プピ・アバディ監督によるイタリアン・ホラー、「笑む窓のある家」と共に「ZEDER 死霊の復活祭」も日本初公開。
より上映回数が限られていそうなスケジュールでしたが、何とか連休最終日に観に行くことができました。

比べてしまうと「笑む窓のある家」の圧勝。
怪しい人物がいっぱい出てくるのは一緒だけど、繋ぎが粗っぽくて話があっちこっちに飛びまくる(笑)。
でもやっぱり雰囲気は抜群で、地下墓地やボローニャの景色、クライマックスに登場する巨大廃墟など、眼福な映像がいっぱい。
分かりにくいけど意外と話は矛盾点なくまとまっているような…スティーヴン・キングの某作品と重なりますが、独自の世界観があってよかったです。
「笑む窓〜」と比べるとこちらはチープというかB級感が強い質感の画だったのですが、「令和の今にこんな映像を大きなスクリーンでみれていいの!?」となってテンションが上がりました(笑)。
主演は「サスペリアPART2」のカルロ役でおなじみ、ガブリエル・ラヴィアでいつもより渋めな印象。
音楽はリズ・オルトラーニで、今回は動的シーンで勢いよく曲が流れてくるのがイタリアン・ホラーらしかったです。
ゾンビものだと思ってみると普通のゾンビとはかなり違っていてびっくり。周囲の人間への不信感が募るところや禍々しいムードなど、静かに迫るホラーでした。
(※以下ネタバレありで語っています)
フランスの田舎町。正体不明のものに人々が殺される怪事件が続発、マイヤー博士率いる調査隊がとある屋敷にやって来ました。
調査隊は超能力を持つ少女・ガブリエラを地下室に連れて行き、何かを探し当てるよう命じます。
「ここ掘れワンワン!!」と何かの埋まった場所を指し示したガブリエラでしたが、何者かに襲われ足を引きちぎられ負傷。
調査隊が該当の地面を掘ると白骨死体が…身分証明書から死体の身元はかつてバチカンに所属していたゼダーという男だと判明。
ゼダーは死からの帰還が可能となるという「Kゾーン」を生前に調査研究していたらしく、調査隊は「Kゾーン」の存在を確信します。
地下墓地の雰囲気が抜群。掴みはよかったけど、話が分かりにくい(笑)。
蘇ったゼダーに人々が襲われる殺人事件が起きていたらしいのですが、「2年間で3人の犠牲者」ってそんな大騒ぎするほど多くないような…
そして殺されたお婆ちゃんもガブリエラもシルエットのある男に襲われていたけど、掘り返して出てきたのはバラバラの白骨死体で、蘇る時に受肉したということなのか、別の遺体に襲われたということなのか…
白骨死体の手がガブリエラの靴を握りしめていたのでゼダーに襲われたとしか思えないのですが、また土にわざわざ戻って骨になったということなのでしょうか…
ワクワクする冒頭シーンだったのですが、普通のゾンビものとは一味も二味も違っていて、通して見たあと振り返ってもここが1番の謎で分かりにくかったです(笑)。
そしてここから話は一気に飛んで30年後のボローニャへ…
小説家ステファノ(ガブリエレ・ラヴィア)は妻アレッサンドラから結婚記念日にタイプライターを贈られます。
ラブラブの夫婦、ボローニャの美しい景色。部屋のインテリアも素敵で、寝心地よさそうな大きなベッドが羨ましい。
骨董市で購入したというタイプライターですが、ステファノがインクリボンを取り出すと、前の持ち主が書いたと思われる謎めいた言葉が残されていました。
「死後の世界と繋がることができた、Kゾーンを調査せよ、うんちゃらかんちゃら…」
普通の人だと「変なの!」で終わって気にも留めないと思うのですが、小説家という職業もあってか、全力で調査しはじめる主人公(笑)。
オカルト学に造詣のある知り合いの大学教授に相談し「Kゾーン」についての情報を入手。さらに警察官の友人に頼みタイプライターの元の持ち主を探ってもらうとコスタという神父のものであったことが判明します。
コスタ神父に会いに教会事務所を訪れるステファノでしたが、自らが神父本人だと名乗るジャージのおっさんから、この件に関わるなと追い払われてしまいます。
しかし後日ステファノがもう一度教会を訪れると、年若い神父が現れ「コスタ神父は1年前に亡くなっている」と驚愕の事実が伝えられます。
不治の病にかかったコスタ神父は、異様に死を恐れて精神に不調をきたしていたのだと言います。
ステファノは妻アレッサンドラを連れて、コスタ神父の故郷の町を訪れることに。
盲目の老婆が出てきたり、墓地の地下室を探索している最中に閉じ込められてしまったり…
「わたしは目撃者」(早すぎた埋葬)的シチュエーションを挟みつつも、生きた鳩がいきなり棺から飛び出てくるのにはびっくり(笑)。
予測できない不穏なシチュエーションが連続するのが今作も非常に楽しく、先にあった友人とプールに入る場面は「サスペリア」を彷彿させつつ暗いプール浴場が雰囲気たっぷりでグッド。
大学にいた若い女生徒が突然主人公に迫り胸を触らせる場面は意味不明で唖然(笑)。
聖職者、大学教授、警官の友人、さらには医者と、本来信頼できるはずの人たちが全く信用ならないのに孤立感が漂っていきます。
故郷の墓になぜかコスタ神父の遺体は安置されておらず、調査にうんざりな妻を無視して、ステファノはコスタ神父が死ぬ前に身を寄せていたというキャンプ地跡を訪れることにします。
舞台はまた別の町に移りますが、閑散とした町に廃墟施設がドーン!!と1個あるロケーションが何とも不吉な雰囲気で堪りません。
民宿を経営している地元住民曰く、町では巨大ホテル建設の話が出ていて謎の調査隊が施設を占拠しているとのこと。
この調査隊の一員が冒頭出てきた超能力少女のガブリエラで、足を引きずっていることから同一人物だと判明。大きく成長したあともマイヤー博士とともにKゾーンを追跡していたらしいことが分かるのですが、超能力設定はどこに行ってしまったのか…
どうせなら彼女と主人公をもっと話に絡ませて欲しかった気がします(笑)。
どうやら組織ぐるみでこのKゾーンを追っている集団がいるらしく、大富豪が調査に出資しているなど只ならぬ様子。(「笑む窓のある家」の小人町長が再び登場)
廃墟施設にあるコスタ神父の棺の中にカメラを取り付けて観察、地面の温度上昇を測るなど、科学的調査が行われているようでした。
施設に忍び込んだステファノは棺内を映したビデオテープを回収し、妻アレッサンドラに教授に渡すようにとテープを託します。
しかし妻は殺し屋と思しき偽神父に尾行されピンチに…(列車で追いかけられるシーンは悪夢的)
アレッサンドラの知り合いの医者も教授もどうやら皆グルらしく、ステファノは「届いたビデオテープには何もなかった」という教授からの知らせの電話を受けてうなだれます。
ステファノは再び施設に潜入することを決意、町で唯一のアウトローらしいおっちゃんが付いてきてくれますが、蘇った死体に襲われ死亡。
ガブリエラたち調査隊も襲われて死んでしまいますが、完全に事後状態で動的アクションシーンが一切ないのが却って不穏。
棺に取り付けられたカメラからコスタ神父の蘇る姿がブラウン管画面に映し出される場面は、恐怖シーンのはずなのに歯抜けと極太眉がチャーミングであんまり怖くなかった(笑)。
しかしその後の廃墟の下り坂を迫ってくる映像は何とも不気味で静かながら迫力がありました。
逃げ出し民宿に戻るステファノでしたが、そこには組織に葬られた愛する妻の死体が…
「ペットセメタリー」のように妻を例の地に埋めに行くステファノ。蘇った妻を抱きしめますが…
着地点は途中で見えたようなものでしたが、エンドロールの流れるタイミングが絶妙に引き締まらない感じ(笑)。「えっ、これで終わり!?」となって戸惑いました。
「ペットセメタリー」に先駆けた世界観、普通のゾンビものとは異なる設定はユニークで、エロもグロもないのに不穏を煽る独特のムードは「笑む窓~」に共通していてとても面白かったです。
意外と話は綺麗にまとまってる気がしますが、腑に落ちないのは主人公たちの知り合いがあつらえたように全員グルなところ(笑)。
知り合いの教授も知り合いの医者も友達の警官もみんなグル…でもこの不条理感こそホラーといえるのかもしれません。
またタイトルが「ZEDER」なので、ゼダーがまた出てくるに違いない、バチカンのゼダーの謎を追うんだろうな…と思ってみてたら以降出てこなかったという(笑)。
「笑む窓のある家」もそんなに出番はなく、だけどあっちはあれでいいやとなるのに、こっちはなぜかしっくり来ないものが残りました。

パンフレットを引き続きゆっくり読ませてもらっていますが、ゼダーがバチカンの人、コスタ神父が聖職者ということで教会=悪!!みたいに自分は偏見ゴリゴリで連想してしまったけど、解説は全く違う視点で書かれていてとても面白かったです。
イタリアン・ホラー年表を眺めているだけでもウキウキ、昔の新聞広告の掲載も楽しく「暴行列車」との2本立て??が「人工授精」ってどないやねんと笑わせてもらいました。

連休最後の遅め回だったのに入りは上々、音楽から映像の質感まで「この年代のイタリアン・ホラーだ!!」となって高揚感に包まれとても楽しかったです。
プピ・アバディ監督の静かな恐怖を堪能させてもらいました。