どうながの映画読書ブログ

~自由気ままに好きなものを語る~

「エクストロ」…ヘンテコホラーだけど好き!!エイリアン侵略SF×不条理家族ホラーの味わい

1982年製作のイギリスのSFホラー。日本では劇場未公開だったそうですが、特殊効果など見どころがあって一部にカルト的人気のある作品のようです。

今月是空さんからリリースされたBlu-rayを購入し初鑑賞。変な映画だったけど、めっちゃ楽しかった(笑)。

エイリアン侵略もののストーリーですが、主人公一家しかほぼ映し出されずスケール感は皆無。

でもこのどん詰まり感、孤立感がいい。

身体の前後ろがチグハグになったエイリアン、成人男性のエイリアンが生まれる場面など目玉シーンがあるかと思えば、特に本筋に絡むわけではないヘンテコグロシーンも…

エイリアンに乗っ取られたお父さんの話が〝ごく普通の家族の崩壊〟にも感じられて、ヘンテコB級ホラーなのに何かが胸に迫る、味わい深くて楽しい作品でした。

 

◇◇◇

イギリスの片田舎で暮らしているサム&レイチェル夫妻と幼い息子のトニー。

ある日サムとトニーが外で遊んでいると突然空が暗闇に覆われ嵐が起き、父親サムが光の中に連れ去られてしまいます。

3年後…サムは依然行方不明のまま。

妻レイチェルは新しい恋人のジョーを迎え、息子トニーと共にロンドンのアパートに住んでいました。

 

トニーは「お父さんは宇宙人に攫われた」と語りますが、大人たちの間ではサムは〝妻子を突然捨てて出ていった父親〟扱い。

トニーが捨てられたトラウマから話を作ったのだろうと誰も取り合いません。

宇宙船がハッキリ登場するわけではない冒頭の場面。あれは父を失った息子の心象風景だったのか、それとも本当に宇宙人が来ていたのか…低予算なのが逆に功を奏していてミステリアス。

母親の新しい恋人・ジョーは親切そうで、トニーに優しく接してくれているものの、息子にとってはやはりお父さんが1番。

微妙な空気の流れる家族関係、序盤から静かなホラーしていて引き込まれるものがありました。

 

ところが…!!どうやらエイリアンは他の場所でも密かに人類と接触していた様子。

とある乗用車が四足歩行の謎の生命体に触れて事故を起こしてしまいます。

上半身と下半身の前後ろが逆になった造形のエイリアンが一目見て気持ち悪く、素晴らしいセンスのクリーチャーデザイン。

謎の生命体は男性ドライバーの目に何かを放出して殺害、続けて同乗していた女性も殺害。

その後エイリアンは近辺のコテージで暮らしている女性を襲い、生殖器のような器官を女性の口に挿しこみ体液らしきものを注ぎ込みます。

女性は腹部が急激に膨らみ妊娠。

そこから裂けて生まれて出てきたのは、なんと行方不明になっていた一家の父親・サムでした。

フェイスハガーのような謎生命体ですが、産道から女性の身体が裂けて行く様子など、特殊効果に力が入っていてグロテスク。

生まれたてのサムが臍の緒を引きちぎるなどやたら臨場感のある出産シーン(笑)。

エイリアン・サムは何事もなかったかのようにシャワーを浴び身なりを整えると、元の家族の下に戻るため行動を開始します。


そしてある日レイチェルが息子トニーを学校に迎えに行くと、そこにサムの姿が…

「3年間どこに行っていたの」とレイチェルが詰問しても、失踪中のことは覚えていないと答えるサム。

レイチェルは行き場のない夫を自宅に迎え入れることに…

喜ぶ息子のトニーをよそに、恋人・ジョーは居辛くて複雑な様子。

混乱しているとはいえ、母親レイチェルがどっちつかずでジョーを気の毒に思いながらみてしまいました。


しかし…!!

以前の父親と変わりなくみえたサムですが、トニーの飼っているヘビのハリーが出産した卵を手掴みで食べるなど突然異常な行動をみせます。

ドロドロの液体みたいなものが爛れてきて無駄にグロいシーン(笑)。

さらにサムは誰もいないところでトニーの首筋に噛みつき何らかの体液を注入、息子をエイリアン化させることに成功。

エイリアン化したトニーは自分のオモチャを自由に動かす念能力のようなものに目覚めます。

 

ある日ヘビのハリーが脱走し、階下に住むミセス・グッドマンのキッチンに侵入。

サラダにヘビが紛れ込んでいたことに激怒したおばさんは、ヘビを細切れにチョップしてゴミ袋に入れ、トニー一家にそれを突きつけます。

こちらもエイリアンに全く関係ない無駄にグロいシーン(笑)。

その夜トニーはオモチャを自在に操る能力を駆使してミセス・グッドマンを殺してしまいます。

殺人ピエロまで登場するトニーの殺戮シーンですが、エイリアンホラーからは明らかに空気が逸脱していて浮いているような…

寿司とパスタを一気に出されたような食い合わせの悪さを感じましたが、やりたかったことは伝わってくる悪夢的ホラーシーン。

無言で迫るデカいG.I.ジョー人形に殺されるミセス・グッドマン。カクカクした動きがよく出来ていてリアルな不気味さを醸し出していました。

 

その後、トニーの世話係をしていた家事手伝い・アナリスも犠牲になってしまいます。

のちに「007 リビング・デイライツ」でボンドガールを演じた女優さんがとても美人。

住み込み家政婦さんらしいのに寝坊して雇い主に起こされるなど一家との関係性が分かりづらかったですが…(笑)。

子守中にボーイフレンドを依頼主の家に招いてイチャイチャしていたアナリスは、トニーの隠れんぼに仕方なく付き合っていたところを殺人ピエロに殺されてしまいます。

彼氏の方は突然部屋の中に現れた野生の黒豹に襲われて死亡。

トニーのおもちゃの中に〝ピエロと檻に入った黒豹の置物〟があったため、これらが具現化したものだと思われますが、アパートにいきなり本物の豹が登場する画がシュールすぎる(笑)。

殺されたアナリスはトニーによって腹部に何かを注入され、エイリアンを産む繭状の母体!?へと変身されられてしまいます。


一方その頃レイチェルは、サムが「かつて住んでいた山荘に行って記憶を蘇らせたい」と語るのを聞いて、2人でコテージを訪れていました。

出先から家に電話をかけるとトニーが応対しないのを心配に思って、「息子をみてきて」と恋人のジョーに頼むレイチェル。都合よく人を利用してどーなんと思いましたが…

電話を受けたジョーは、先日サムの上着ポケットから出て来た謎の写真の女性が新聞に出ている死亡者の女性と一致していることを知り、タダならぬものを感じてトニーを連れて山荘に向かうことに。

元々上着は四足歩行エイリアンに殺された男性が着ていたのをエイリアン・サムが奪ったもの。

男性が恋人女性の写真を内ポケットに入れていたため、同乗していて殺された女性のニュース情報と合致した…とここだけ妙に丁寧に伏線が凝らされていて可笑しかったです。


山荘で一晩過ごしたサムとレイチェルはいつの間にかいい感じになってて激しくセックス。

しかしエイリアン・サムの身体が限界を迎えたのか、頭皮が剥がれ、皮膚がただれて、化け物の姿が露になっていきます。

ジョーがそこに駆けつけると、完全に化け物の姿になったサムが高周波の奇声をあげ、両耳から出血してジョーは死亡。

ジョー、本当にいいことが1つもなくて可哀想すぎる…

サムは息子トニーと合流し森の中へ向かって行き、2人エイリアン化した姿となって光の中に消え去っていきます。

息子の名を叫びながらも何もすることができないまま2人を見送るレイチェル。

 

その後レイチェルが1人アパートに帰宅すると、繭化したアナリスが浴室で産んだ多量の卵を発見します。

孵化した卵からまたもや生殖器のようなものが伸びてきて、レイチェルが襲われ殺されるところでジ・エンド。

 

一体エイリアンの目的はなんだったのか…

なぜ捕えたサムを3年間も寝かしていたのか…卵を産む場合もあれば人間タイプを産むこともあってどんな生態をしているのか…

もう少しエイリアンの設定を明かしてほしかった気もしますが、小さな家庭の崩壊が世界の崩壊に繋がっている、不思議な終末感が漂っていました。

 

エンディングは2バージョンあったらしく、元々監督が用意していたのは、帰宅したレイチェルをトニーのクローンと思われる子供たちが大勢現れて彼女を取り囲むというもの。

妊娠している様子のレイチェル。先のサムとのセックスシーンもあり、「ローズマリーの赤ちゃん」的な雰囲気で悪くないと思いましたが、制作会社から不評で却下されたとか。

確かにぼんやりした印象ではあって、オリジナルの寄生エンディングの方がこのジャンルのホラーとしてはビシッと締まった印象になっているようにも感じました。


少年が主人公でもなく、母親が主人公でもなく、誰が主役なのか視点がはっきりしない構成でしたが、突き放したような不条理さがあって、冷たい家族のドラマを見つめているような独特の味わい。

突然姿を消す家族とか親戚、いるいる。家族の綻びはなかなか元には戻らないもの。

2人の父親の間で揺れ動く母親…何があっても実のお父さんを選んでしまう子供の切なさ…血の繋がりのある子供だけを連れ去っていく父親の正直さと残酷さ…

「クレイマー、クレイマー」を黒く煮詰めたような何かを感じる家族ドラマが胸に迫りました。


宇宙人フェイス!?がしっくりくるお父さん役の俳優さんもよかったし、決して愛くるしいわけではない子役の男の子もホラー味を引き立たせていてよかった。

パラサイト系ホラーかと思いきや、唐突に幻想ホラーが挟まったり、荒唐無稽で予測がつかないところはジャーロにも似ているかも…

妙な圧迫感を感じる古びれたアパートの外観が映るシーンは、ほんの一瞬「サスペリア」を思い出しました。

監督本人が作曲したというプログレサウンドの音楽も、宇宙もののワクワク感と妙な物哀しさの両方が漂っていて耳に残ってとてもよかったです。


特典で語っていた〝友達になれないE.T.〟の便乗キャッチコピー好き(笑)。

やりたい放題B級SFホラーの中に家族ホラーの味わいもあって、不思議な噛み応えのあるとても楽しい1本でした。