どうながの映画読書ブログ

~自由気ままに好きなものを語る~

メル・ギブソン「ペイバック」鑑賞→「悪党パーカー/人狩り」を読んでみました

アメリカの作家ドナルド・E・ウェストレイクリチャード・スターク名義で発表した「悪党パーカー」シリーズ。

作者の意向でパーカーというキャラクター名こそ使えなかったらしいものの、度々映画化されているクライムノベル。

ロバート・デュヴァル主演の「組織」、リー・マーヴィン主演の「殺しの分け前/ポイント・ブランク」を先日みましたが、メル・ギブソンの「ペイバック」も映画化作品にあたるらしく、シリーズ第1作目「人間狩り」を原作にしているそう。

昔ビデオでみたような記憶があるのですが、あまり覚えておらずまっさらな状態で再鑑賞。

キャストが意外に豪華、軽快なアクションで改めて見るとこの年代ならではの雰囲気もあってなかなか面白い。

L.A.コンフィデンシャル」で脚色賞を受賞したブライアン・ヘルゲランドが初メガホンを取ったものの、製作サイドと揉めて途中で降板されられてしまったのだとか。

そのせいなのか、前半はいいのに後半が生ぬるいような…「組織」「殺しの分け前〜」に比べるとどうしたって軽いですが、全体的にはテンポよくスカッと楽しめるアクションになっていました。

 

◇◇◇
現金強奪に成功するも、相棒ヴァルと妻リンに裏切られた悪党ポーター。

背中に銃弾を受け5ヶ月間生死を彷徨うも生還。復讐を誓い、失われた分け前7万ドルを手に入れるため大暴走が始まる!!


♫チャララ〜 クールな音楽に乗っかってポーターが復活していくオープニングが勢いに満ちていてとってもおしゃれ。

自称ベトナム帰還兵の足の悪いおっちゃんが物乞いで集めていたお金を何の躊躇いもなく強奪。

起き上がってきたおっちゃんに「治っただろ」…このシーンだけインパクトあったのかなんか覚えていました(笑)。

情無用の悪党だということが一瞬で分かる小粋なオープニング。

財布をスッて身分証明書を利用してクレジットカードで服を買って…何もかも盗みで身を仕立てていく手口が鮮やかすぎて笑ってしまいます。

 

武器まで揃えると裏切った妻・リンの下を訪れるポーター。しかし彼女はすっかりヘロイン漬けに…

弱々しい姿に哀愁が漂うデボラ・カーラ・アンガー(クローネンバーグの「クラッシュ」の女優さん)の雰囲気がいい。

妻の裏切りの動機が主人公が愛人と遊んでる写真をみせられたから…なのは同情ポイントがアップ。

 

リンはヤクの注射針をブッ刺したまま自殺するかのように死亡。

まもなく妻の自宅に新たなブツを届けに運び屋がやって来ますが、そいつの鼻ピアスを引きちぎり、裏切り者ヴァルの居所を吐かせようと迫るポーター。

冒頭のグレーのスーツは「殺しの分け前〜」のリー・マーヴィン、タンクトップ姿は「組織」のロバート・デュヴァル…過去作と重なる衣装セレクトがグッド。

メル・ギブソン、危うい男の役が似合うのもあって、序盤の狂気感漂う主人公はかなりいい仕上がりでした。

 

裏切り者を追うと共にポーターはかつての愛人・ロージーの下を訪れます。

マリア・ベロはクローネンバーグの「ヒストリー・オブ・バイオレンス」に出てた女優さん…ノワール・アクションも似合う大人の女。

でも「この腐った街で君だけが宝だった」なんて愛人に語っちゃうポーターは、キャラのイメージがなんか違うような…

男女関係がややウェット、聞き込みしたドン底娼婦への対応が甘かったり、主人公がキザないい奴寄りになっているところは微妙に思われました。

 

愛人の飼っている犬の名前もポーター、犬の登場は「組織」リスペクト!?

敵役が集まるレストランの名前がヴァリック(「突破口!」の主人公の名前)と所々で70年代クライム映画へのオマージュがあるようでした。

 

運び屋の手下を脅して手に入れた情報から、タクシー会社経営のステッグマンへ、そのステッグマンを脅してヴァルの居所を突き止めるポーター。

ホテルを襲撃しますが、いかにも軽薄なチンピラのヴァル。

娼婦を殴るクソ野郎だけど、本人もS嬢のお世話になっているドM野郎だったという…


SM嬢とボカスカ殴り合うのに笑うし、ルーシー・リューがハマり役すぎて笑う。好きな人には堪らない、指名待ったなしの大人気嬢に違いありません。

 

お金を組織への借金返済にあてたためボスに掛け合いたいと訴えるヴァルでしたが、世の中そんなに甘くはなく八方塞がりに…

ポーターを返り討ちにしようとするも、ロージーに暴力を振るっているところを押さえられ、銃殺されてあっけなく退場。

 

ヴァルも含めあんまり強くない組織の面々。

あっさり侵入されて撃たれてしまうカーター、たかが7万ドルと一蹴するフェアファックス、大ボスのブロンソン…役回りはやや違うものの、キャラクター名は「殺しの分け前〜」とおおよそ同じ。

カーター役が「ローリング・サンダー」のウィリアム・ディヴェインだったことを知って驚き。

フェアファックス役のジェームズ・コバーンが1番貫禄があって世界観にマッチ、7万ドルがスーツより安いなら払ったれやと思いましたが(笑)。

組織のショバで違法賭博に参加していた悪徳警官もオリジナルキャラとして登場しますが、三つ巴的な絡みはなく間抜けにフェードアウト。

チャイニーズマフィアの強襲が1番おっかなかったけど、この年代アクションは弾丸の1発が軽い!!

 

なんやかんやで結局は大ボスのブロンソンクリス・クリストファーソン)と対決することになるポーター。

フェアファックスとの電話のやりとりを聞いたポーターは、ブロンソンに目に入れても痛くない若い愛息がいることを知ります。

電話でこんな情報いうかな!?と随分間抜けに思ってしまいましたが、誕生日祝いに息子がボクシング試合を見に行くらしく、ロージーを囮に使って、ブロンソンの長男を人質に取ることに成功。

しかしその後ポーター自身が捕えられてしまい大ピンチ、拷問されて渋々息子を匿った自宅住所を自白。

組織の奴らがポーター宅に駆けつけたところを、カーターの仕掛けていた爆弾を利用して一気にドカン!!敵を全員一掃、恋人と人質の居所は全くの別場所でちゃっかりお金だけ奪って帰還。

大ボス自ら駆けつける組織の面々が間抜けすぎるし、クライマックスに主人公が活躍するアクションシーンがないのがどうにも物足りない印象。

用意周到に仕組んだ結果だったという伏線などが凝らされていればカタルシスもあったでしょうが…

大逆転ハッピーエンドは「組織」と同じですが、恋人と車で去って行くこちらのラストはなんだか味気なく思われてしまいました。

 

前半はスタイリッシュで楽しかったものの、後半はメル・ギブソンの目つきが柔らかくなってしまっていて、冒頭の狂気感ある主人公のまま突っ走って欲しかったなーと残念。

でもテンポよく次々に話が展開して、この年代のアクション作として充分楽しめる作品になっていました。

 


原作とも比較してみようということで、パーカーシリーズ第1作目「人間狩り」を読了。

妻と仕事仲間に裏切られ負傷するも復活、裏切り者と分け前の金を追いかける…この基本プロットは同じで、「殺しの分け前〜」は前半かなり原作に忠実だったことが分かりました。

別に人殺しが好きなわけじゃないけど暴力の才能に満ちた男・パーカー。仕事(強盗)とバケーションを繰り返す、ある意味規則正しい人生(笑)。

タタキのプロで無駄な行動が一切なく、堅気じゃないのにビジネスマンのような佇まい。

脅されただけで組織の手下どもがビビって言うことをきいてしまうなど凄い迫力で、ロバート・デュヴァルメル・ギブソンもいいけど、怖さNo. 1のリー・マーヴィンが1番ハマり役かもしれません。

 

原作で面白かったのは、裏切り者のマル視点のパートがあるところ。

鈍臭くて冴えない男だけど、女好きでパーカーの妻に欲情。でもいざ手に入れるとしっくり来ず、組織のボスが侍らしている女性をみて「自分も若い金髪女がいい」とコールガールを召喚。

ケチで金払いが悪く女性からの評判は散々という情けない描写に笑いましたが、今回みた「ペイバック」の相棒ヴァルは原作のイメージを上手くコミカルに料理しているように感じました。

ヴァルお抱えの娼婦の名前〝パール〟はルーシー姐さんのキャラ名と一致、こっちは完全に他を喰うキャラになっていましたが…

 

さらに原作小説ではローズ(偽名ワンダ)という組織に所属する娼婦が登場。

「ペイバック」のロージーのキャラはここから来ていそうですが、小説のパーカーは一切情をみせず利用するだけの塩対応(笑)。

 

組織を敵に回し、堂々啖呵を切る太々しさ。用心深く大胆不敵な行動でたった1人で金を強奪。

地下鉄で金を奪ってからのアクションは、地味ながら映画になったときの映像が思い浮かぶような臨場感。

スーツケースを取り違える凡ミスをするところ、やらかしても直ぐにメンタルを切り替えられるところが好き(笑)。

ラストは新たな強盗仲間(といっても一匹狼の集まり)とともにお仕事、組織に一泡吹かせたったわ!!と颯爽と去って行くのがクール。

悪党だけどアウトローな生き様がカッコいいパーカー。ラストはデュヴァル版「組織」に近い後味のように感じました。


原作をベースにしつつ、映画化作品それぞれ異なる味わい。

「殺しの分け前〜」は原作の骨子を生かしつつスタイリッシュ映像の連続&深いテーマ性を感じさせるオリジナリティの高い作品に…

「組織」はドライでクールなクライム・アクションで原作に1番近い空気感だったのかなと思いました。

今回みた「ペイバック」はあの無一文から一気に仕立てていくオープニングといい前半は原作を見事に再現、なのに後半がブレた印象。

キャストは皆いい雰囲気の人が揃っていたのにめっちゃ勿体ない!!

 

しかしなんと劇場公開版とかなり異なるディレクターズカット版とやらが存在するとのこと。

ブライアン・ヘルゲランドが2006年に再編集したものらしく、もしかしたらこっちの方が悪党パーカーの世界観が保たれているのかも…

日本版DVDには収録されておらず、海外版Blu-rayでしかみられないようなので追ってこちらも鑑賞してみたいと思います。