無痛症の疾患を抱えた男性が、強盗に攫われた彼女を追いかけて孤軍奮闘。
痛みを感じない一点においては無敵、ボロボロになりながら悪党共に立ち向かう!!
2025年6月日本公開。劇場で予告編をみたときに90年代おバカアクション映画っぽい雰囲気で好きそうなやつ…と気になっていたのですが見逃してしまい、遅ればせながら鑑賞。
意外とラブストーリー色が強く、前半の人物描写が丁寧で不覚にもうるっときてしまいました。
主人公役のジャック・クエイドはなんとメグ・ライアンとデニス・クエイドの息子さんらしく驚き。
優男風イケメンにもみえるけど個性派な雰囲気もあってとてもよかったです。
無痛症の設定を面白おかしく描くにとどまらず、誠意を感じて感心。
彼女(※まだ恋人といえる関係ではないところがミソ)を救うためにボロボロになって戦う主人公がロマンチックで、鑑賞後は幸せで優しい気持ちに浸れる1本でした。
◇◇◇
気弱で真面目な銀行員のネイト。
お金のない顧客にも真摯に対応するなど誠実な人柄が窺えますが、滲み出る孤独オーラ。

友達も恋人もおらず休日はオンラインゲームに興じる日々でしたが、新しく入社してきた窓口係の若い女性・シェリーのことが気になる様子。
一方シェリーの方も、熱湯コーヒーが手にかかってもノーリアクションなネイトをみて謎めいた彼に興味津々。
ある日2人はランチに出かけることに…
なぜか食事をオーダーせず何かを隠した様子のネイトにシェリーが迫ると、ネイトは秘密を打ち明け始めます。
「実は先天性無痛無汗症で固形物を食べられないんだ」…持病(難病)を抱えた特殊な事情を告白。
小さい頃から病院通いの毎日で、両親は心配のあまりネイトを家に閉じ込めていたのだとか…他人を遠ざけたあの生活っぷりにはちゃんと理由があったのね、と納得。
こういうヘビーな話になったときって聞き手側が無言になったりして気まずくなってしまいそうに思いますが、茶化して流すでもなく、かといって過度に気を遣いすぎるでもなく、対等に接してしっかり受け止めるヒロインが包容力に満ちていて素敵。

「ここのチェリーパイは最高なの、一口食べてみて」…危なくて出来ないって言ってることを無理強いして薦めるのどーなん!?とそこはちょっぴり気になりましたが、「私が付いてる」というシェリーの力強い言葉に後押しされて新しい扉を開けてみようと決意するネイト。
そこから訪れる至福のひととき…主人公が恋に落ちる瞬間に胸がキュンキュンときめきました。
意気投合した2人は別の日の夜にもデート。
ここでシェリーの方にも重たい過去があることが明らかに。
両親はおらず里親をたらい回しに…12歳のときに養子縁組でようやく家族を得るも親とも義兄とも気が合わずあまり会っていないのだとか。
これまた結構ヘビーな話を、彼女の目をしっかりとみて、寄り添う言葉をかけながら真剣な眼差しで聞くネイト。
この2人絶対に幸せになってくれ!!
そんな気持ちで胸がいっぱいになった矢先、ネイトの中学生時代のクラスメイトだったという男が偶然バーに現れ、鉢合わせになってしまいます。
「お前とっくに死んでると思ってたぜ」…無神経な言葉を吐きながら笑う元同級生は、ネイトが痛みを感じないのを面白がって彼を殴って遊んでいたいじめっ子でした。
膀胱破裂アラームに呼び出されたネイトがトイレに席を立って戻ると、なんとシェリーが元同級生と仲睦まじく話し込んでいるではありませんか。
「お互い過去は水に流しましょう」…いやいややられた方は流せるもんじゃないでしょ…とまさかの裏切りに唖然としたのも束の間、シェリーが男に差し出したカクテルは激辛ドリンク。
どこぞのスカッとジャパンのようにいじめっ子にスマートにやり返してみせた彼女、これは惚れるしかない!!
シェリーはネイトの中学時代のあだ名〝ノボカイン〟(局所麻酔薬)を「イカしてるわね」と絶賛。コンプレックスが思わぬ勲章に…
惹かれあいその晩一夜を共にする2人。
大人しそうな外見とは裏腹にこだわりのタトゥーを全身に入れているネイトと、自傷行為の痕があるシェリーと…2人の身体が接する瞬間がロマンチック。

「誰もが秘密を抱えているものよ」…〝秘密〟の中にある相手の人生の痛みにまで心巡らせられる2人が優しい。
他人に心を閉ざしていた人がこの人になら自分を出してもいいと一歩踏み出す姿が激アツ。
映画開始からここまで25分。もう完全に元はとった!!と大満足。
意外と丁寧で繊細なラブストーリーがよく出来ていて胸がキュンキュンしまくりでした。
ところが…!!
翌日のクリスマス、ネイトとシェリーの2人が銀行で働いていると強盗3人組が突然襲撃。
金庫のナンバーを言い渋った支店長がフルブッコにされて目の前で殺されてしまいます。
強盗の1人がシェリーを人質にとると、副支店長のネイトは躊躇わず番号を告白。
しかし強盗は逃走用の人質としてシェリーを攫っていってしまいます。
駆けつけた警察官は全員死傷、ネイトはパトカーに乗り込み、シェリーを攫った強盗の後を追うことに…
ここから無痛アクションが炸裂、まずは二手に分かれた一味のうちの1人と肉弾戦バトル開始!!
熱々のフライパンを素手で握って相手に投げつけるなど、主人公にしかできない戦法で迎え撃つのが面白い。

みてるこっちは痛いけど、主人公は痛くない…けどやっぱりどうみても痛い…身体自体はダメージ負ってるし死ぬんじゃないかと段々心配になってきます。
倒した強盗男のタトゥーから刺青彫師の下を訪れるネイト。
またまた屈強な男とバトル、両拳にガラスを突き刺したメリケンサックが痛いけど強い!!

タトゥー彫師をタトゥー器具で痛めつけて強盗男の名前を聞き出したネイトは、銀行ネットワークを駆使して自宅を特定。
しかしこれがとんでもないトラップが張り巡らされた〝ホームアローンハウス〟。棘のついた鉄球やクロスボウが次々に登場。
ただ主人公を痛めつけるだけの装置として登場するアホみたいな家ですが、そんな大味なところもひと昔前の洋画っぽくて気前がいい。
そうこうするうち別アジトに潜んでいた兄貴分の強盗がニュースで弟の死を知り、家にやって来て鉢合わせとなってしまいます。
ネトゲ仲間の友人を頼りに携帯で密かに助っ人を呼んだネイトは、助けが来るまで何とか持ちこたえようと長く時間をかけて殺してもらえるように誘導。
痛くないのに痛そうに振る舞う拷問シーンがユーモラス。

感じてないのに感じてるふりをする、メグ・ライアンの「恋人たちの予感」を思い出してもしかしてお母さんパロディ!?
いよいよ殺されるかの大ピンチの場面でネトゲ仲間・ロスコーが颯爽と登場。
初対面なのに命懸けで助けてくれるわ、謎スキル持ちだわ、いかにもご都合主義の友人キャラですが、自称ジェイソン・モモア似のナイスガイ。
ちゃんと冒頭でネット越しの2人の会話が描かれていたので微笑ましく見れてしまいました。
ついに強盗のアジトを突き止めたネイトはシェリーを救おうと大急ぎで駆けつけますが…
(※ここからどんでん返しあり!?なネタバレ)
なんとシェリーは強盗一味とグルで、彼女の義兄が強盗団のボスだった!!
家庭が複雑で義家族とソリが合わなかったと語っていましたが、その伏線が見事に回収。
無理矢理付き合わされて不本意だったことが伝わってくるも、「お前は騙されてただけだ」と強盗犯兄に言われ、動揺したネイトは身も心もボロボロになって遂に気絶。
警察が駆けつけるもまたもや役に立たず、強盗犯兄はネイトが乗せられた救急車を奪い、金を持って逃走。
それをシェリーとロスコーと女刑事が追跡します。
警察のキャラクター陣の魅力が薄いのと、後半勢いがダウンするところは残念ですが、助けられる存在だったヒロインが主人公を助けに行く展開は胸熱。
救急車中のやり取りといい、ネイトが無痛という武器以外に医療関連知識を駆使して戦うところもよかったです。
やられっぱなしだったであろう妹が義兄に果敢に立ち向かう姿もカタルシス。
遂に強盗犯兄を倒すも、骨が飛び出る大重傷を負ったネイトは息も絶え絶えでフェードアウト。
次のシーンでは巨大ギプスに全身包まれていて悲壮感漂いますが、強盗の共犯疑惑は晴れて、全て丸く収まってほぼ無罪に。
そして1年後、怪我の治ったネイトが愛しい人と再会する姿が…
ヒロインのシェリーは不本意だったとはいえ強盗に加担していたのは事実。
支店長は無惨に殺されているし、これでお咎めなしはどうなんだろう…と厳しい目でみたくなりますが、刑務所に収監されてしっかり罰を受けている結末はいい塩梅の着地点に思えました。
真実の愛にはいかなる障害も些細な問題!!面会中もお互いにゾッコンな2人が可愛らしい。

刑務所の面会で終わるラブストーリー、個人的には大好きだった「クライング・ゲーム」が思い出されて、降りかかってきた災厄を物ともせず結ばれる2人の姿がロマンチック。
6月公開だったけど、実はクリスマスデートムービーだったのね…
痛み描写はそこそこグロいもののネチネチしたフェティッシュさはなく、あっさりした印象。
冒頭で殺された支店長をはじめ、主人公もしっかり強盗を殺っているなど意外とキルカウントのある作品でしたが、勢い重視の面白さで細かいところはあまり気になりませんでした。
もう少しアクションに山場があれば…と思わなくもないけど、人とは違うことで苦悩して来た主人公の人生背景がしっかりとみえて、応援したくなる気持ちに…
身体は無痛だけど他人の心の痛みに敏感な優しい主人公。彼女を助けに奔走する姿が健気!!
パツキン美人じゃない個性あるヒロインもぴったりハマっていて、陽キャギャルかと思いきや…の意外性が面白く、主演2人がとにかく好印象。
大傑作ではないけれど、個人的には刺さる、とても好きな作品でした。
せっかく日本劇場公開してくれたのに、観に行かず終わってしまったことを後悔。

(海外版ビジュアルはスタイリッシュだけど、キャッチコピーてんこ盛りでちょいダサな日本版ビジュアルが好き)
人それぞれ見えない人生の痛みを抱えているというのは忘れたくない視点。
人に優しくありたいと願わせてくれるような、あったかクリスマスムービー&ラブストーリーでした。
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