで発見してみた記憶があるのですが、「リンク」に比べるとかなり地味だった印象。

でも話の設定は面白くてこちらもまずまずの作品だった気がします。

久々に鑑賞してみましたが、アニマルホラーというより心理サスペンス色が強くて面白い…!!

主人公を含め善人と言い切れない登場人物ばかりなのがダーク。

後半は広げた設定を回収しきれていない感があってやや残念ですが、執拗に追い詰められるクライマックスの対決は手に汗握ります。

 

◇◇◇

ロースクールの学生で陸上部のエース、文武両道のアランは、ある日トレーニング中に事故に遭い半身不随の身になってしまいます。

人生に絶望したアランに脳科研究所で働く友人・ジェフリーが実験用の猿をプレゼント。

ジェフリーは人間の脳エキスを猿に注入し知能を高める実験をしていました。

エラと名付けられた猿は献身的にアランを介護し、彼の心を解きほぐしますが…

 

何をするにも自由の利かないもどかしさ、同情的な目線ばかりが向けられる居心地の悪さ…主人公の絶望感が伝わって来る前半の心理描写がとても丁寧で引き込まれます。

恋人のリンダは入院中に一度も見舞いに来なかったという地点でお察し。

アランの主治医に鞍替えするのが鬼畜の所業、友人ジェフリーの「股が臭いぞ」の一言がナイスです(笑)。

 

母親・ドロシーが甲斐甲斐しくアランの世話を焼きますが、元気な子供時代のビデオを本人にみせるなど配慮に欠けている様子。

家族背景がもう少し描かれていると感情移入しやすかったように思いますが、過保護で過干渉、サイコな雰囲気のお母さんがいい味を出しています。

 

その後、住み込みの看護師・マリアンが雇われることになるも、お互いウマが合わずイライラ。

患者宅で自分のペットの鳥を放し飼いするのってどーなん(笑)。

寄り添い尽くすタイプの人ではなく、どこか怠惰に映りますが、お酒を薄めて出すなど患者の健康管理には最低限気を配っている様子。

突然現れた猿にアランが夢中になりお払い箱にされてしまうベテラン看護師の姿は、ハイテク技術に仕事を奪われた人みたいで何だか世知辛いものも込み上げます。

 

一方、介護ザルとしてやって来たエラは目覚ましい活躍をみせ、アランの手足となってご飯を食べさせ、電話をかけ、大学の授業にも付き添い。

(とても賢そうな愛くるしい瞳)

(一生懸命お掃除する姿が健気!!)

勉強に集中しているアランに「私に構ってよー」と言わんばかりに抱きつく様が愛らしく、嫉妬深い彼女のようです。

 

そんなある日、アランがマリアンの飼っていた鳥に顔を突つかれ大ピンチに…以前からの不満が爆発し激昂するアラン。

するとその夜エラがこっそりと鳥籠に忍び寄り、鳥を始末してしまいます。

マリアンがスリッパに足を入れるとそこには…感触が伝わるような厭さも含め、観客に予想をつかせた上での恐怖演出が秀逸。

 

その後も不穏な事件は続き、元主治医と元恋人のカップル2人が放火によって死亡。

実はアランの麻痺症状が事故ではなく遺伝性の疾患だったことが発覚、「あの医者のせいで治療が遅れた」とアランは怒りを滲ませていました。

2人を憎悪する気持ちがエラにテレパシーのように伝わってしまったのでしょうか…

さらに続いて母親ドロシーも浴槽で感電死。サルの特殊トレーナー・メラニーと距離を縮めていたアランは、その仲を裂こうとする母親を厭わしく思っていました。

 

自分はストレス発散できなくてヤキモキ、周りがみんなムカつく!!

主人公の抑圧された感情を読んだかの如く、猿が暴力性を発露する〝ジキルとハイド〟的ストーリー、それが人間と動物(男と女)で描かれているのが特殊な依存関係になっていて面白いです。

 

次第にアランはエラと感覚まで共有するようになり、エラの体で外を走る夢をみるようになります。

後半は科学サスペンス色が強くなっていきますが、設定が盛りだくさんな上、それまでの堅実な演出から一転して現実離れしてみえるのが残念。

2者の精神が同調し野生の本能をもつエラに感化されてアランの感情が解き放たれた…ということのようですが、主人公が急に怒りっぽい嫌な奴になったように見えてやや描写不足。

また研究者・ジェフリーがもう1人の主人公ともいうべき立ち位置で活躍しますが、エラの薬を自ら服薬するなど行動が突飛。

医療サスペンス設定が度々登場するものの消化不足で、〝共依存関係になった主人公と賢い猿〟にプロットを絞った方がスッキリみれたのではないかと思いました。


けれど、体の動かせないアランがエラの反逆に遭い絶体絶命となるクライマックスは迫真…!!

リンクと違って力のない小柄な猿ですが、それまで駆使していた介護サポートが全て裏目に出るかたちでアランを追い詰めていくのがサスペンスフル。

エサをやって手なづけようとしては食べ物を投げつけられ主従逆転。ブレーカーを切られて電源を失うと手も足もでない。

「エラは献身的だ、喜んでやってくれている」…そう語っていたアランでしたが、それは優しさを受けとる側の独りよがりな考えだったのかも…人間だって見返りを一切求めないなんてなかなか出来ないもの。

自分に仕えて当然だと、無垢なる動物や物言わぬ人を下にみて奢っていることはないだろうか…

階級格差、家族関係などあらゆるものに置き換えてみれそうな、2人の関係が大変スリリングです。

最後には愛情を利用して騙し討ち、エラを噛み殺す主人公のなりふり構わない様がショッキング!!人間の残酷さが際立った強烈なシーンになっていました。

 

オペ中に猿が飛び出してくるキャリー的ジャンプスケアのシーンと、主人公に希望が訪れるエンディングは、ロメロの意向を無視してスタジオの要望で完成されたものとのこと。

原作小説も手に取ってみましたが、原作ではアランの障がいは治らないまま…しかしメラニーと深く結ばれる結末になっていてこちらもそう暗くはない後味でした。

大きく違うのは最後の最後に研究所のボスがエラの子供を手に入れていて、これから〝猿の惑星〟が始まりそうな如何にもB級ホラーなエンド(笑)。

映画は人間の残酷さをしっかりと描き出しつつ、現実寄りのエンディングになっていて、改めてみるとそう悪くないように思えました。

全体的に小説の方が医療サスペンス色が濃く、アランもエラの薬を飲むようになり、そのせいで感覚共有が起こった…経緯がより具体的に描かれているものの、後半人物視点が散らばってまとまりに欠けた印象なのは映画も原作も同じ。

看護師マリアンは原作では若い優秀な女性になっていて、ペットの鳥も含め映画オリジナル。

中年看護師女性にして主導権争いのドラマをよりシニカルでスリリングに仕立てたところ、大学の授業シーンでのアランとエラの以心伝心の描き方など、ユーモラスかつスマート。 

身障者の主人公の珍しいラブシーンも真摯に撮られていてなかなかユニーク。

ロメロの脚色の腕を感じます。

 

原作に囚われすぎずもっとコンパクトにして、ラストを干渉されることなく撮れていたら、もっと締まった出来だったのかな…

惜しく思われる部分もありますが、「リンク」然りまるで中に人が入っているような本物の猿の演技と、撮影&編集の合わせ技が見事。

これというグロ描写はないけれど、特殊効果はトム・サヴィーニが担当していて、エラが女性の顔にマッチを押し当てる場面など職人の仕事っぷりが窺えます。

 

それにしてもなんでポスタービジュアルがシンバルを持ったサルになったんだろう(笑)。

決して完成度は高くないし地味だけれど、さすがロメロ!!と手を叩きたくなる、深さと芯がしっかりと感じられる作品でした。