どうながの映画読書ブログ

~自由気ままに好きなものを語る~

「殺しの分け前/ポイント・ブランク」…幻想的ハードボイルド、まるでホラーなフィルムノワール

今年シネマートさんでリバイバル上映されていたのを見逃してしまい、ずっと気になっていた「殺しの分け前/ポイント・ブランク」。

先日鑑賞したロバート・デュヴァル主演の「組織」と同じく、ドナルド・E・ウエストレイクの悪党パーカーシリーズを原作にしているとのことで、比較もできたらと思い鑑賞してみました。

世界観、キャラクター像などは確かに似ているものの、作風は全く別物。

組織から金を奪おうと奔走する主人公・リー・マーヴィンが亡霊のようでホラー映画のようなムードが漂う怪作。

閑散とした人工的ロケーションが美しくも冷徹で文明批判のようなものを所々で感じさせる…単なるジャンル映画に留まらない、ジョン・ブアマン監督らしい知的で骨太な作品になっていました。

 

◇◇◇

ウォーカー(リー・マーヴィン)は戦友マルに懇願され、アルカトラズ刑務所で取引されている密売金強奪計画に参加。

しかしマルはウォーカーの妻・リンと浮気しており、友を裏切り発砲。撃たれたウォーカーは刑務所に1人取り残されてしまいます。

 

フラッシュバックが連続する冒頭から独特の映像センス。

アルカトラズ刑務所をロケ地にした最初の映画作品だそうですが、無人の監獄がこの世ならざる雰囲気。

ウォーカーの歩く靴音が大音量で響き渡っていく場面はまるで死神の行進のよう。

主人公が荒波を泳いでいるカット→刑務所の観光船に乗っているカットにジャンプするなど、時系列の交差したユニークな構成に引き込まれます。

 

一体どうやって脱獄したのかよく分からないままだけど、兎にも角にも1年後…

ウォーカーは謎めいた男・ヨストに「組織を潰すことに協力するなら復讐に手を貸す」と話を持ちかけられます。

ヨストに妻・リンの居所を聞いたウォーカーは彼女の下を訪れるも、マルは不在。

銃を叩きつけるようにぶっ放すリー・マーヴィンの野性味溢れるアクション、それが空っぽのベッドに穴をあけるだけで終わるのに不思議な虚無感が残ります。

 

「私は2人の間をフラフラした挙句マルに惹かれたの」「私を殺して」…リン曰く、現在マルはリンの妹・クリスに熱を上げているとのこと。

業の深い浮気女のはずなのになぜか哀愁の漂う女性。

(横並びのまま2人の視線が交わらないのが不穏)

ウォーカーが目を離した隙にリンは睡眠薬を過剰摂取して自殺。

しかし死体のあったはずの部屋に足を踏み入れると、死体は消えていて代わりに白い猫が…

「主人公死亡説」が根強くあるという本作ですが、ところどころ幻想ホラーのような怪しいムード。

妻が罪悪感に駆られて自殺したのを亡霊の主人公がみていただけだったのでは…狐につままれたような奇妙な感覚が終始まとわりつきます。

 

ウォーカーがリンの家に留まっていると、毎月の生活費をリンに渡しているというマルからの使者が家にやって来ました。

脅しつけてマルの居所を知る中古車ディーラー・ステッグマンの職場を聞き出すウォーカー。

客の若い女を遠くからスケベな目線でみつめるステッグマン。いかにも小悪党、胡散臭いジジイの佇まいに笑ってしまいます。

客を装い試乗運転に出掛けたウォーカーは、ステッグマンを助手席に乗せ爆走。

自分だけシートベルトをつけてドライブ&リターンで壁に激突を繰り返し相手を痛めつける!!

(地味なようで狂気炸裂のアクションシーン)

 

狸ジジイからリンの妹・クリスの居所を聞き出すことに成功したウォーカーは彼女の下を訪れますが、マルを快く思っていないクリスはウォーカーに協力することに…

マルの住む高級マンションをクリスが訪問、バルコニーの扉をそっと開けるなど鮮やかな手引きをみせるクリス。

夜のペントハウスの人工的な造形、ポツリと上がっていくエレベーターの景色はエドワード・ホッパーの絵画のような雰囲気があって、物寂しくも魅せられる映像でした。

 

裏切り者・マルはウォーカーと再会すると情けない顔で命乞いをはじめます。

そこに回想シーンがインサート。「強奪計画のときコイツがあれだけ懇願するから協力してやったのに結局裏切られた」…過去の記憶が蘇って、余計に怒り心頭になるウォーカー。

揉み合いの末マルはバルコニーから落下。主人公が落としたというより事故的に落ちていった感じでなんとも不完全燃焼。

怒りの行き場がなくなったからか、分け前の金を結局取り戻せなかったからか、ウォーカーの勢いはまだまだ止まりません。

次にはマルが金を借りていたという組織の大元締め・カーターを襲撃することに…

 

一方カーターはウォーカーの拷問に負けて情報を売り渡した中古車ディーラーのステッグマンを叱責。ウォーカーに渡すための9万3千ドルの金を取引場所に持って行くよう命じます。

用水路の流れる閑散としたロケーションがまたカッコいい。

ウォーカーはなんと事前にカーターを拉致、カーター本人に金を取りに行かせることに…
すると事前に仕込んでいた狙撃手がよく確認しないままボスのカーターとステッグマンをまとめて射殺。

間違えてるくせに飄々と殺し屋が去っていくのが何だか可笑しくて笑ってしまいます。

用意されていた金が偽札なのを知ったウォーカーは、カーターと共に組織の重役を務めているブルースターから金を強奪することを決意。

ブルースターの別荘に張り込むことにしますが、そこに別れたはずのクリスがやって来ます。

復讐に夢中なウォーカーに腹を立てて男のボディをドコスコ殴りまくるクリス。ヒロインも凄いけど、殴られた後何事もなかったようにスッとテレビを見るリー・マーヴィンの迫力たるやもう(笑)。

喧嘩してたと思ったらいきなり抱き合い、クリスとベッドを共にするウォーカー。

そこに姉・リンを寝とっていたマルの映像がカットイン。

寝取り寝取られ、姉妹で違う2人の男に抱かれる男女4人の関係が複雑すぎてよく分からなくなってきます(笑)。

(私の姓は…?俺の名は…?オトナでハードボイルドな世界の2人)

 

そんな中、とうとうブルースターが別荘に到着。

「9万3千ドル!?現金はないって!!俺のケツポケットにも今11ドルしか入ってないよ!?」

口だけ調子いいこと言う胡散臭そうなおっさんがまた登場(笑)。

再びアルカトラズで裏取引の仕事が行われるからそこで現金を渡すと提案するブルースター

話に乗ったウォーカーは再び因縁の地・アルカトラズへ…

しかし金の入ったバッグを持って現れたブルースターは容赦なくヨストの手下に撃ち殺されてしまいます。

ずっとウォーカーに協力していたハゲ親父・ヨストの正体は実はフェアフォックスという組織の金庫番。ウォーカーを利用して自分を蹴落とそうとした組織トップの2人を粛清したのでした。

ラスト、フェアフォックスの呼びかけに応えず、ウォーカーはなぜか金を受け取りに来ないまま姿を消してしまいます。

 

この組織、最後の最後まで信用できず胡散臭い奴ばっかり、お金は本当にあったのでしょうか…

実態のない虚な金儲け集団、オフィスもペントハウスも整然としていて綺麗ではあるものの人間味に欠けていてどこか冷たいものが残ります。

そして金を受け取ったらそこで自分の存在は消えてしまうといわんばかりに、現実と交わらないままま終わる主人公が不穏。

ウォーカーはやっぱり最初の場面で死んでいて同じ場所から抜け出せていなかったのでは…アルカトラズに始まってアルカトラズで終わる、無限ループのような幕引きにホラー映画のような余韻が残ります。

 

己が手をかけることもなく死んでいった妻と親友の奇妙な死様、虚空に発射されるだけだったベッドへの銃弾。強靭なリー・マーヴィンから発せられる男の不能感が何ともいえない…

ジョン・ブアマンの作品では「脱出」が圧倒的に好きですが、男らしさの喪失、この世ならざる空間から脱出しようと藻掻く主人公の寄る辺なき姿など、2作品とてもよく似ているような気もしました。

 

先日見たロバート・デュヴァルの「組織」の方がB級映画味に溢れていてムードや画面の構図など大変好みでしたが、こちらもロケーションの美しさや色調に拘った絵作りなどが目を引いて、映像だけでも見応え充分。

グレーからピンクブラウンまで様々なカラーをみせる主人公のスーツ姿がお洒落、衣装も印象的でした。

リー・マーヴィン、60歳位かと思いきや、1967年当時なんと43歳…貫禄ありすぎて爺さんにしかみえないのには絶句(笑)。

 

後続の作品に大きく影響を与えたと言われているそうですが、なんとなく「組織」はタランティーノ的、「ポイントブランク」はソダーバーグやノーラン的!?

喉に何かが詰まった感じがして、スカッとできる作品ではなかったけれど、妙に引き込まれる怪作でした。