どうながの映画読書ブログ

~自由気ままに好きなものを語る~

「ドマーニ!愛のことづて」…シリアスと笑いの奇跡的バランス、華麗なる大どんでん返しのラストに涙

2023年イタリア興行収入第1位、歴代興収第5位。

イタリア版アカデミー賞19部門ノミネート、うち主要4部門受賞。

本国イタリアではえらい話題作だったらしい「ドマーニ!愛のことづて」。

昨年から日本でも劇場公開されていたのですが、タイミングを逃して観にいけないままだったのをようやく鑑賞しました。

ドマーニ! 愛のことづて [Blu-ray]

ドマーニ! 愛のことづて [Blu-ray]

  • パオラ・コルテッレージ
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戦後直後、1946年のイタリア。

家事、育児、仕事、介護…全てを一身に背負うアラフィフ女性デリア。

DV夫に虐げられる悲惨な日常が描かれていきますが、イタリア独特のカラッとしたムードで笑いが大いに挟まる…という離れ業に圧倒。

白黒映像でクラシカル風味の作品かと思いきや、時代を超越して今風の音楽もじゃんじゃん掛かるという斬新な演出(笑)。

ミュージカル調になるところは正直自分はあまりハマらなかったのですが、普通に描けばしんどくなるだけの場面をユーモラスに&でも茶化さず真摯に描いていて凄いバランス。

いわゆるシスターフッド映画というか、〝抑圧された女性の解放〟をテーマにした作品ですが、説教臭さや辛気臭さは皆無。

最近このテーマはお腹いっぱい気味かも…なんて思っていた自分も鳥肌もので大感動してしまいました。

父親が絶対の家で不幸な母親。私個人の偏見かもしれませんが日本の田舎、地方で育った人には馴染みのある光景で、日本人の私たちも親しみを持ってみれるドラマのように感じました。

ラストにどんでん返しがあるらしいという情報は事前に知っていたものの、見事に騙されてノックアウト。

胸熱で感動的なクライマックスは、映像の迫力にも圧倒されてボロ泣きでした。

 

この3月にも公開している劇場があったようで、国内版Blu-rayもめでたくリリース。

知られないままで終わるには惜しすぎる、見応えたっぷりの美しい1本でした。

 

◇◇◇

1946年ローマ。

半地下の質素な家で暮らす中年女性・デリア。

朝起きた瞬間にベッドの横にいた夫からいきなりビンタ。

夫より先に起きて目を開けてなきゃいけなかったってことなのか、開幕早々理不尽すぎて唖然。

朗らかな音楽と共にシンデレラのように朝の支度を整えていくデリアですが、窓を開けたら埃が大量に入ってくるわ、犬が立ちションしてくるわ、生活感ありすぎでそのチグハグさに笑ってしまいました。

 

一家には子供が3人。

長女・マルチェッラは器量も頭もいいけれど女の子だからという理由で中学校に行かせてもらえない。

長男次男は父親に似た手のつけられない悪ガキに育ちつつあり、とにかく口が悪くて態度が横暴。

さらに奥の間には寝たきりの義父が住んでおり、寝起きざまに嫁の尻を触るなどセクハラ行為を連発するどうしようもないジジイ。

 

家族のお弁当を用意し、トイレ修理をした後は注射器と薬をバッグに入れて訪問看護の仕事へ。

さらに道すがら内職でつくった服飾品を売り、傘修理の仕事も兼業。働き者母さんにびっくり。

傘修理の仕事中、新しく入った見習い新人ボーイの初給が自分より上だと知って唖然とするデリア。

こういう男女不平等は本気で腑に落ちないやつ…新人ボーイがまた絶望的にトロそうな奴でちょっと笑ってしまいます。

 

デリアを演じる女優さん・パオラ・コルテッレージが監督も務めているという本作。

イタリアの国民的女性コメディアンらしく、間の取り方が絶妙。

大変な日常のはずなのに独特のカラッとしたユーモアが効いていて、明るさ・逞しさが画面を覆います。

デリアがやられっぱなしではなく夫含め男連中に言い返すところ、またデリアの周りに多くの理解者や味方がいることが悲壮感を少なくしているように感じました。

 

近所の人たちはデリアの夫がDV夫なのを皆知っていて「あんたの家は悲惨よね」なんて軽口叩きながら時々フォロー。

かと思えば大喧嘩することもあって井戸端会議中にあわやキャットファイトが勃発!?仲がいいのか悪いのか、女性たちの掛け合いが面白い。

買い物も洗濯も今も違って決して楽な家事でなかったことが伝わる描写にもまじまじと見入ってしまいました。

 

心の拠り所となる存在は他にもいて、親友・マリーザは八百屋を経営していて夫を尻に敷くしっかり者タイプ。

けれど仲の良さそうなこの夫婦には子供がいないらしいことが分かって妊婦を羨望の眼差しで見つめるシーンが切ない…

各々ままならないものを人生に抱えていることが分かる細やかな描写も印象的。

 

またある日デリアはひょんなことからアメリカ人兵士と知り合いになります。

戦後直後で町の至る所に駐在しているアメリカ兵。

ふと道路に落ちていた家族写真を発見したデリアは「これあなたのじゃない?」と近くにいた黒人兵士に声をかけて手渡し。すると相手は「大切な家族写真を失くすところだった」と大感謝。

言語が全く通じ合わない2人でしたが、アメリカ兵・ウィリアムはお礼にデリアにチョコレートを渡し、「困ったことがあればいつでもどんなことでも力になる」とナイトな言葉を残します。

 

その帰り道、車整備士・ニーノの家にふと目線を寄せるニーナ。

夫と結婚する前に想いを寄せ合っていた幼馴染の男性らしく、お互い一緒にならなかったことを悔いている様子。

2人でチョコレートを口に含みながら笑い合い、そこをデ・パルマみたいにカメラが回りまくるシュールなロマンチックシーンは、セックスを暗示しているようで謎の躍動感に笑いました。

 

帰宅後、ウィリアムに貰った残りのチョコレートを家族に分け与えていると夫・イヴァーノが突然激怒。

「お前米兵に売春婦みたいに色目使っただろ」などと言い出し妻を殴って首を絞めての折檻タイムへ。

このシーンがミュージカル仕立てになっていて残酷性が抹消されているところは賛否が分かれそうですが、曲が意味深なラブソングになっているあたり、夫の歪な愛、複雑な夫婦関係を描いているようでこちらもシュールなラブシーン!?

クズ夫のキャラクターが胸糞ながらもどこか情けない、哀れなものになっていることが本作を絶妙な味わいにしていました。

「彼は2度も戦争に行っているから…」と度々台詞が出てきて、男の生き辛さにも焦点を当てていてとてもフェアだなーと感心してみていたら、そのあと「生まれつきのろくでなしよ!」と女友達がバッサリ切り捨てているのにめっちゃ笑いました。

メシ、フロ、ネル…全部妻任せのダメ夫。ちょっとでも気に入らないことがあると怒鳴る暴れる。妻には束縛的だけど、自分は水商売の女性と堂々浮気。

威圧的で暴力的な一方、物凄く気の小さい人だというのも伝わってきて、緊張すると酒に逃げる、面子重視で見栄っ張り、自分の父親には逆らえないパパっ子…と弱い面がたくさん垣間見えました。

多分この夫視点でドラマを描いたらもう1本別の映画が撮れるんだろうなー、などと思ってしまう、味のあるクソ野郎で、俳優さんが絶妙な匙加減で演じていてとても上手かったです。


また夫の父親(義父)も癖強のクソジジイで怒りと同時に笑いを誘います。

「デリアを殴るのはよくない」とたまには良いこと言ってくれるのかと思いきや「妻を殴るのはごく稀に、普段は殴らず大事なときに死ぬほど殴ってビビらせた方がいい」って最低なこと言っててドン引き(笑)。

自身は従姉妹と結婚していたらしくイトコ婚をやたら勧めてくる闇深父さん。

このオトンでこの息子あり、そしてあの孫に繋がっていくのか…と何だか納得。

ある意味本人たちだけが悪いわけでもないのかも…と一家の男たちのめちゃくちゃさに不謹慎ながら笑ってしまいました。

 


そんな中ある日デリア一家に大事件が勃発。

なんと長女マルチェッラがお金持ちの息子に見そめられ求婚されることに…

両家顔合わせの日取りが決まるものの、娘本人は気が気でないようで、「父親が酒飲んで暴れるかもしれない、寝たきりおジイが卑猥語を連発するかもしれない」と気もそぞろ。

母・デリアの服がツギハギだらけでみすぼらしく、相手一家と釣り合わないことも心配の種の様子。

まともな結婚相手にまともじゃない自分の実家を見せたくない恐怖。ヘビーな気苦労がリアルで同情してしまいます。  

ろくでなしオトンは結婚に反対するのかと思いきや意外とノリノリ。

「うちの娘は金持ちと結婚するんだぞ、この貧民どもが!!」と近所中に大声でアナウンスする品のなさに絶句(笑)。

向こうの家が挨拶に来るべき…下らないしきたりには拘るタイプらしく、めんどくさいダメ親父の解像度が高いです。

婚約話が近所に知れわたりデリアの友人たちはこぞって祝いの言葉をかけますが、相手一家は最近財を成した成金らしく、戦後の闇市の混乱に乗じて儲けた銭ゲバだと批判的な意見を投げる者も…時折時代を感じさせる描写が挟まります。

 

一家顔合わせの食事場面。

デリアただ1人が給仕を行い働き詰め、お母さんというより最早完全に家政婦。

冠婚葬祭や親戚の集いでよくある光景にも思えますが何だかいたたまれない…

相手一家の母親は明らかに見下した態度で、料理にケチつけたりマウンティングに余念がないなど意地悪な姑になりそうな嫌な女。

緊迫した空気にヒヤヒヤするなか、鍵をかけて閉じ込めておいたはずの寝たきりおジイが何故か起き上がってきて居間に乱入。

「歩けたの!?」「最後に歩いたのは戦前だ」に爆笑。

娘・マルチェッラは自分の結婚が台無しになりそうで涙ポロポロ。

実家から何としても逃がれたい気持ちが切実に伝わってきて、ドタバタすぎる両家顔合わせにドキドキ。

色々あったけど、相手一家の父親が息子の決めたことには口を出さないと決めているようで婚約は無事進むことに…


めでたしめでたしかと思いきや、気の良さそうな坊ちゃんにみえた娘の婚約者・ジュリアンに何やら怪しい気配が漂い始めます。

お化粧をしたマルチェッラを見て不快そうに顔を顰め、「職場には化粧していくな、俺の前だけにしろ」とキツくの彼女の顔を引っ張っていて何やらDVの気配が…

若かりし頃、結婚する前の自分たち夫婦を思い出しハッとするデリア。

この時代、というかほんの50年/100年前は結婚が女の全て…失敗したら八方塞がり。

”旦那が看守の牢屋暮らし”、自身が身を持って知っているからこそ娘には同じ想いをさせたくない。

娘の結婚を全力で止めることをデリアは決意します。


何とここで「アメリカ兵協力一回券」を使用。黒人兵士ウィリアムに頼んで婚約相手一家の経営する店を盛大に爆破してもらうことに…

写真を拾ってもらっただけなのに借りの返し方が盛大すぎる(笑)。

「あのお店なんでTNT爆弾で爆破されたんだろうね」…近所の人に怪しまれつつ、資産源を失った婚約者一家はトンズラ。

マルチェッラは見捨てられ見事婚約は破談に…初恋と実家を出る道を失い、傷心の長女。

一歩間違えば娘の人生に余計な干渉をしただけの母の行為ですが、意地悪そうな姑といい、束縛モラハラ気質っぽい彼といい、長期的に見れば母ちゃんの判断が正しかったのでは…ほっと胸を撫で下ろす気持ちになりました。

 

一方母・デリアも何やら人生の大きな決断を下そうとしている様子。

懇意の幼馴染・ニーノから「北イタリアに引っ越すから一緒に来ないか」と誘われていたデリア。

家族に隠した秘密の手紙も受け取っていて、友人・マリーザに「この日のこの時間あなたの家で注射の仕事をしてることにして」と事前に口裏を合わせてもらうなど、どうやら駆け落ちの準備をしているようです。


ミサの終わった日曜日の午後が計画実行日。

ところがなんと当日の朝、義父がベッドの上でひっそり死亡。

よりによってなんで今日死ぬねん(笑)、デリアは見て見ぬ振りしてそのまままミサに行くことに…

しかし無駄に気を利かせた近所の男性が「おじいさんの様子を見てこよう」と家を訪れて偶然死体を発見。

教会まで大慌てで知らせに来てくれて、急遽お通夜が開催されることに…

家を出たいのに弔問客が次から次に来て家から出られない!!ヤキモキさせられながらもあまりに間の悪いお通夜のドタバタ劇がまたユーモラス。

 

熱心に祈りを捧げてるバーサン、誰も面識なくて誰やねんってなってて爆笑。

「亡くなった爺さんは人格者で聖人だった」としみじみ語りだす弔問客たち…よく知らない相手を急に褒めだす人っているいる。

「人でなしのこん畜生だったわよね」と親友マリーザと悪態をつきまくるデリア(笑)、近しいところで一緒に生活してた者にしか分からないことってあるわよね…

死亡を知らせに来てくれた近所のおじさんが親切な人かと思いきや、思わぬ嘘つきっぷりを露呈。

デリアが朝にみた地点で既に死んでいたのに「まだ息があって死に際に立ち会った、最後に言葉を遺してくれた」などと話を盛り盛りにする信用ならない奴だということが分かって苦笑い。

おジイの死を誰も悲しまない孫たち、ファザコン息子なDV夫の憔悴など、人生の悲喜交々が詰まったようなお葬式ドラマに見入ってしまいました。


弔問客の帰った翌朝、デリアはようやく家出を開始。

ところが秘密の手紙がポケットから落っこちてしまい、それを発見した夫が追いかけてくる!!

さらにあとから事情を察した娘・マルチェッラも追いかけていく!!

デリアの逃亡計画は果たして成功するのでしょうか…

 


(※以下どんでん返しのラストまでネタバレ)

街を出るのかと思いきや行き先には女性だらけの人混みが…謎の群衆の中に入っていくデリア。

なんとこの日は選挙の日。

1946年6月2日&3日はイタリアで女性参加の選挙が初開催された日らしく、89%の女性が投票に行ったのだとか。

デリアは家出ではなく投票に行こうとしていただけだった!!ビックリのどんでん返し、これは予想がつきませんでした。

途中で「大丈夫、明日があるわ」と言っていたのは投票が2日間に渡って開催されていたから…

近所のお婆さんが持ってきた秘密の手紙は駆け落ちの誘いではなく投票案内を届けにきていただけだった…という見事なミスリード。

へそくり貯金やおめかししている様子など、幼馴染と駆け落ちするんだーとばかり思っていたので、すっかり騙されてしまいました。

選挙にオシャレしていくという感覚が全く分かりませんが、周りの女性たちもめかし込んでいて空前絶後の一大イベントだったことが伝わってきます。


投票会場に入ろうとするも、ポケットに入れていたはずの手紙(投票用紙)がないことに気付き、ハッとするデリア。

するとそこに追ってきた長女が忘れ物をそっと手渡し。

DV夫も追いかけてきますが大勢の女性たちの影に隠れた妻を発見できず、選挙会場にも入れないまま。このシーンは思わず胸がアツくなりました。

 

会場に入ると投票用紙を汚さぬよう口紅を拭き取って封筒を閉じる女性たちの姿が…

先にあった”マルチェッラがモラハラ彼氏に無理やり口紅を落とされたシーン”と真逆で、自らの意志で素の自分になっていく女性たちの姿がなんだか神々しい。

歴史の一コマに立ち会ったような気分にもなり、ミクロとマクロが交差するクライマックスが美しかったです。

 

投票を終えたデリアを会場外で夫が待ち受けていましたが、これだけの大人数、場所も場所で手が出せません。

女性だらけの人の波が主人公を守ってくれる…この場面のカタルシスと感動といったらなく、目から涙が溢れてきました。

移り変わる時代がDV男を静寂のうちに下す…仲間全員でラスボスを倒したような少年漫画的胸熱さがあって、物凄い高揚感でした。

 

随所に伏線というか、様々な女性たちの声なき声がそれまでの場面で描かれていたことがラストを一層感動的なものにしていたと思います。

デリアが注射のため訪問していた裕福なお宅。

お金持ちのお家なら奥さんも幸せなのかと思いきや、父と息子の議論に加わろうとすると「お前は黙りなさい」と一喝されていました。 

マルチェッラが結婚しようとしていた婚約者一家のあの嫌なお母さん…彼女も結局息子の結婚に意見することは許されなかった。

父親は一見落ち着いた常識人に見えましたが、「息子の結婚には口を出さないが娘の結婚相手は自分が選ぶ」と発言していてそこには明確な男女の差が描かれていました。

皆抑圧されたものを抱えつつどこかで密かに戦っていたのかもしれません。

 

デリアの繕った服飾品を買い取ってくれていたお店のお婆さんは、「ご主人の署名が欲しい」と男の客に注意されたのを「私は1人だよ」と一刀両断。

マルチェッラの婚約相手のことで喧嘩してたおばさんは嫉妬心から相手を腐していたのかと思いきや、デリアが暴力を振るわれている最中で家から出てきたマルチェッラに「ここ座りなよ」とフォローする仕草をみせていて、人間味があって実によかった。

嫌な人も気の合わない人も、皆何か団結した何かを抱えていたように見えて、それらがラストシーンに全て収束したように感じられるのがとてもよかったです。

 

暴力男を暴力でとっちめる作品はスカッとして大好きだし、本作でも店爆破のくだりがそれに相当するものかと思いますが、主人公デリアの迎える結末がもっとビターで現実寄りなものだったことに驚かされました。

結局家出はせず投票に行ったあとは元のあの家に帰るだけ。

ママだって駆け落ちしてもよかったのにね…なんて思ってしまったけど、お姉ちゃんはもう大きいとはいえ息子2人はまだ幼い。それにあの整備工の幼馴染が頼れるいい男なのかどうかもまた不透明な話。

デリアの人生と日常はこれからも大きく変わらないのだろうけれど、次の世代、娘たちの人生は違ったものになっていく…

「俺たちの戦いはこれからだ!!」…その中に確かな光を感じさせるラストがカッコよかったと思いました。

 


ツッコミどころはなきにしもあらずで、なぜ親友のマリーザに選挙のことをハッキリ言わなかったのか…娘に学費と手紙を残していくタイミングが思わせぶりすぎないか…所々で気になるところもありました。

駆け落ちならともかく妻が選挙に行くのを夫がそんなに怒るものなのか…そこも疑問に思われましたが、女が男と同じことをするのが我慢ならない、自分の支配を逃れて何かするのが許せないってことだったのかな。

出てくる男性が子供も含めて漏れなく全員クズなのはバランス的にどうなのか(笑)、黒人のアメリカ兵のキャラだけご都合主義的であざとく感じてしまいましたが、本作がアカデミー賞外国語映画賞にノミネートもされていないのは意外。

いい意味でオスカー作品らしいような風格を感じました。

 

「お母さんの人生は何も意味がなくて無価値」…度々マルチェッラがデリアに辛辣に言葉を投げつける場面がありましたが、母と娘のドラマも厚みがあって感動的。

デリアが家を出ていかなかったのは子供たちのため…本当は自分を庇ってくれていることを分かっていたけど、娘にとっては〝自分のために我慢しているお母さん〟をみることはそれはそれでとても辛いことだった…

一方母親も母親で子のためといいつつ自分を犠牲にするばかりになってしまう、ある種の共依存関係ともいえる繊細な母娘関係。

最後に2人の心が通じ合って笑顔で終わるところがよかったです。

 

今では当たり前なこともほんの少し前までは当たり前ではなかった。選挙然り本作での主人公の厳しい生活っぷりには何だかしみじみとした気持ちに…

現在も変わらないところもあるしより良い方向に全て動いているとは言い切れないのかもしれないけど、個人の尊厳を蔑ろにした家父長制度の裏には多くの苦しみや不幸があった…

文字通り結婚は人生の墓場、女子だと勉強して就職して独り立ちするという逃げ道も叶わず家に縛られたまま。

本作で描かれている女性の抑圧、選択肢のなさには暗澹たる気持ちになって、だからこそ”選ぶこと”で終わるラストが美しかったと思いました。

 

明日があるさ、未来に希望を託したようなタイトル、ドマーニもとてもいい。

義父を”おジイ”と訳したり、子供の口の悪さや各キャラの性格が映し出されたような字幕翻訳も味わい深くてとても楽しかったです。

シュールな笑いあり、真摯なドラマあり、感動のラストと物凄いバランスで魅せてくれて、話題作も納得の見事な1本でした。