「ロボコップ」を抑えてアボリアッツ・ファンタスティック国際映画祭グランプリを獲得した1987年のSFアクションホラー。

カイル・マクラクランが「ツイン・ピークス」以前にFBI捜査官役を演じていますが、謎めいた雰囲気とクールな美貌がマッチしていてハマり役。
「遊星からの物体X」に「ターミネーター」を足して「デッドゾーン」が割り込んできたような…何かが物凄く斬新というわけではないけれど、質の高いエンタメ映画に仕上がっていてシンプルに面白い。
ブロマンスが感じられるバディものとしても存分に楽しめて、出色の1本でした。
◇◇◇
銀行の監視カメラ映像から始まるオープニングがスタイリッシュ。
怪しげな男が映ってると思ったら銀行強盗が開始、カメラに銃を向けて外に飛び出てきた犯人がフェラーリに乗ってそのままカーチェイス!!
ロスの坂道を爆走、冒頭から気前よくアクションが展開して一気に引き込まれます。
警察に取り囲まれた犯人は銃撃戦の末、重傷を負って病院へ…
温厚な会社員だったという男・デフリーズは突然凶悪犯に変貌しここ数週間立て続けに事件を起こしていたのだといいます。
犯人が重体となり事件は解決したかと思われましたが、入院先の病院で突然起き上がるデフリーズ。
隣の患者の体に覆い被さり口を開けると巨大なナメクジエイリアンが吐き出されてきて新しいボディにイン!!

結構なデカさのやつが口から出入りするのにビビって、特殊効果と編集が秀逸なシーン。
どうやら謎のエイリアンが宿主を変えながら寄生、人間に取りついて悪事を働いているらしいことが発覚します。
出てくるエイリアンは一体ですが、乗り換えのスピードが早く様々な人に取りついていくのが面白いところ。
ラッセル・クロウ似の最初の強盗犯→顔色悪すぎの末期癌男性→セクシーなストリッパー女性→かわいいワンちゃん→その飼い主の警部補→主人公の相棒刑事→最後は政治家へ…

特有の仕草をみせるなど異星人っぽい雰囲気を漂わせていて、俳優さんたちの顔や表情が素晴らしいです。
人間に取りついたエイリアンは欲望のまま暴走。
ラジカセを盗んで大音量でヘビメタを聴きながらダイナーで食事、フェラーリに目がなくビビッときたら盗んで爆走、美女になり変わると男をヤリ捨てにして自分の胸を揉みまくる…
何か大きな目的があるわけじゃなくひたすら自分優先でやりたい放題。
普段私たちが理性で抑えている欲望にストッパーが効かなくなっただけにもみえて、何だか深い。
次から次へと人の持っているものを欲しがって真似をしていくエイリアン。
大量消費の加速した80年代。この時代特有のカラッとした明るいムードに溢れつつ、止まらぬ欲望の空虚さ、個性の消失、突き詰めて利己的になった人の怖さなどどこか暗いものも漂っていて、単純な地球侵略ものではないところが面白いです。
一方、警察では署内きってのやり手刑事であるベックの下をFBI捜査官が尋ねにやって来ました。
デフリーズをずっと追っていたというFBI捜査官・ロイドにベックは入院先の病院を伝えますが、デフリーズはそこで早々に死亡。
しかしその後も誰かが引き継いだように凶悪事件が近辺で起こり続けていました。
寄生エイリアンの事情を知っているらしいロイドと、何も知らない現実主義の刑事・ベックはタッグを組み一緒に事件を追うことに。
ミステリアス&女性的な雰囲気を漂わせたイケメン捜査官と、いかにも叩き上げな男っぽい雰囲気の刑事と、主演2人が好対照。

タイプは違うけど2人とも真面目でいい人なのが伝わってきて魅力的なキャラクター。
妻子持ちのベックはある日ロイドを家に招き夕食に誘います。
珍しそうにご飯やビールの味を噛み締めるロイドの姿が怪しすぎる(笑)。もしかしてこの人も宇宙人なのかも…と予想させつつ、内に秘めた優しさが伝わってきてどこかチャーミング。
ベックの幼い娘は直感的にロイドが普通の人間でないと気付いたようで奇異の視線を投げかけます。
自分にも妻子がいたけれど殺されたのだと語るロイド。
どうやらロイドと寄生エイリアンは同じ惑星から来たらしく、母星でも悪い奴だった凶悪犯を追いかけて地球にやって来たようです。
その後事件の足取りを追った2人はエイリアンが寄生した女ストリッパーを追い詰めることに成功。
撃っても撃ってもノーリアクションで反撃してくる寄生人間はまるでターミネーターのよう。
ロイドが銀色のメリケンサックのような風変わりな武器を向けると、寄生体はビルから飛び降りて慌てて逃走。

謎の武器から出る謎光線だけがエイリアンを消滅させることができるらしく、そのためには人間のボディから本体を引き摺り出さないとならないようです。
不思議現象を目の当たりにしたベックは困惑、事情を話さないロイドに豪を煮やし彼を留置所に拘束。
そんな中ロイドのFBI捜査官の身分証が別人のものだったことが発覚します。
信じたい気持ちと現実目線の気持ちの間で揺れ動くベック。
そこへ今度は警部補に寄生したエイリアンが銃を持って留置所を襲撃。ロイドを始末しようと攻撃を仕掛けます。
警察署内がパニックに陥るこのシーンも「ターミネーター」っぽい。
理屈ではなく直感に動かされたベックがロイドを助けにやってきて危機一髪。
2人隣に並んで歩き出す瞬間が静かにアツい。
謎の武器も再びロイドの手中に戻りますが、エイリアンは新たにベックの相棒に寄生。
銃撃戦の最中ベックが撃たれて重傷を負ってしまいます。
復讐相手を追いかけずベックに寄り添うロイドがめちゃくちゃ優しい…(そして友情以上の何かを感じてしまう)
さらにエイリアンは大統領選に意欲を見せる上院議員に寄生先をチェンジ。
なりすましが出来るのか心配になるくらい理性ゼロですが、地球を支配する気満々の様子でいよいよラスボスになった感が凄い。
議員を暗殺しようと単身会見場に乗り込んでいくロイドの姿は「デッドゾーン」と重なりますが、気前よく火炎放射器を発射!!

人間のボディを焼き払い光線銃でとうとう因縁の悪者エイリアンを始末するロイド。
ロイドも負傷して重体のベックが入院する病院に運ばれますが、ベックの容体は厳しそうで、彼の妻子が心配そうな顔で病室の側で佇んでいました。
そんなベックにロイドが近づき謎の光を口から口へ…

先のエイリアンの寄生シーンと似ているようでこっちはまるで神秘的なキスのよう。
光が乗り移ったあとベックは目を覚まし、代わりにロイドは息絶えてしまいます。
ロイドがベックの身体を乗っ取ったのか、それとも自分の命に代えて友を助けたのか、どちらにもとれるエンディング。
最後にベックの娘がロイドに向けていたのと同じ奇異の目線を向けて握手している様子をみると、中身は以前のパパと全く同じではなさそう。
けれどロイドが負傷したベックに向けていた労りの眼差し、あの優しいオーラを鑑みると、単純に乗っ取ったとは言い難いのではないかと思いました。
「寄生獣」のミギーのように、以前と同じベックではなくロイドと融合した新しい何かに生まれ変わったのかも…
もし元のベック要素が失われて完全に死んでいたのだとしても、妻子を失った異星人・ロイドが新しい家族を引き継いで守るかたちになったのだと思えばそう悪くない結末に思えます。
惹かれあった異星人同士2人が一体化し生まれ変わったラスト…どこかロマンチックな味わいが残るエンディングだと思いました。
カーチェイスに銃撃戦、スピード感満載で短い時間の中で伏線が丁寧に展開。テーマ曲も賑やかな音楽も映像にマッチしていて無駄がない。
フェラーリ販売店が裏でコカインを勧めてる場面や、札束にまみれたストリッパーのパンティー、ゴミ箱にシュートして遊ぶ警察官の姿など所々のユーモラスな描写も効いていて笑いました。80年代映画の無駄なようで無駄じゃない遊び心あるシーンが楽しい。
そしてなにより主人公2人が信頼を積み重ねていく過程が自然で、熱苦しくも湿っぽくないけど静かに胸熱なバディものしているところがやっぱりいい。
ゆるっとみれつつも、この年代のこのジャンルの映画の楽しさがギュギュっと濃縮されているようでゴキゲンな1本でした。
