どうながの映画読書ブログ

~自由気ままに好きなものを語る~

「ハウス・オブ・ザ・デビル」…タイ・ウェスト監督の原点に触れる80年代テイストホラー

「X エックス」「 Pearl パール」「MaXXXine マキシーン」のタイ・ウェスト監督が2009年に撮った出世作だという1本。

日本では未公開だったのが今月シネマートさんをはじめとする劇場で日本初公開。

「X」も「Pearl」も昨年みたばかりの新参者ですが、ポスタービジュアルがいいなあ…昔のホラーの雰囲気ムンムンで面白そう。

DVDもBlu-rayもリリースされていない作品らしくこの機会にと観に行ってきました。

80年代のサタニックパニックを背景にしているらしく、カオスなクライマックスといい「マキシーン」の原点的作品!?なように感じました。

ファッション、音楽、カメラワークなど拘りを感じて監督が好きなように撮った感が伝わって来る、ゆったり心地よく楽しめる1本でした。

 

◇◇◇

低予算映画感バリバリの16ミリフィルムで撮影された拘りの映像。でかいマフラーをした主人公のレトロファッションがかわいい。

画面がフリーズするところなど70年代&80年代の映画っぽくてオープニングクレジットから静かにワクワク。

 

大学2年生のサマンサは学生寮に住んでいましたが、ルームメイトはしょっ中男を連れ込みやかましく、部屋を散らかすのにもうんざり。

安値で借りられるアパートを見つけ大家のおばちゃんから好印象を得て転居が決まりますが、その賃料も工面できておらずどん詰まり。

そんななか大学の掲示板にてベビーシッター募集のアルバイトの張り紙を発見し、書かれた番号に公衆電話からTEL。

電話は繋がらず受話器を置いて去ろうとしたサマンサですが、その直後コールバックが…

突然鳴る電話の音ってなぜあんなに不穏なんでしょう。この年代の作品は電話がホラーアイテムとして登場率高めなイメージ。

電話の向こうの男性から「学生課の前ですぐに面談させてほしい」と呼び出されるも一向に現れず待ちぼうけ。

サマンサは友人・メーガンにダイナーにて不味そうなピザをつまみながら一日の出来事を語ります。

 

友人・メーガン役は「バービー」などを監督したグレタ・ガーウィグらしく、普通にいい女優さんしてて驚き。

お金のないサマンサを心配してくれるわ、バイト先まで車を出してくれるわ…大学構内にあったベビーシッター求人プリントを嫌がらせで全撤去。面接をすっぽかされた腹いせまで代わりにやってくれて、気怠そうな雰囲気を醸してますが情に厚い友人のようです。


バイト先は墓地を突き抜けた先にある一軒家。

折しもこの日は皆既月食で世間が沸いておりテレビではアナウンサーが仕切りに解説しています。(この辺りの演出はXっぽい)。

呼び鈴をならして出てきたのは杖を片手に持った背の高いお爺さんのミスター・ウルマン(トム・ヌーナン)。

「嘘ついてごめん、求人は実はベビーシッターの仕事じゃない。自分たち夫婦が出かけてる間に高齢の妻の母をみててくれ」

怪しすぎる話ですが、同居のお婆さんには会わず何もせず家にいるだけでいいとのこと。

友人メーガンはやめておけと引き止めますが、お金が欲しいサマンサは一晩400ドルの給料に釣られて怪しい仕事を引き受けることに。

 

翌日の12時半に迎えにくると約束をして去っていくメーガン。

ところがその後、タバコを吸おうと停車していたところを謎の男に射殺されてしまいます。

ナイフのような凶器ではなく銃一発で殺されるのが意外、この辺りの暴力描写も「X」を思い出しました。


一方サマンサは姿をみせた妻・ミセス・ウルマン(メアリー・ウォロノフ)に挨拶。黒いファーコートを着込んだ姿がなぜだか不気味。

ミスター・ウルマンは「晩御飯にはピザを頼んでね」と気前よく追加のドル紙幣を渡して去っていきます。

 

夫妻が出かけると部屋のあちこちを探索するサマンサ。

よそ様のお宅、落ち着かなくてソワソワする気持ちは分かるけど、じっとしてられないものなのか。

カセットウォークで音楽聴きながら部屋をダンスしまくるシーンは「ベビーシッター・アドベンチャー」のエリザベス・シューを思い出しましたが、いくらなんでもハシャギすぎ(笑)。

勢い余って壺を割ってしまいますが、ちょっとしょんぼりしつつもピザはちゃっかり注文。

潔癖症だと揶揄われていたサマンサ、トイレの便座は気にするけどピザ食べるのにお皿は使わなくても平気なタイプ。

しかし変な味だったらしく口を濯ぎほとんど食べずに残してしまいます。


ピザ配達人はメーガンを射殺した男で、夫妻には成人した息子がいると言っていましたがどうやらコイツがそうっぽい…グルで何かを企んでいる様子。

水道の下から変な物音を聞きつけたり、浴室に切られた多量の髪の毛が散らばってたり…不信感マックスになったサマンサは老婆がいるという部屋に向かいますが、さっき食べたピザに何か入ってたのか、眩暈がして転倒。

同じタイミングで部屋からとうとうババアが出てきますが、あまりババアっぽくないババアで化け物っぽい顔つきの人。ババアホラーを期待してたのでここはちょっと肩透かし。

 

気がつくとサマンサは手足を縛られ不気味な悪魔祭壇に磔にされていました。

六芒星をお腹に描かれ、山羊の頭の形をしたオブジェから血を飲まされて生贄の儀式みたいなものに参加させられてしまいます。

サマンサがジタバタ抵抗すると意外にもスルッと解ける紐(笑)。

ミスター・ウルマンをナイフでひとつき、化け物も突き飛ばして逃走。

息子が追いかけてきますが目玉を抉ってポイ、さらには包丁で喉を掻っ捌き見事勝利。

続けて急に悪魔に祈り出すミセス・ウルマンを背後から刺殺。

ヒロインが強いというか悪魔教団勢が弱すぎる(笑)。

真っ白だった衣服が血で真っ赤に…

ヒロインの髪型や薬の入った食べ物で眠くなるところ、友達の無惨な遺体を発見する瞬間など何となく「サスペリア」が頭をよぎるところもチラホラ。

 

家から飛び出し近くの墓地まで逃げるサマンサでしたが、化け物の顔が何度もフラッシュバックし奇妙な声が脳内をこだまして悶え苦しみます。

そこへ生きていたミスター・ウルマンがやって来て「話をきいてくれ、君は選ばれた人間だ」とかなんとか説明。

皆既月食が明けていく瞬間、サマンサは自分の頭を撃ち抜いて自殺。

悪魔に転生させられそうだったのを自殺して阻止したってことなのかな…と思ったらなんと一命を取り留めていて、病院へ。

どうやらお腹には赤ちゃんがいるっぽい。

「ローズマリーの赤ちゃん」を彷彿とさせるエンディング!?

エンドロールで主人公が「パトリック」のように飛び起きるのを待っていましたが何も起きなかったです(笑)。

 


パンフレットは新聞紙風のデザインでリバーシブルでポスター仕様。

マンブルコア/マンブルゴアという言葉を初めて知りました。製作背景など全く分からなかったので解説が大変興味深かったです。

 

「マキシーン」もそうだったけど、絵作りや雰囲気は抜群なのにストーリーがもう一捻り欲しかったなーという感想。

2009年の作品とは思えない質感には驚き。

化け物ババアと教団の背景をもうちょっと描いていてくれてたらなーと思いつつ、アンニュイな雰囲気と何も起こらない静かな不穏さに満ちた前半パート、自分は好きでした。

タイ・ウェスト監督を知れる1作なのは間違いなく、ゆったり楽しませてもらいました。