どうながの映画読書ブログ

~自由気ままに好きなものを語る~

「ダーティハンター」…陰鬱映画というより変な映画!?唯一無二の劇場鑑賞体験

昨年「ジャグラー/ニューヨーク25時」をシネマートさんに観に行ったときにポスターとチラシが置いてあって気になった1本。1974年のピーター・フォンダ主演作。

一応国内で劇場公開されていてテレビ放映されたこともあるらしいものの、VHSも含めソフト化されず、海外でもドイツで1度DVDが出たきりという幻の作品だそうで…

ダーティハリー」と「ディア・ハンター」を足したようなタイトルですが、ベトナム帰還兵の3人の男たちが人間狩りに興じるというセンセーショナルな内容。

ピーター・フォンダは意外にも悪役を演じるのが楽しかったらしく、お気に入りの作品だったのだとか。

共演は「新・夕陽のガンマン」に出てたイケメン、ジョン・フィリップ・ロー。昨年みた「悪夢の惨劇」でめっちゃ怖いカルト教祖を演じてたリチャード・リンチ。

いい顔の俳優さんが揃ってて面白そう。

一昨年リバイバル上映されたフリードキンの「クルージング」のBlu-rayがまだ出てないことからしても、決して追ってソフト化されるわけではなく見逃したら1回きりの超レア作品なのかも…

新年1発目にみる映画にしてはかなり陰鬱そうですが、昨年も素晴らしい劇場鑑賞体験をさせてくれたシネマートさん。トークイベントありの回にて観に行ってきました。

 

個人的にアメリカンニューシネマ色はあまり感じられず、滅多に見られない変なB級ホラーをみた!!という感じ(笑)。

実はスペイン映画らしく、ロケ地も多くはアメリカ以外の場所で撮られたと言われているのだとか。

ベトナム戦争のトラウマとか関係なく、ナチュラルにクズな主人公たちにドン引き。

レイプシーンや暴力シーンは意外と少なめでしたが、襲われる被害者カップルが1組だけなので、時間をかけてネチネチといじめ倒されるのがなんとも言えないしんどさ。

被害者側も善人とは言い難くある意味胸糞度は控えめなのですが、誰にも感情移入できないままスローに惨劇が展開していくのが奇妙な臨場感でした。

話のオチは予測できてしまうというか、決して面白いストーリーではなかったけれど、とにかく変な映画をみた!!という満足感の残る、とても不思議な1本でした。

 

(※以下内容に触れています)

学生時代からの友人でベトナム戦争にも共に従軍したケン、グレッグ、アートの3人。

社会的に成功を収め休日には家族ぐるみでホームパーティー。 

男たちは子供たちと遊びながら大騒ぎ、女たちは食事の給仕をしながら旦那話…ひと昔前のアメリカらしい景色に時代を感じます。

 

仲良し3人組は狩猟シーズンになると狩りに行くらしく、銃を持って旅に出かけていきます。

妻子持ちなのにモーテルに宿泊すると、ウェイトレスを引っ掛けて派手に女遊び。

学生時代のノリのまま大人になったヤンチャ男ってこんなもん??しかし内に激しい暴力衝動を秘めているようで早くも危ういムードが漂います。

 

モーテルにいたカップルに目をつけた3人は、彼らを銃で脅すと、無人島の山小屋へ連れて行きます。

カップルに料理や給仕をさせ、さらには無理やり酒を飲ませて大はしゃぎする3人。

普通なら哀れな被害者に同情するばかりですが、被害者側も曲者でなんと2人は不倫カップル。

「子供のために妻とは別れない」という男と、「子供なんてほっときなさいよ」という女が口論していて、登場時から全然いい人じゃなさそう(笑)。

乗っていた車を沈められた地点でどう考えても消されるしかないと思うのですが、ノロノロと付き従う鈍感なカップル。

男性・マーティンは、女性を置いて自分だけ逃げるわ、あっさりと失敗するわでいいとこなし。

銀行員であることからケンたちがお金目当てで襲ってきたと思い込み、「5万ドルなんとか用意するから逃して」と交渉し始めますが、その際「彼女にも金を用意させるから」と許可なく勝手に話をつけるところもなんだか微妙(笑)。
 
ジェイソン・ステイサムリーアム・ニーソンみたいにやり返してくれるヒーローはおらず現実はこんなもん…分かっちゃいるけど弱々しい男にスッキリせず、そんな目線の自分にも鬱屈した気持ちになってくる…暗い沼にジワジワ沈んでいく感じが堪りません。


一方女性のナンシーはケンが自分に好意を持っていると考え、油断させるために取り入ろうとします。

酔わされて追い詰められたのと、恋人に幻滅したせいもあるのか、3人と距離を縮め始めるナンシー。 

不倫相手に見切りをつけて本気で別の男に鞍替えしているようにも映って、冷めた目線で被害者をみてしまうのにまた悶々。

マーティンはナンシーを非難し始め、ケンと寝たナンシーに「気持ちよさそうにしてた」などと詰め寄りますが、そもそも不倫してるお前が言うんかい!!となってまたもや微妙(笑)。

そんな2人の仲違いでさえ楽しんでいるかのような3人の非道っぷりが際立ちます。

 

女性が全員に犯される壮絶なレイプシーンがあるのかと思っていましたが、ナンシーと寝たのは結局ケンだけ。

グレッグはともかくアートはあまり女性に興味がなさそうで、自分の噛んだガムをマーティンの口に押し込むシーンにそっちなのかな…と思ってしまいました。(リチャード・リンチが1番サイコパス味があって、実にネチネチしたいじめシーン)

 

翌朝。

ケンはマーティンとナンシーに方位磁石と食糧の入ったリュックを渡し、山小屋から出ていくように突然銃を突きつけます。

ポカンとなるマーティン、どこまでも察しが悪い男。

人間狩りで自分たちが狩られることを悟ったナンシーは絶叫、この悲鳴が耳障りでまた強烈に神経を逆撫で(笑)。一度寝たケンに縋り付く姿が何ともいたたまれない。

「女は身体を出して、男はポケットから財布を出して解決しようとする」…ピーター・フォンダの口からとんでもなく厭な台詞が出てきて気分はどん底に。

ケンたち3人は数年前からこの残虐な遊びに興じていたらしく、過去に殺した人たちの最期を嬉々として語り始めます。

 

ジョン・ブアマンの「脱出」に似た景色の中、繰り広げられるマンハント

加害者視点メインなのが新鮮で、全く感情移入できない中、ノロノロとしたスピードで行われる殺人が妙にリアル。

ケンのライフルを奪い意外に健闘するも、アートに撃たれて死亡するマーティン。 

逆光で撃ち返せない姿がお世辞にも流麗とは言い難いカメラワークと編集で表現されていて、その粗さも含めてなぜかゾッとさせられるシーンでした。

一旦山小屋に戻ってライフルを奪ったナンシーも奮闘しますが、アートとグレッグに挟まれて絶体絶命のピンチに。

ところがここから予想外の展開になって…

 

(※以下ラストまでネタバレ)

突然遠くから何者かに狙撃され絶命するグレッグ。

グレッグの死を目の当たりにしたアートは逃げ惑い、ケンと合流するも1人逃走。しかし謎の刺客に撃たれて殺されてしまいます。

ケンは隠れていたナンシーを撃ち殺しますが、正体不明の敵の追跡はやまず、見せ物のようにグレッグの死体が吊るされているのを発見。

山小屋に戻ると、謎のテープレコーダーから男の声が鳴り響きます。

声の主はウォルコスキー(ウィリアム・ホールデン)、ケンたち3人に深い恨みを持つ男でした。

 

映画の冒頭では「男子学生3人に娘がレイプされた」と訴える母親が登場。しかし検事が取り合わずに棄却するという無慈悲な場面が描かれていました。

アメフト学生で優等生の3人はアメリカの理想的男子で、何をやっても許される。

「もし訴えたら彼らは金を渡してプレイしてもらったと口裏を合わせてくるよ」…この会話を被害者本人の女学生の目の前でしているのが鬼畜すぎて開幕早々この映画どうなっとんねん、とドン引きしたオープニングでしたが…(”強きアメリカ”の闇の部分を感じさせて引き込まれる冒頭)

主人公3人がその学生たちで、若い頃からやりたい放題していたこと、表向きには社会に適応しつつも法の目をかいくぐって悪さをしているらしいことが察せられました。

 

主人公たちが狩られる側にまわる展開も、それが冒頭のシーンに直結するだろうことも、ここからなんとなく予想できてしまいますが、さらにジャーロ映画のような唐突さで突然出てきたテープレコーダーにより、レイプされた女学生が後に自殺したこと、ウィリアム・ホールデンが娘の父親だったことが明かされます。

れっきとした復讐ものではあるものの、人間狩りに急に割り込んでくるだけのこのお父さんにも感情移入しにくい。

一体いつからいたのか分からないけどこの人がもっと早く攻撃していれば(or通報していれば)カップルは死ななくて済んだんじゃないでしょうか…

しかし「法は頼りにならない」と語ったお父さんは堂々ケンを仕留めて去って行きます。

 

ラスト、自らは法の裁きを受けることを決意し、孫と離れ離れになるウィリアム・ホールデンの姿。

ケン一家のパーティーシーンで登場した口のきけない少年がレイプされた女学生の産んだ子供だったことが察せられてこれまた陰鬱。

元から話せなかったのか、お母さんの自殺のショックでこうなってしまったのか…途中ピエロの仮面をつけた子供とボール投げをしていた意味深そうなシーンはなんだったのか…

なんにも説明されないまま終わるのが凄い(笑)。

悪党3人は断末魔をあげて死んでいったから一応復讐ものとしては完成していて、胸糞というほどではないはずなのにカタルシスがあるわけでもない…寄る辺ない感じでブツッと終わる、何とも言えない後味のラストでした。

 


トークイベントでは樋口尚文監督が登壇。

貴重なお話がたくさん、映画を観終わったあとの我々の混乱を優しく包み込んでくれるようなトークで、とても楽しかったです。

中学生の頃リアタイで本作を劇場鑑賞されたという樋口さん。

「悪魔の追跡」は話せる友達がいたけどあちらの遥か上をいく変わった映画で、語れないままの50年間だったとのこと(笑)。

この映画の鬱ポイントはレイプや暴力ではなく、もっと深いところ、考えなしに作っているようなところにあるというお話にすごく納得。

主題歌が冒頭から立て続けに2回流れるところからしてこの映画は変…言われてみればとなってめっちゃ笑いました。

こんな変な映画に出てくれるピーター・フォンダという俳優について(だいじょうぶマイフレンドに話が脱線)、決してこんな作品ばかりを撮っているわけでない監督の他作品について、鬱さを増す印象的な主題歌について…

個人的にはカントリー調のメロディが悪夢的で耳に残りましたが、公開当時ならではの空気感、新鮮さを失わない強烈な鑑賞体験が伝わってきて、興味深いお話がたくさんでした。

言葉で説明が難しく体験するしかない映画、じわじわボディブローのように効いてくる作品というのになるほどーとなって、唯一無二の映画体験をさせてもらったと改めて嬉しくなりました。

 

入場特典でいただけた別バージョンチラシ。

パンフレットも購入。トークイベントでも少し触れられていた樋口さんのピーター・コリンソン評、監督の他作品を知らない身なのですがとても面白かったです。

パンフ裏面がここなのがジワジワ来て、あの主題歌2回まわしの妙ちきりんなオープニングをもう一度みたいと思ってしまっている自分がいる…

 

オンラインでチケットを予約したときは空いてそうに思ったのですが、当日劇場に行くと意外にも混んでいて、三が日から鬱映画を観に来た人たちでとても賑わっていました。

自分は観に行けませんでしたが、大晦日~元旦にはこんな4本立てをやっていたらしく、ものすごいレア。

「初日の出は拝めない…」のキャッチコピーがすごいセンス(笑)。

 

こういう作品を上映してくださるシネマートさんに改めて感謝。

陰鬱映画には違いないのですが意外と気負わず観れる作品で、B級ホラーっぽい感じ!?

今の映画にはない独特の空気感にあてられて、とても楽しいひとときでした。