VHSのみのリリースで長らくソフト化されていなかったのが、今期のホラー・マニアックスで待望のBlu-ray発売。
ちょうど今年の夏休みにブログで取り上げようと思って輸入版でみていたら国内版リリースを知り、これは絶対に買うぞ!!と改めて本腰入れて鑑賞。
この映画ラストがとにかく鮮烈で、ネタバレを喰らった状態でみたかどうかで大きく印象が左右される作品ではないかと思います。
未見の人はタイトルだけでも検索しない方がおそらく吉。
〝キャンプものホラーで有名なやつ〟というぼんやりした情報だけでみれた自分は僥倖だった…!!
隠キャには過酷な弱肉強食の子供だけの世界。「バーニング」然りサマーキャンプという日本人に馴染みのないイベント自体が物珍しくて既に面白い。
本作はそれに加わり主人公の少年少女たちがまだ幼さの残る中学生であるところが何とも危うい感じでスリリング。
ジャーロにも似た怒涛の畳みかけに、深い闇を感じる謎めいたキャラクターたち、そして圧巻のラスト。
カルト的人気を博すのも納得の大満足ホラーでした。
◇◇◇
とあるキャンプ場の湖畔。
双子の兄妹・ピーターとアンジェラが父親と共にヨットを楽しんでいました。
しかし荒い運転のモーターボートがそこに突進、お父さんと兄ピーターは無惨にも轢き殺されてしまいます。
生き残ったアンジェラは叔母の家に引き取られ、同い年の従兄弟・リッキーと共に育てられることに…
事件から8年経ったある日、アンジェラとリッキーは夏のキャンプに参加することになりますが…
年齢に幅のあるキャンプ場の子供たち。
ガタイのいい大人の体格した高校生男子が子供体型の中学生女子とスキンシップしていたりして、これ大丈夫なん??と思わずドキドキ。
監督は実年齢のキャストを集めるように努めたそうですが、未成熟な子供たちの性的成長を描いたような一幕に他作品と違ったスリル味を感じます。
その中でも主人公アンジェラを演じたフェリッサ・ローズは当時13歳、強い目力に独特のオーラがあるヒロイン。

かつてのトラウマが原因で泳ぐこともできず、周囲を拒絶して完全に1人アウェーなアンジェラ。
一体なぜ彼女をサマーキャンプに参加させようという話になったのか(笑)。
ご飯も食べず、話しかけられても一切言葉を発しないままでしたが、リッキーの友人・ポールが親身になって声をかけるとアンジェラはようやく言葉を返します。
そんな様子を面白くなさそうに見つめるのは女子グループのクイーンビー的存在・ジュディと、寮監のメグ。

なんのアクティビティにも参加せずずっと見学、特定の男子が来たときだけ口を開く…反感を買うのも分からないではないけど、場違いな人間には情け容赦ないスクールカースト上位女子。
何もしないのに自分より男子の興味を引くなんて許せない!!
ビッチ全開のジュディ役の女の子がいい演技してて実に憎々しいです(笑)。
体育会系男子グループもアンジェラを揶揄ったり水風船を投げつけるなど、内気な人間にはとことん厳しい世界。
何も食べないアンジェラを指導員の先生が気にかけて厨房に連れて行くと、1人きりになったところを調理係のおっさんが暴行しようと襲いかかるなど、まさに地獄のようなキャンプ場。
弱いものには容赦ない残酷な子供社会、そして大人も全く信用できない…厳しい現実を突きつけてくるところが既にめちゃくちゃホラーしていて引き込まれます。
けれどそんなアンジェラにも味方がいて、従兄弟のリッキーはアンジェラを全力で庇い、危害を加えようとする者を果敢に追い払います。
パッと見そんなに強そうに見えないのに、意外と好戦的で体育会系なリッキー。
上級生のジョックスたちとの野球試合も全力投球で大活躍、このシーンが異様に長い(笑)。

(チームメイトのTシャツの丈が短すぎるww)
しかしそんな中、アンジェラをいじめた者たちが何者かの手によって続々と葬られていきます。
1人目の犠牲者はアンジェラに迫ったロリコンシェフ・アーティ。
子供の背丈位あるやたら底の深い鍋を調理してたら、何者かが踏み台を揺らして鍋がひっくり返り大火傷。一命はとりとめたようですが、水膨れのあとが痛々しい。
2人目の犠牲者はアンジェラを揶揄っていたケニー。
夜にボート漕ぎに連れ出した女子を脅かしてふざけていたら、その後転覆したボート下で何者かに襲われ死亡。
口から出て来た水蛇を執拗に映した死体のショットはインパクト抜群!!
3人目はアンジェラに水風船を投げつけた体育会系男子グループのビリー。
トイレで大便していたところを蜂の巣を投げ入れられて刺されまくって死亡。蜂で埋め尽くされた顔面と刺されたあとがショッキング。
4人目の犠牲者は意地悪女子・メグ。
シャワー室で襲われるザ・鉄板な死に様ですが、背後の壁がハリボテすぎてびっくり(笑)。パックリ切り裂かれた背中の傷が痛々しい。
どうでもいいけどこのメグが年の離れたキャンプオーナーの爺さんと逢引きしているのにドン引きしてしまいました。
そして5人目の犠牲者はジュディ。
ヘアアイロンをアソコに突っ込まれて死亡。シルエットしか映らない古典的な手法ですが、痛いのをしっかり想像させられてギャーッ。
さらにはアンジェラに砂を投げつけていた子供たちが、寝袋に入っている間に惨殺されたと思われる光景が映し出されます。
出演者が低年齢なことも関係しているのか、殺人シーン自体は意外と描かれておらず、事後の無惨な死体を映していくスタイル。

けれど特殊効果がよく出来ていてスラッシャー映画としてしっかり魅せてくれます。
死傷者が続出する中、キャンプ場の管理人・メルは悪評がつくのを恐れて事件を隠蔽しようと画策。
アンジェラを庇う従兄弟のリッキーが犯人だと決めつけて迫りますが、何者かに首を矢で射抜かれてしまいます。
一方ポールからアタックを受けていたアンジェラは、身体の関係に進もうとする彼に困惑。
しかし何かを決意したような表情を見せ、ポールと夜の湖畔で待ち合わせをしますが…
(※ここからどんでん返しありネタバレ)
水泳を嫌がり、誰とも一緒にシャワー室に行かなかったアンジェラ。
ポールがシャツのボタンを外そうとすると激しく抵抗。加えて「健康診断の結果を話さないでね」という冒頭の叔母さんの思わしげなセリフ…
何となく話の予想がついてしまいますが、アンジェラは女の子ではなく男の子だった!!
冒頭の事故で死亡していたのは妹のアンジェラで、生き残っていたのは実は兄のピーターの方。
ラスト直前、ジャーロ映画の如く唐突に挿入される回想シーン。
「私たちにはリッキーという男の子がいるから次は可愛い女の子が欲しいの。あなたは今日からアンジェラね。」…養子に迎え入れる際、叔母さんの趣向で無理矢理女の子として育てられることになったピーター。

この叔母さん、登場時から「サスペリアPART2」の例のあの人に似てるなーと思ったけどとんでもないサイコパス野郎でびっくり(笑)。
本来の〝男の子である自分の自我〟を破壊され抑圧されていたピーター。
生き残った罪悪感から妹を必死で演じてしまったというのもあったのかもしれません。
ポールのことを好きになってしまい、さらに揺らぐアイデンティティ。
2人結ばれようというときに本当の自分をさらけ出したら拒絶され悲劇に…
ポールの首を愛しそうに抱えながら、その後フルチンで雄叫びをあげるラストの画が強烈すぎてノックアウト。

一瞬映すとかじゃなくてカットを変えながら執拗に見せつけてくるところが凄い。
女の子の身体に作り物のチ○コを付けるのではなく、男性の身体に作り物の女の子のマスクを付けた逆転の発想。
子役への配慮など色々事情がありそうですが、雑コラみたいな仕上がりがより一層なんとも言えない禍々しさを醸し出していました。
ポールに心惹かれていたアンジェラですが、果たして彼は本当に信用に足る男だったのでしょうか…

なかなか身体を許さないアンジェラに豪を煮やし、ジュディに迫られるとあっさり誘惑に負けてキス。
ジュディの前では「あいつはお姫様ヅラした澄まし屋」などとアンジェラを悪く言っていたらしく、イマイチ信用ならん男のような気が…
所詮男はチ○コの生き物。やらせてもらえなければ去って、やらしてくれる女の方にいっちゃうの、どうしようもないわね…
一夏の恋物語に切なさが込み上げます。
男女入れ替えのオチもさることながら、多くの謎と余韻を残す本作。
途中ではアンジェラ&ピーターの父が同性愛者だったことが、これまた唐突な回想シーン挿入により明かされていました。
冒頭のヨット遊びのシーンで一家に声をかけていた男性が父親のボーイフレンドだったらしいことが窺えますが、ポールに心惹かれたピーターの中に「自分は父親と同じだった」というヘレディタリーな葛藤が芽生えてしまったのでしょうか…
双子の母親は離婚したのか死別したのか不明ですが、お父さんが同性愛に走ってお母さんが自殺してしまったのか、周りの理解を得られず一家が孤立していたのか…色々と邪推してしまいます。
またマーサ叔母さんも「夫と別れた」と語っていて、リッキー一家も何か事情を抱えていそう。
夫に裏切られた叔母さんが男性への憎悪を滾らせて「男子はいらん!!」と暴走してしまったのか、あんなキャラだし元々狂人だったのか…
特に何も説明されず真相が断片的にぶん投げられるばかりですが、それがかえって深い闇を感じさせてミステリアス。鑑賞後に余韻が残ります。
子供の性的成長やグレーな性自認など、B級ホラーとは思えないセンシティブなテーマを描きつつ、基本プロットはいじめっ子への復讐劇。
個人的には全ての元凶はマーサ叔母さんよりも〝モーターボートをよそ見運転してたアホ女&彼氏”のような気がするのですが…

嫌がっている友人に無理やりボートサーフィンをやらして引きずり回してるところからもうドン引き(笑)。
このカップルの出番は冒頭で終わるものの、ある意味こいつらに似た体育会系いじめっ子たちが葬られていく代理復讐的ドラマ。
じーーっと射抜くように相手を見つめるアンジェラの視線には、自分を虐げた者たちへの深い怒りが眠っているようで、沈黙の名演技が見事。
事故のトラウマに性別変更、父親の性行為目撃にイジメ…こんだけあったらそりゃ歪むでしょ!!という闇要素てんこ盛りで、ヒロインの強烈な最後の勇姿をある意味納得して見届けてしまいました。

今回Blu-rayの特典映像がめちゃめちゃオモロかった…!!
テンポよくキャストスタッフのインタビューが繋がれていて、アンジェラ役のフェリシティ・ローズさん、本作を心から誇りに思っていることが伝わってきて、撮影時のザ・青春な思い出エピソードを生き生きと語る姿にこちらも嬉しくなりました。
「彼のペ○スはこの映画の主役だった」は至高の名言。
さらに他キャストからは「リッキーは全てを知っていたと思う」という意味深発言が登場。
いやいやイトコが女の子だと思ってて知らなくて庇ってたんでしょ…と思ったけど、全て知ってた上であの態度だったら怖すぎる(笑)。
よくよく考えるとポール以外の殺人が全てアンジェラの手によるものだったのか、ハッキリ明言されているわけでもなく、イトコ絶対守るマンなヤンデレリッキーの仕業だった説もありなのか…??

(そういえばジュディが襲われる場面で戸口に立っていたのはリッキーだった)
全てに説明がつくわけじゃないところにかえって味があるというか、悪夢的な魅力を感じる作品でした。
改めてみると本作、つい最近見たイタリアの某ジャーロとよく似たオチ。(向こうは伏線もへったくれもなくもっと唐突でしたが)
目に見える事実がひっくり返るラストはやはり恐ろしいし、キャンプ独特の人間模様、少年少女の性と思春期、理不尽な狂気など絡み合う複数の要素に圧倒!!
みた人の心に残りレジェンドとなるのも納得の、輝けるB級ホラーでした。
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